「副詞ってなんで副詞っていうの?」
国文法の品詞について一つずつ深掘りをしています。今回は「副詞」です。
「副議長」や「副会長」の「副」を持つ副詞の意味を深く考えてみます。
英語の副詞と日本語の副詞は少し働きが違うので、混同しないよう注意が必要です。
また、前回やった連体詞との違いも一緒に覚えておくとわかりやすくなりますよ。
前回の「連体詞」の解説は以下からご確認ください。
「副詞」はなぜ「副」を使う?
前回、連体詞の説明の際に、「連体詞は修飾語になる品詞で、似たような特徴を持つ副詞とセットで覚えておくとわかりやすい」というお話をしました。副詞と連体詞は性質が似ているのです。
ただし、名前がちょっと違いますね。
「連体詞」はいかにも連体修飾語になりそうな名前ですが、「副詞」の「副」とは何なのでしょうか?
みなさんは「副」というと何をイメージしますか?
「副社長」「副議長」「副主任」…。なんだか2番目に偉い人みたいな感じでしょうか?
実は「副」という漢字は「副える(そえる)」という訓読みを持っています。付け加えというような意味です。
つまり、「副社長」は社長のそばで社長を助ける役職ということです。副議長も副主任も一緒です。
では、「副詞」は?
他の単語に意味を「副える」品詞ということになります。
副詞とは…単独で主に連用修飾語になる品詞
改めて副詞の特徴をきちんと確認しておきましょう。
「副」は「副える」という意味でしたので、他の単語に意味を副える(修飾をする)品詞ということになります。
以下の3つの特徴を覚えておきましょう。
やっかいなのは1なのですが、主に連用修飾語になります。たま~に連体修飾語にもなるので厄介なのですが、連体修飾語になっている副詞は、連体詞の条件(特に語尾)を満たさないので消去法で副詞と考えます。詳しくは後で例を挙げてみていきます。
まずは、「単独で連用修飾語になれば副詞」と覚えましょう。
また、英語の副詞とは全く性質が異なるので、分けて覚えた方がよいと思います。英語の副詞の知識を持ち込むと混乱すると思います。
単独で連用修飾語になるとは?
「単独で連用修飾語になる」については、連体詞と同様例文で確認した方がよいですね。
例1)彼は必ず来る。
例2)電車が少し遅れた。
例3)とても静かだ。
例4)きっとあの人は来るだろう。
この例文の下線部の品詞はすべて「副詞」です。
特徴は修飾している言葉がいずれも名詞ではないこと、他の品詞(主に助詞であることが多いのですが)が一緒に使われず、単独であることです。
どれも形が変わらないこともわかりますね。2つ目の特徴の「活用しない」ということです。
副詞を修飾する副詞もある
ちょっとややこしい話になりますが、副詞を修飾する副詞というのもあります。
例5)もう少し食べたい。
この例文の「もう」は「少し」を修飾しているのですが、「少し」自体も例文2)の通り、副詞です。
単独で副詞を修飾する品詞も副詞ということになります。
付け加えの知識として、「副詞を修飾する文節は連用修飾語」と覚えておきましょう。
「連用修飾語」とは何かを説明する際に、あえて「名詞以外を修飾する」と説明しているのは、副詞を修飾するケースがあるからなのです。
連体修飾語になる副詞の例
副詞は慣れてくるとすぐに見分けられるようになってくるのですが、連体修飾語になる副詞というのも見ておいた方がよいでしょう。
例6)看板の位置はもっと右だ。
こんな使い方をされた場合、「少し」は「右だ」を修飾しているので「連体修飾語」ということにあります。一方で「少し」は「少し食べたい」などと名詞以外を修飾する「連用修飾語」になるケースもあります。
つまり、同じ「少し」が、「連体修飾語」になったり「連用修飾語」になったりするわけです。
同じ単語ですから、どちらかに分類する必要があり、「副詞」のグループに入っているのです。
「連体詞」に対して「連用詞」と言わない理由がわかりましたか?
