こんにちは。まさおです。
9/24、東京都教育委員会は「令和4年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書」を公表しました。来年度入試に向けて本年度入試の振り返りを記載した報告書です。
この中に再来年(現中2生)実施の英語スピーキングスコアの都立高校入試における取り扱いの記載がありました。
今回のテーマは「都立高校入試英語スピーキングスコアの使われ方」です。
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告
9/24、東京都教育委員会は「令和4年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会」を開き、令和3年度の入試の振り返りと次年度以降の対応についての報告書を公表しました。
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書【PDF版】
入試そのものの振り返りも丁寧に記述されていて興味深いので、これは別の記事で取り上げたいと思いますが、今回注目したのは「英語スピーキングテスト」の取り扱いです。
令和5年度英語スピーキングテストの取り扱い
英語スピーキングテストは現在の中3生全員がプレテストとして受験予定はありますが入試での活用予定はありません。
都立高校入試で活用されるのは現中学2年生が最初の学年となります。
現中2の都立高校入試における取り扱い案が提示されていますのでご紹介します。
ちなみに「英語スピーキングテストは令和3年4月1日から「ESAT-Jという名称になっているので、この後の資料で出てくる「ESAT-J」は英語スピキングテストを指しているとみてください。
ESAT-Jとは「English Speaking Achivement Test for Junior high school students」の略だそうです。
得点は20点で換算の影響を受けない
上記報告書内で英語スピーキングに関する得点換算の案について以下のような報告がなされています。
上記の通り、学力検査と調査書点を1000点満点に換算した後に英語スピーキングテストの素点を足すという形をとっています。
ここでの留意点は、「学力検査の得点:調査書点」の比率が「7:3」でも「6:4」でも「5:5」でも20点はそのまま換算されずに足し上げられるということです。
端的に言うと学力検査の比率が高い方がスピーキングの比率が下がる計算になります。
ちょっとややこしいですが、英語の学力検査得点とスピーキング20点の価値を換算比率ごとに比較してみます。
換算比率 学力検査:内申点 | 英語学力検査 満点 | 英語学力検査 換算後 | ESAT-J 得点 | ESAT-J 英語試験何点相当か |
---|---|---|---|---|
7:3 | 100 | 140 | 20 | 14.3 |
6:4 | 100 | 120 | 20 | 16.7 |
5:5 | 100 | 100 | 20 | 20.0 |
上記の表から以下のことが読み取れます。
- 7:3ではスピーキングの20点は英語学力試験の14.3点分に当たる
- 6:4ではスピーキングの20点は英語学力試験の16.7点分に当たる
- 5:5ではスピーキングの20点は英語学力試験の20.0点分に当たる
換算比率が高い学校の方が学力検査の重みが増しスピーキングの重みが下がるということになります。
ESAT-Jのスコアは調査書に記載される
ESAT-Jは11月ごろに公立中学校内実施されるため、その得点を高校にどう通知するかという問題が生じます。
これについてはシンプルに調査書に記載するという対応になっています。
ESAT-Jは6段階評価しかありません。
評価 | 得点 |
---|---|
A(5) | 20点 |
B(4) | 16点 |
C(3) | 12点 |
D(2) | 8点 |
E(1) | 4点 |
F(0) | 0点 |
上記6段階の評価(A~F)を調査書に記載することになります。
英語分野の満点が他の教科より増えるという問題
上記のような基本設計で検討が進んでいる都立のスピーキングテストですが、検討委員会では以下のような意見が出ています。下線はまさおが付しています。
外部有識者の意見
- 新しい入学者選抜の形として受検者や保護者に納得してもらうには、丁寧な説明が求められる。
- 英語の学力に自信のない受検者にとっては、英語の得点割合が大きくなることで不利になると考え、私学に受検者が流れてしまうことを懸念する。
- 事前に中学校や高校へのアンケート調査を行い、その結果を踏まえた協議が必要である。英語教育重視について説明してきたと言えるのであれば分かるが、英語が他教科よりも突出している内容が急に出てきたと受け取られることを心配している
中学校側の意見
- 英語においては4技能の能力を測られるべきところを3技能のみでしか測られてこなかったという経緯があるため、将来的には4技能の検査を学力検査と同じような形式で、それも同一日に検査を実施することが理想ではあるが、現状では不可能である。したがって、これまで検討を重ねてきたこの提案の形をまずは支持したい。
- ESAT-Jが20点分となると、他の教科と比べて英語の配点が高くなり、教科間のバランスが崩れる大きな変更である。
- 入学者選抜に活用するため、調査書に記載されるものであると受検者や保護者に伝えたときに、受検が11月から始まるという受取り方になってしまうことを懸念する。
- 入学者選抜への活用に重点が置かれた場合、ESAT-Jの結果を用いて授業改善に役立てるという本来の目的が達成できないのではないか。
高等学校側の意見
- 諸活動の欄に記載することについて、生徒、保護者に丁寧に説明しなければならない。英語が不得意な生徒やその保護者にとっては、ESAT-Jの結果が調査書に記載されることについては抵抗感があると思われる。
都教委の今後の取り組みの方向性
上記を受けて、都教育委員会は以下のような方向性をまとめています。
ESAT-Jについては、保護者、受検者、中学校側、高校側に趣旨等をしっかりと説明し、理解を得る努力を続けるとともに、得点化の方法等入学者選抜への具体的反映方法について本検討委員会の検討内容を踏まえながらさらに検討する他、不受験者への対応の詳細などについても、検討を進めて行く。
英語スピーキングテストの実施は揺るがないと思いますが、その得点の取り扱いについてはもう少し検討が進むようです。ここまでの議論の経緯を見ると、最終的には英語の100点の中にスピーキングの得点も組み入れるような変更があるかもしれません。
都立の合否判定システム等のシステム改修が入るかもしれませんね…。
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