こんにちは。まさおです。
5/19、東京地裁で順天堂大学医学部入試で女性が不利になるような基準で判定され、不合格になった女性13人が大学側に賠償を求めた裁判の判決が出ました。大学側の判定は不合理で差別的だとして、合計800万円余りの損害賠償を命じました。
今回は「順天堂大学医学部不正入試裁判の判決」について取り上げます。
順天堂大学医学部不正入試裁判
この裁判は2019年6月20日に、順天堂大学医学部入試における女性差別により被害を被ったとして、13人の元受験生の女性が受験料の返還と不公正な入試を受けさせられたことに対する慰謝料およそ4270万円を求めて、学校法人順天堂を提訴したものです。
訴状はこちら
こちらの判決が2022年5月19日東京地方裁判所で言い渡されました。
原告13名に合計805万円の損害賠償を認める判決となっています。
判決本文はこちら
もともと順天堂大学は女性を不利にした背景として、「女性のコミュニケーション能力が高いため判定基準を調整した」としており、面接点が女性が高く出がちであることを背景に調整を行っていたと主張していました。
NHKなどは以下のような報道をしています。
女性であることを理由に減点するというのは、現代にあっては認められない差別的な入試だと言わざるを得ません。
特に医学部受験は難易度が高く、受験生は相当の努力をしてきたと思われますから、自分の進路を自分の能力以外の理由で絶たれた苦痛は大きく、損害賠償を認める判決は順当と考えるべきだと思います。
損害賠償額が少ないのでは?
今回の判決でNHKの記事などにも出ていますが、原告が求めていた損害賠償額に対し判決で出た賠償額が少ないという批判が出ていました。
判決文によると
- 不正入試は現在是正されており、精神的苦痛の一部は緩和されている
- 一切の事情を総合勘案すると1名当たり1年度30万円の支払いを命ずるのが妥当である
となっています。
ニュース記事にある30万円~90万円の賠償というのは、受験回数が1回から3回の原告それぞれに対して、受験回数×30万円の賠償を命じたということになります。
入試で不合格になり、医学部への進学を閉ざされた理由が、本人の入試得点によらない大学側の恣意的な理由だったとすると、この賠償額は少なすぎると思います。
受験生を多く見てきた立場からすると、目標や憧れの志望校への不合格は相当のショックを受検生に与えますし、ましてや、進路変更で医師の道を変えざるを得ないとなるとその後の人生が全く変わってしまったわけで、「受験回数×30万円」というような話ではないと思います。
募集要項に合否判定方法を明記すべき
すでに是正されているので、あまり深追いすべきではないかもしれませんが、この問題の本質はボシュ要綱に明記されていない合否判定方法をとっていたということだと思います。
たとえば、女性合格者は男性合格者に比べて30年後の在職率がこれくらい低いため、調整枠として男性枠を設けるといった制度をあらかじめ公開してその範疇で男女の合否に差がついていれば、この問題も多少は緩和されたものと思います。
上のグラフを見ると、女性医師は登録3年から12年までで95%程度から73%程度まで就業率が一気に下がり、その後80%強まで回復するという曲線を描いています。
この間に結婚や出産、子育てを経て一時的に離職するということを表しています。
この曲線を呑み込んだうえで男女が平等に医師になれる環境である必要があります。
今は男女別枠募集も不公正であると言われる時代ですから、完全是正が入試制度としては正しいと思うものの、多くのお金と時間と労力をかけて育てた医師が長く医師として勤務できるかどうかというのは大学側も気にするところだと思います。
女性医師が結婚や出産を経ても長く医師として勤務できるような社会的な環境整備を同時並行で進めないと、女性の合格者だけを増やす対応はバランスを欠いているのではないかとも思います。
医師の世界に限らず、日本社会は女性の社会進出がいまだに遅れているという現状があります。伝統的日本の女性観を変えていかないと、欧米などの先進国には到底追いつけないという事実をまず理解するところからスタートしないといけないと思います。
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