マイナンバーで学習管理の期待と不安 ~教育データで何をする?~

教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
12/15の日経新聞に、「学習管理、マイナンバーで」という見出しの記事が出ていました。教育再生実行会議の「デジタル化タスクフォース」が今後ICT化に必要な課題を整理する中で出てきたようです。
今回は「学習履歴データの活用ポイント」を取り上げます。自分も長い間この周りに携わってきたので個人的に感じている課題などにも触れたいと思います。

学習履歴・教育ビッグデータの活用ポイント

◆データを蓄積するだけでは何もできない
溜めたデータの活用法について具体的な知見や試行計画がないと電気の無駄になる
⇒現在の議論で身につくのは知識を中心とした旧来の学力領域
◆学習履歴は機微情報
⇒生徒の学習履歴データの取り扱いには細心の注意と管理策が必要
上記を踏まえて設計ができればいいが、とりあえず始めると必ず失敗する!

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学習履歴を溜めれば役に立つというのは短絡的

これまで教育業界では、生徒の学習履歴のデータ化に多くの企業が取り組んできましたatama+などは比較的上手にデータを使って、アダプティブラーニングの正解を確立してきたと思います。

一方で、学習履歴データを活用するには、膨大な量の仮説と検証の繰り返しが必要です。それをイメージ先行で、学習履歴を溜めれば、その生徒に最適な学習課題が出せると思うのは、教育のことがよくわかっていない人の発言と言わざるを得ません。

実際は、溜めた学習履歴を分析して、次に何をやらせるべきかを判断し、学習者に提示する必要があるのですが、その提示する内容について一定の知見がなければ分析だけして終わりという状態になります

教育においては、分析して「ふ~ん」で終わってしまうのは素人のやり方で、分析したデータから本人も気づいていないような弱点や次にやるべき課題を見抜くのがプロの指導者というものです。そのための仮説や検証が進まないまま、とりあえず、マイナンバーに紐づけて学習履歴を蓄積しておこうというのは、とりあえず本棚に興味のある本を積んでおこうという発想と似ていて、いつまでも使われないという結末が見えてしまいます。

日本の教育者の知見を集めて、学習履歴から何を学ばせるかをきちんと体系立てることが重要だと思います。

まさお
まさお

このような議論では、よく「AIにやらせればよい課題を出すよ」などという人がいますが、人様の子どもを預かって理論的な背景もなく無責任にリコメンドを出すAIに課題を預けられるかという問題があります。
最初は、少なくともAIが出した課題を人がチェックして、OKのものだけ生徒にやらせるくらいの対応はしておくべきと思います。その後、データがこなれて一定レベルの信頼がおけるようになって初めてAIは使い物になると思います。

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学習履歴は機微情報と考えるべき

今回の政府や文部科学省の教育データの取り扱いの中では、個人情報保護の考え方がどの程度織り込まれているかが見えづらいです。
テストの得点など分かりやすいデータはきちんと保護されるのですが、タブレット上に書いた生徒の答案内容やテストアプリの利用履歴、デジタル教科書に書き込んだ内容などはその生徒のプライバシー情報に近く、本来は保護対象として管理されるべきです。

例えば、ある生徒が何月何日の何時から何時にどんな強化の勉強をしていたかが、家族や学校の先生に筒抜けになってしまうのは、その生徒が許可をすれば共有されるべきですが、許可をしていないのであれば、そのデータはみられるべきではありません。
利用開始時に許諾をとるとは思うのですが、それが不特定の教師に共有されてしまうのはその生徒にとって許諾の範囲なのか、難しいところだと思います。

まさお
まさお

日本は「子どもの権利」に対する認識が少し弱いと思います。学習履歴の管理はプライバシーと密接にかかわるので、その共有範囲や匿名データ化などの配慮をしないと、いずれ大きな問題になるはずです。

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学習履歴の利用には指導のプロの監修が必要

上記のような問題がクリアされれば、具体的な対応ができるはずですが、その際に指導の本質を理解していない人が好き勝手にAIなどを駆使すると、指導効果が上がらない変なものができるのではないかと危惧します。

自分が過去に様々な学習データを扱っていてぶち当たった壁をいくつか紹介すると…

1.生徒の成績は様々な要素が絡み合ってでてくる
テストの成績はその日のメンタルに相当左右されます
前の日に彼女に振られた男子のテスト結果は学習内容の理解とは別次元の得点になりますし、小学生も前の晩にお母さんに叱られただけで成績は変わってきます。
入手した成績データがどんな文脈のもとで出てきたものかを考慮しないと実は正しく分析もできないという状況があります。

2.単元の得意不得意にも前後関係がある
これは比較的研究が進んでいる領域だと思いますが、ある単元ができないときに、その単元の前提となる過去の単元に問題があるケースが多いです。
その単元をあぶりだして、そこから手を付けるというのは「atama+」や「Qubena」などで実装されている方法ですが、このあたりの考え方は必須だと思います。

3.学習時間と内容はセットで記録しておくべき
学習時間を単独のデータでとってしまうと、内容的にどんな意味があるのかないのかが分からなく、おかしなデータができてくる可能性があります。
机に向かって入試問題を解いていた1時間と、話半分で授業動画を聞き流していた1時間を同じ1時間ととらえるかというと、学習内容と紐づけて、大量データの処理をすることで学習内容の重みづけをしていく必要があるはずです。

まさお
まさお

マイナンバーでデータを管理するのは素晴らしいのですが、そこはスタートラインにすぎません。その先のデータ分析は各大学などで進んでいる研究をもとにロードマップを事前に提示して、どれほどの明るい未来に向かっているかを提示しないと賛同者が得られにくく、進みが遅くなるのではないかと思います。良い取り組みだけに、よい進み方となることを期待します。

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