連体修飾語になったり連用修飾語になったりするので「連用詞」というとかえって混乱してしまうのです。そこで意味を付け加える品詞ということで「副詞」と呼ばれることになりました。
副詞の3つの種類
ここまでで副詞の概要はほぼ完璧に理解できたことになります。
ちょっとややこしいですが、きちんと頭に入れておきましょう。
最後に副詞はその性質から3つの種類に分類できます。これを知っておくと読解問題などでも役に立つのでここも完璧にしておきましょう。
「状態の副詞」…主に動詞を修飾する
状態の副詞というのは、副詞の中でも動作などの状態がどうなっているかを説明する副詞です。
主に動詞を修飾することが多いです。
例6)ゆっくりと進む。
例7)ザーザーと雨が降る。
余談ですが、「ゆっくりと」は「と」まで含めて副詞なので注意です。
「ゆっくり」が副詞で「と」は助詞と思ってしまう人がいますが、副詞の特徴は「単独で修飾語になる」ですから、「と」を助詞としてしまうと「単独で」を満たさなくなるのです。
もちろん、「ゆっくり」という副詞もありますので、「と」がついたら「と」まで含めて副詞と覚えておくとよいでしょう。
また、「ザーザーと」のような擬声語や「てくてく歩く」の「てくてく」といった擬態語も状態の副詞です。
「程度の副詞」…主に形容詞や形容動詞、名詞を修飾する
程度の副詞は、文字通り修飾される言葉の程度を説明する副詞です。
主に形容詞や形容動詞、名詞を修飾することが多いです。
例8)かなり厳しい展開だ。
例9)ちょっと難しいと思う。
程度の副詞は動詞を修飾することもあるので、下の品詞は参考程度であくまでも副詞そのものの意味に注目してください。
「呼応(陳述)の副詞」…下に決まった言い方が来る
副詞の中でもわかりやすいのが「呼応(陳述)の副詞」です。
「こおう・ちんじゅつのふくし」と読みます。
呼応というのはある副詞が来ることによって下の言い方が決まるという意味です。陳述も裁判の「冒頭陳述」などというように、「発言する・述べる」という意味で「言い方が決まる副詞」という捉え方をするとわかりやすいです。
例10)明日は多分雨だろう。(多分~だろう)
例11)決して負けないだろう。(決して~だろう)
例12)なぜ彼は来ないのか。(なぜ~か)
例13)まるで絵画のようだ。(まるで~ようだ)
呼応の副詞はコツをつかめば言語感覚でわかるようになりので、例にたくさん触れることが大事です。
また、これも余談ですが、読解問題の空所補充で使われることもありますので、意識しておくとよいでしょう。「まるで」部分を空所にして、その分の最後に「ようだ」が来るケースなどです。
まとめ
今回は例をたくさん出しました。もう一度一覧にして要点を確認しましょう。
副詞が修飾する言葉に下線を引き、副詞の種類を書いておきます。
例1)彼は必ず来る。
⇒動詞を修飾する「状態の副詞」
例2)電車が少し遅れた。
⇒動詞を修飾する「程度の副詞」
例3)とても静かだ。
⇒形容動詞を修飾する「程度の副詞」
例4)きっとあの人は来るだろう。
⇒動詞を修飾する「呼応の副詞」
例5)もう少し食べたい。
⇒副詞を修飾する「程度の副詞」
※副詞を修飾する「もう」の文の成分は連用修飾語。
例6)ゆっくりと進む。
⇒動詞を修飾する「状態の副詞」
※「~と」までで副詞と覚えておく。
例7)ザーザーと雨が降る。
⇒動詞を修飾する「状態の副詞」
※擬声語や擬態語は状態の副詞と覚えておく。
例8)かなり厳しい展開だ。
⇒形容詞を修飾する「程度の副詞」
例9)ちょっと難しいと思う。
⇒形容詞を修飾する「程度の副詞」
例10)明日は多分雨だろう。(多分~だろう)
⇒名詞を修飾する「呼応の副詞」
例11)決して負けないだろう。(決して~だろう)
⇒動詞を修飾する「呼応の副詞」
例12)なぜ彼は来ないのか。(なぜ~か)
⇒動詞を修飾する「呼応の副詞」
例13)まるで絵画のようだ。(まるで~ようだ)
⇒名詞を修飾する「呼応の副詞」
「副詞」は少し幅の広い言葉なので、「連体詞」とセットで修飾語になっていて「連体詞」でなければ副詞を疑うとすると見分けの精度が上がります。
今回出した例文はテストでも頻出の副詞ばかりなので、これを副詞として暗記してしまうだけでもかなり得点できるようになると思います。
ただし、重要なのは暗記ではなく分類の基準を理解することです。文法学習においては常に分類の基準を意識するようにしてください。
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