これまで何度か取り上げてきましたが、模擬試験は新型コロナウイルスの感染リスクを考えると実施がしづらいです。
一方で模擬試験は入試に向けて避けては通れない重要なデータ収集の場でもあります。
今回は、5月・6月の首都圏の模試の実施状況と対応についてまとめてみました。
首都圏の中3生向けの模試の状況
本来、6月の模試は夏休みの課題を明確にするため、重要な位置づけとなる模試です。6月模試結果を6月下旬~7月上旬に確認することで、夏期講習の時間の使い方や教科バランス、苦手科目の克服計画を立てていくのです。
ところが、新型コロナウイルスの影響で主要模試は以下の対応となっています。ほぼ受験は難しい状況です。
進研Vもぎ(東京・千葉)
6月7日実施 「都立Vもぎ」「千葉県立Vもぎ」を中止
7月以降の模試は現状実施予定。変更があればホームページで告知。
新教育Wもぎ(東京・神奈川)
6月7日「都立そっくりテスト」を中止
神奈川の模擬試験は7月実施予定で、現在中止は発表されていない
神奈川全県模試(神奈川)
5月24日「神奈川全県模試 第1回」を実施予定。※自宅受験を推奨
総進Sもぎ(千葉)
会場もぎテスト6月・7月をすべて中止。
6月7日・14日「総進Sもぎ 第1回」を中止。
7月5日・12日「総進Sもぎ 第2回」を中止。
北辰テスト(埼玉)
4月26日「中3第1回北辰テスト」「中1北辰スタート号」を中止。
基本的に、ほぼ中止なのですが、神奈川全県模試だけが自宅受験という選択肢を提供しています。
自宅受験の模試をどう捉えるべきか
「神奈川全県模試」は、5月の模試を中止せず「自宅受験を推奨」としています。この対応をどうとらえればよいのでしょうか?
以下の2つの視点で考えてみたいと思います。
模試の受験環境としてどうか
神奈川全県模試のホームページに自宅受験の手順が出ています。
自宅に模擬試験の問題だけでなく、リスニングのCDも届くようです。各科の試験をできるだけ1日でやるようにという記載になっています。
また、リスニングCDは「CDラジカセ」で聞くようにとの指示されています。
その後、返送用の封筒に入れて提出します。4回ある提出締切日の翌週に返却されるとのことです。
受験環境としては、かなり個人差が出ると思います。
50分×5科目の試験を自宅で集中して受けるには、それなりのスペースが必要だと思います。自宅のリビングやダイニングテーブルで受験できればよいですが、環境が整わないと集中力も落ちると思います。
ただ、今後自宅受験の模試が増えると想定するなら、早く自宅受験ができる環境を自宅内に作れるかがポイントになるとも言えます。何もないテーブルを1つ自宅内に置ければ、今後かなり有利になるかもしれませんね。
余談ですが、「CDラジカセ」という単語が懐かしいと思いました。「ラジカセ」は「ラジオカセットテーププレイヤー(レコーダー)」の略だと思います。今どきカセットテープもないので、「CDプレイヤー」と書けばよいのでは?と思わず突っ込みたくなりました…(笑)
模試のデータの信頼性はどうか
結論から言えば、模試のデータは出てこないと思います。これは模試というよりは教材と捉えるべきでしょう。
受験環境のところでも触れましたが、自宅受験環境で通常の模試と同じだけの集中力は本番に近い実力を発揮できるかと言えば、それは難しいと思います。
本来、模試は母集団の中での自分の位置を客観的に測るものです。
模試の結果が信頼できるのは、「同日」「同時間」に監督の元で「一斉に」行われたテストを「一定の採点基準」のもとに採点者が「客観的に採点」をして「得点を統計処理する」からです。
例えば実施日がずれただけでも、母集団の学力は一定ではないとも言えますし、2日に分けてやってしまえば、1日でやる際の疲労感やそれに伴う集中力の低下などが再現されず、やはり「模擬試験」ではなくなってしまいます。
受けない方がよいのか
そのような模試ですから、自宅受験の模試を受けない方がよいのかという声も聞こえてきそうです。
実際は、他に選択肢がなければ受けてもよいと思います。重要なことは、自宅受験の模試が会場実施の模試と何が違うのかを受験生自信が把握しているかということです。
把握したうえで、場数を踏むためにやってみたいということであれば、積極的に受けてみてよいと思います。
ただし、データを重視するというよりも、試験の受け方を考えてみたり、教材として問題セットを解きなおしてみるといった使い方を意識することが大事だと思います。
中学入試でも在宅模試が出現
ちなみに、中学入試の世界でも在宅受験の模試が現れています。
首都圏模試センターの当初4月19日に予定していた「第1回中学受験統一合判模試」を5月24日に延期し、かつ「自宅受験のみ」へと変更としています。
もともと4月用に作った模試をこれ以上後ろにずらせないことからの対処と思いますが、詳細なQ&Aページなどを作って対応しているものの、なかなか小学生にやらせるには難易度の高い対応になっているように思います。
今回の新型コロナウイルスへの対応は受験生だけでなく学校・塾・模試会社にとっても初めての経験で、右往左往といった感じがしますが、各社がいろいろ悩んで「これで行こう」と決めた内容です。自分に役立ちそうなものは積極的に活用していくとよいと思います。
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