「都立高校入試のスピーキングの扱いって結局どうなるの?」
10/4,都議会の文教委員会で都立高校入試の合否判定からスピーキングテストを除外するように求めた条例案の採決が行われ、反対多数で否決されました。
紆余曲折がありましたが、結局、スピーキングテストを強行する形で決着がついた問うことです。
今回は、改めて「都立高校スピーキングテストの問題点と対策」をまとめます。
都議会での条例案の議論
10/4、都議会文教委員会で、立件民主党と東京維新の会が共同提案していた「英語スピーキングテストを来年度の都立高入試の合否判定から除外するよう規定した条例案」の採決が行われました。
結果は、反対多数で否決です。
結局、不公平だとか、制度上不備があるとか、さんざん文句を言われたスピーキングテストが入試で使用されることが確定しました。
東京新聞の記事によると、各会派の主張は以下の通りだったようです。
政党 | 各党の表明内容 |
---|---|
自民党 都民ファーストの会 | 都立高校入試の受験科目選定に都議会が介入することは 教育の中立性を脅かす |
公明党 | (スピーキングテストを)使用しないと議論すること自体、 かえって現場を大混乱させてしまう |
共産党 | 都議会の多数派が条例などで教育目的や内容を決定することに 慎重であるべきだ 都教委のテスト強制も不当な支配にあたる 都議会は自主的にテスト中止をすべき |
立憲民主党 | この制度を調べるほど不公平だということがわかった 実施による混乱の方が中止の混乱よりも大きいと考えた |
共産党が言っていることが一番まともかもしれませんが、テスト制度の変更に対して誰が最後決裁するかと言えば教育委員会でしょうから、現制度も手続き上は問題ないということだと思います。
問題はその中身の正当性や公平性を誰が保証してくれるのかということだと思います。
入試で使うにはその得点換算の仕方など、きちんと制度設計すべきです。
制度不備のために泣く生徒を生み出してしまうのはよくないと思います。
スピーキングテストを入試で使用する際の問題点
過去にもこのブログに書いてきましたが、東京都内の公立中学校でスピーキングテストをすること自体はとても良いことだと思います。
英語を積極的に話す機会が日本にはほとんどないので、このような機会を設けるだけでも話すことへの意識はかなり高まると思います。
一方で、その結果が入試で使われるとなると、やはりいろいろな問題点を指摘せざるを得ません。
問題点を3つだけ挙げておきたいと思います。
1.欠席者対応
スピーキングテストをは11月27日に実施されます。その時点で都内の公立中に在籍していない生徒は受験自体ができません。
欠席者は、都立高入試当日の英語の学力試験の得点を見て、その前後の生徒のスピーキングテストの平均点を取るというかなり荒っぽいやり方を取ります。
自分のスピーキングの能力とは無関係の学力試験と他人の評価を使うというやり方はどうしても入学試験の性質とはなじまないと思うのですが、今回はこのやり方で強行突破する感じですね。
2.採点基準に対する透明性
今回のテストの採点基準がはっきりしていないことも問題として挙げられています。
テストの実施と採点をベネッセに委託していることで、採点者がフィリピンで研修を受けた人ということになっていますが、実際にはどこの誰が採点したかもわからず、採点ミスがどのようにチェックされているかも不透明ということで、精度をどう担保するのかという疑問が上がっています。
実際は採点後の追跡調査やミスの精査などは不透明で、これまでのトライアル実施で一定の精度で採点されてきたという評価で今回は進めてよいという判断になったようです。
採点の公平性は、国語の作文でも問題になることがある部分ですが、作文は採点者が目の届く範囲にいることと答案の後日の再精査が可能という意味でまだ理解ができる範囲かと思います。
今回のスピーキングはそのようなトレーサビリティに欠けている点も問題になっています。
3.英語の配点が他教科よりも高くなる
もう一つ、地味に問題視されているのが、スピーキングテストの結果を20点分に換算して入試の得点に加えるため、英語分野の得点が他教科よりも20点多いではないかという意見があります。
個人的には、事前に周知期間を設定しておけば大きな問題ではないように思います。
実際に大学入試でも私立高校入試でも、都立高校の一部の学科でも傾斜配点は行われているわけですから、東京都立高校は英語の配点をスピーキング分だけ多く設定しているという事実を伝えればよいと思います。
英語が苦手な人にはわずかに不利ではありますが、それを言い出すと他の科目にも同種の不整合(平均点の上下や正答率分布が異なるなど)があるので、これは目をつぶってもよいのではないかと思います。
配点を正しく理解することは、受験対策の方針に影響します。
配点についての正しい情報を早期に周知することは大変重要です。
スピーキングテスト対策は?
このように問題点があるスピーキングテストですが、11月27日の実施に向けてすべてが動いていますので、頭を切り替えて対策に集中した方がよいと思います。
スピーキング対策は過去にこのブログでご紹介しています。
詳細は上記の記事を見てほしいのですが、ポイントは以下の3つです。
2023年度の都立入試の結果が出たら、スピーキングテストが与えた影響について精緻な分析をしてほしいと思います。
わずかな配点ですが、この制度によって合格不合格の運命が分かれる受験生が出ることは間違いないので、大人がその責任の重さを感じて業務に当たることが大事です。
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