文科省の目指す30人学級に効果はあるか? ~少人数クラスの意義~

教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
萩生田文部科学大臣は11月13日の定例会見で、公立の小中学校においては30人学級を目指すべきとの考えを示しました。

今回は「30人学級にするとどんな効果があるのか」について考えてみたいと思います。

30人学級の意義

◆文部科学省はコロナ対策・きめ細かな指導ができると30人を目指す方向
⇒30人学級であれば同じ教室でも生徒の机の距離をもう少し離すことができる
⇒30人学級であれば教師が生徒一人に割く時間が増やせ、きめ細やかな指導が実現できる
教員の長時間労働の減少にも期待できる
◆財務省は根拠が希薄との理由で30人学級に対して消極的
具体的な根拠が乏しく、30人を目指す理由が分からない

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少人数学級がなぜ望まれるのか

前述のポイント解説のところにも記載しましたが、文部科学省は30人学級を目指したいという意志が明確に出ています。
背景には他国とのクラス人数との差が意識されていると思います。

下のグラフは東洋経済が作成した、1クラス当たりの児童生徒数の国際比較です。日本は左から2番目で全体の中でもかなり人数が多い部類に入っています。

ここまでの流れを見れば、1クラスの人数を減らす方向性は正しいと思います。

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30人とする根拠とそれにより期待される効果は?

一方で、今回の議論ではっきりしないのは、「なぜ1クラス30名を目指すのか?」の部分です。20名でも25名でもなく、35名でもなく、30名を目指す根拠というのが見えないこと、また30名にしたことによってアウトプットとして何が期待できるのかが不明瞭ということが問題だと思います。

文科省が出している3つの効果について少し深掘りしてみたいと思います。

新型コロナの感染抑止の観点

い間の学校の教室はおよそ40平方メートルの広さに、約40の学習机を入れています。これを30にすることで感染対策が強化できるということです。

単純に25%のデスクを外に出すということですから、学習机1つあたりの面積は約33%増えることになります。
現在の新型コロナウイルスへの感染は教室内ではほとんど起きていないので、この施策で感染が減るかといえば、感染は減らないと思います。
一方で、今後の未知のウイルス等への対策として、1クラスのデスク数を減らしておくことは意味がないわけでもないというレベルかと思います。

生徒への目が届きやすく教育の質が向上する

40人のクラスが30人になると、生徒への目が届きやすくなるでしょうか?
理論的には一人当たりのかけられる時間は机同様で33%増やせるのですが、授業中の指導がこれによって向上するかといえば、30人ではまだまだ多いというのが実感です。

自分が塾で教えていた時は、1クラス20名を超えると、授業中にまったく目の届かない生徒が数名出てしまうという感覚でした。授業への集中度合いや問題演習中の進み具合などを見ようと思えば、1クラス10~15くらい上限のような感覚です。

最終的には予算枠との兼ね合いでいったん30名という数字を出しているのかもしれませんが、これをゴールにして良いのかは、過去の研究成果と合わせて議論の素材を出さないといけないと思います。

まさお
まさお

少人数学級と成績向上の関係も調査が進んでいるようですが、これはどんなに調べても結果が出ないと思います。
理由は、成績向上は学校の授業だけが原因で決まってこないからです。成績を仮にテストの手数のことと定義してもそのテストの点数と授業の関係の強弱などによってもブレますし、生徒の心理状態一つで成績は大きくぶれるものです。
成績向上度合いをエビデンスとして持ち込むにはかなり精緻な調査設計が必要です。

教員の労働時間短縮

これは生徒が減った分だけある程度効果が期待できると思います。
生徒のテストの採点、ノートへのコメントなど、学校の教師が担当している生徒に対して行うべき仕事は多岐にわたりますが、単純に分母の多寡で作業時間はそのまま影響を受けます。

先生個人の指導へのこだわりを横において考えれば、生徒が25%も減れば、先生の業務も同じ水準を維持していたとしてもやはり25%程度減ると考えるのが妥当でしょう。

これによって従来できていなかった仕事に取り組む時間ができたと考える聖性も多いでしょうから、結果的に労働時間そのものが減るかといえば、別の仕事に充てられてしまって労働時間そのものは減らないという結論もあるかもしれませんが、それは各教師の考え方によると思います。

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30人学級は教員の労働環境改善を主に考えた方がよい

上記の流れを見てくると、30人学級について、指導効果などを謳うよりも、教師の労働時間の短縮に向けた施策として位置付けた方が、わかりやすいと思います。

そこに、教育効果やGIGAスクール構想などの案件を盛り込むことでかえって目的が不明瞭になったりエビデンスのないものに予算をつけろというような動きになってしまうように思います。

税金を投入する以上は、投資対効果(ROI)の発想がどうしても必要になってくると思います。教育は費用対効果がはっきりと見えないから難しいのですが、見えないままでは議論が進まないので、見えるところを無理やり探して効果検証できるようにするのが文部科学省の義務だと思います。
頭の良い方の集まりなので、すでにそのような動きになっていると思うのですが…。

まさお
まさお

文部科学省は、生徒児童の減少が今後続くので、追加予算なしでも30人学級に持っていけると考えているようです。

一方で、30人学級になると本当に当初もくろんでいたような効果が上がるのか、そこは精緻に検証をし続けてほしいと思います。

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