デジタル教科書の効果的な使い方 ~文科省は52億円を予算要求~

教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
GIGAスクール構想の前倒しで、令和2年度中に多くの小中学校では生徒にタブレット端末が行きわたる予定です。ところが、タブレットだけ言っても中に何も入っていなければただの文鎮です…。ここにどんなソフトを入れるかが各自治体・教師の腕の見せ所。文科省は来年度の予算要求で52億円を計上しています。
今回は「デジタル教科書の効果的な使い方」について取り上げます。

デジタル教科書の意義

◆教師側の授業設計が大前提。デジタル教科書を使うために授業をしてはいけない
⇒紙と黒板で伝わる授業の方が手軽で浸透率は高い。
音声や3Dなどデジタル教科書でなければ伝わりにくい単元に集中して使用するべき
持ち運びの便利さと検索性が一番大事
⇒すべての教科をタブレットに入れることによる利便性
⇒調べたい語を検索するとすぐに該当ページに飛べることのが強み

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【前提】デジタル教科書で教育に革命など起きない

学校の先生と話をする場面がたまにありますが、デジタル教科書の取り扱いにかなり悩まれている方も多いようです。その背景は、「デジタル教科書は確かにすごいのだけれど、実はこれがなくても授業は成り立ってしまう」という論調が多いように感じます。
つまり、今までより内容は凄くなるが、教える内容自体は大して変わらないということです。

自分も塾の現場で電子黒板を使った授業を数年にわたりやってきましたが、デジタル教材によって突破できる新しい境地というのは限られています。
全てをデジタル化しても、事前の仕込みやトラブル対応などに割かれる時間が増えるばかりで、費やした時間と指導効果はあまり見合わないものになってしまうと実感しました。

一方で、これを上手に使うことで紙の教材ではできなかった新たな学びの体験を子どもたちに提供することも可能です。これはまさに教師の日々の指導における葛藤がベースにあって、「これがあれば生徒にもっとわかりやすく物事を伝えられるのに」という渇望のようなものがデジタル教材の画期的な使い方を生み出す原動力になります。

まさお
まさお

結論から言うと、タイトルの通り、デジタル教科書に過度の期待をしても革命的な変化は起きません。一方で時代の流れとして、いつまでも紙の教科書にしがみつくのも変な話です。文明開化でちょんまげを散切り頭にしたのと同じように紙の教材からデジタル教材に移行すると考えるのがちょうどよいと思います。

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デジタル教科書が利くのはどのようなところか

では、デジタル教科書によって新しい学びの体験を生徒に提供できるところはどこでしょうか?
自分の体験からいくつか紹介したいと思います。
※自分の担当は長らく国語でしたので、国語に偏っています。ご了承ください。

古典や物語の場面を写真で伝えることでイメージを一気に伝えられる

主に古典の学習とデジタル教材は相性が良いです。
たとえば、枕草子の「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは。」を以下に現代語に綺麗に訳しても清少納言の言いたいことは伝わりません。
感動的な夜明けの山の稜線の様子を共有しなければ「春はあけぼの。」は理解できないのです。
生徒に春はあけぼのの様子をきちんと想像させた後で、実際の様子を写真や動画で見せるのはとても効果的です。

漢字の部首の意味を効果的に伝える場合

漢字が覚えられない生徒へのアプローチの基本は部首の理解です。
多くの部首は絵や図がもとになっています。別の記事でも紹介しましたが、「点」や「熟」などの部首「れんが」は下から火で熱している様子を表します。
このような図は、アニメーションでイメージを植え付けると印象に残り定着させやすいです。
下から火で熱しているから、「亀の甲羅を熱した占いで『点』」や「鳥を下から火であぶっている『焦』」などという漢字をイメージさせられれば忘れなくなります。

数学の図形問題(特に動点や空間図形)

数学においては、図形問題に苦手意識を持っている生徒に有効です。数学の動点の問題や空間図形の切断面などはデジタル教科書が最も威力を発揮する場面だといえます。
一方で、デジタル教科書上の理解が、紙のテスト上できちんと活かせるように見せて終わりにしないことも大事です。空間図形をデジタル教科書で印象付けると、「わかった気」になってしまいテストで出題された問題でハタと手が止まるというケースも多いです。

理科の実験や社会科の資料動画

理科の実験や社会科の資料動画もここぞという場面で使うと効果があります。
理科の実験は動画を使って動画上に書き込みを入れポイント強調をすると、実際の実験よりも理解が深まることも多いです。
社会科は地理や歴史の資料を写真や動画を使って、その土地の特徴や歴史的な背景を説明すると興味関心を喚起することができます。
ポイントは使い過ぎないことです。当たり前になってしまうと、注意が散漫になるのでメリハリをつけて使用した方がよいと思います。

英語は発音やシチュエーション動画などで使う

英語については、発音に自信のない先生がデジタル教科書の発音を使って指導をするケースが多いようです。一方で、今の時代、英語の先生がデジタル教科書の発音にあまり頼りすぎるのもよくないと思います。
かつて自分が中学生だった35年くらい前は、英語の授業に「ラジカセ」を持って行って、テープを聞いたものですが、グローバル化の今の時代は多少なりとも先生が発音できてほしいという気もします。

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時間の無駄になるコンテンツもあるが、調べて使えば便利

上記のような内容が比較的意義深い使い方だと思います。
逆に言うと、それ以外のコンテンツをあまり無理して使っても時間の無駄になる可能性も高いです。
たとえば、漢字の書き順を理解させる動画なども搭載されていますが、みんなで空中に手を動かして書けばよいわけで、わざわざ動画で見せる必要があるかといえば、意見が割れるところでしょう。

一方で、子どもたちが自分で調べたい内容を検索してコンテンツを見るというのは大いに意義があると思います。新出漢字の書き順をすべて動画で見せる必要はありませんが、「飛」や「博」などといった書き順を間違って覚えている生徒が多い漢字に限って動画を見せたり、生徒に自分で書き順に自信のないものだけを検索してみておくように指示をするといった使い方は効果があります

まさお
まさお

デジタル教科書もさらに進化をしていくと思いますが、あくまで道具にすぎません。文科省は全授業時間の半分以下にデジタル教科書の使用を抑えるようにというガイドラインを出していますが、そんなに使う必要はないと思います。
本当に効果のあるところでデジタル教科書をメリハリをもって使うようにすれば、そのありがたさがかえって浮き彫りになると思います。

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