こんにちは。まさおです。
数日前から英国のベンチャーキャピタルが家庭教師や個別教室を展開するトライグループを買収する方向で調整という報道が出ていますね。買収額は1100億円。それほどの価値があるのでしょうか?
今回のテーマは「トライグループの価値は?」です。
トライグループの買収報道
各社が報道していますが、NHKの報道では以下のような記載になっています。
ポイントは以下の通りです。
- 英国のCVCキャピタル・パートナーズがトライの全株式の買収を検討
- 買収金額は1000~1100億円程度
- トライの2021年5月までの年間売り上げは410億円
- トライのAIなどデジタル技術を活用した指導を評価か
1000億円規模の買収というのは、自分の常識からすると破格の高額買収です。家庭教師事業は広告宣伝費が膨らむ傾向があって、利益がなかなか上がらず、投資余力がないケースがほとんどです。外資の買収で一気に投資をして新しい世界を作る可能性はありますが、日本の教育市場でそれが受け容れられるかは難しいのでは?と思ってしまいます。
家庭教師業は広告宣伝が命
トライの評価について少し考えてみたいと思います。
トライと言えば、無料アプリの「Try IT」やアルプスの少女ハイジをモチーフとしたテレビCMなどで日本中で知らない人はいないほどの認知を獲得しています。
もともと「家庭教師のトライ」としてスタートしてきたわけですが、家庭教師は塾と違って、他の人に家庭教師自体を紹介することが少ない、口コミでの獲得があまり期待できません。
そのため、どうしてもチラシなどを中心とした広告宣伝費が学習塾などに比べると高騰する傾向があります。
「個別教室のトライ」は時代の変化とともに家庭教師を家に上げて教えてもらうということに抵抗を感じる家庭が増えたことが背景で、家庭教師の指導を塾の教室で行うという発想でスタートしたものと思われます。
これ自体は時流に乗って拡大しているのですが、全国で1,000を超える教室を展開して売上が410億円(2020年度はコロナ禍があり、通常期はもっと売上が高い可能性はあります)というと、単純計算で1教室当たりの売り上げ4000万円程度ということになります。ここには家庭教師の売上が考慮されていませんから、実際は4000万も稼いでいる教室は少ないと思われます。
全国の教室を今から2倍や3倍に増やしても、売上は比例して増えないでしょうから、後はIT投資によりコストを減らして利益を上げるか、他塾からの転塾を増やしてシェアを上げるという方向になると思います。
1100億円の買収は投資回収が難しい規模
自分が知り得る限りでは、過去の塾業界の買収は150億円以下のものが大半で、今回はその7倍程度の大型投資となります。
普通に考えれば、年間売上2000億円程度、営業利益が200~300億円くらい出せればこの額で行けるのではないかとも思いますが、前述の通り広告宣伝費などの費用がかさむ業界体質を考えると売上以上に利益確保が厳しいのではないかとも勝手に心配になります。
また、そこまで売り上げが増えなくても、IPOにより非上場の株価が10倍~20倍の価値を付ければ回収の可能性はありますが、あくまでマネーゲームであって教育の本質ではありません。
経営体質が変わって、講師や顧客が離れていくリスクもなくはないですよね。
また、日本の教育はIT投資をしてもそのまま売り上げ増につながらない特殊な体質なので、IT投資の仕方とそれによる指導の変革をどう実現するか、IT投資を指導のどこに入れるかがポイントになると思います。
一方で、塾業界ではこのような規模の大型投資をする企業はほとんどなく、全く新しいIT教育サービスが莫大な投資によって生まれるなら、ゲームチェンジャーになり得る可能性もあると思います。
自分の常識ではこの買収はうまくいかない可能性が高いと思います。
一方でこれまでの常識をまったく覆すような新しい世界がこの投資で生まれるなら可能性もあるのかもしれません。塾業界のIT投資はまだまだ混沌とした状況ですのでどこが抜け出すのか、注目してみていく必要があると思います。
コメント