詩や短歌・俳句が苦手という人がとても多いです。
短い言葉であっという間に読み終わってしまい、何が何だかよく分からないうちに謎の質問が飛んでくると思っている人も多いことでしょう。
ここでは、詩や短歌・俳句をどう読むと入試で得点に結びつくのかを取り上げます。
実は詩の読解は、学校や塾の先生も苦手な人が多くうまく教えられないことがあります。それは、詩のつかみどころのなさや先生自身の鑑賞力の問題なども関係していると思います…(汗)
詩歌は文章表現の究極の形
詩は近年の入試ではあまり出なくなりました。中学入試では一部出るところがありますが、それも減少傾向です。
昨今の実用的な文章への傾倒も影響しているのかもしれません。
短歌や俳句は現代文での出題は減っていて、古典の中に出てくるケースの方が多くなっています。
現代文で出るか古典で出るかの違いはあれ、詩歌読解の基本作法を知っておくことは、国語表現の根幹の理解ともつながっていて、大変意義のあることだと思います。
ここでは、特に詩の読み方・鑑賞のしかたを取り上げます。短歌俳句は別の記事で今後説明しますので、そちらを参照してください。
詩の読解がきちんとできるようになると、人間的な幅も広がるし、芸術的な感性も養われていきます。
特に男子はお気に入りの詩集の1冊くらい、持っているとカッコいいですね。
詩の読解・鑑賞
そもそも詩とはどんなものなのでしょうか?
短歌・俳句も広い意味では詩の一種なのですが、ここでは口語詩・文語詩を中心に深掘りしていきます。
感動を言葉で伝えるのはものすごく難しいということを知ろう!
皆さんは最近感動したことがありますか?
美しい風景でも美味しい料理でも、友達との体験でもどんな感動でもよいですが、感動した経験を思い起こしてみてください。
次に、その感動を誰かに伝えようとしてみましょう。
皆さんはどんな言葉を使って、その感動を伝えますか?
たとえば、この写真。京都にある日本三景の一つである「天橋立(あまのはしだて)」です。
天橋立に来て、自然の不思議さや古くから和歌に詠まれてきた風景であることなどから、とても美しい景色だと感じたときに、その感動をどうすればうまく伝えられるかを考えてみましょう。
「昔から和歌に詠まれてきた美しい風景だ」とか、「さすが日本三景に数えられることはある」といった言葉で相手にその感動が伝わりますか…?
なかなか難しいと思います。詩人はその感動を何とか伝えようと必死に表現を作るわけです。
たとえば、「自然の作った奇跡の風景を目の当たりにして、激しく心が揺さぶられた(比喩) 」 とか、「美しい風景に心をつかまれて、その場から動けなくなった(擬人法)」とか、そこにいろいろな表現の工夫が入ってくるようになるのです。
国語の学習の本質は、「思いを伝えることの難しさ」にあります。
詩はその中でも最も難易度が高い「感動」を扱います。
そこをきちんと理解することが、詩の理解の第1歩なのです。
詩の表現技法は暗記するようなものではない
よく学校で詩の表現技法を暗記させようとします。
以下のような覚えさせ方が定番です。もちろん覚えておいた方がよいのですが、覚えることがゴールではないことを知っておきましょう。
これらの表現技法は技法として覚えればよいという話ではなく、このような表現を使って感動を伝えたいという作者の気持ちを読み取ることが重要です。
テストでは、よく下線部となって、「ここで使われている表現技法を答えよ」などと聞かれてしまいますが、それが答えられても本質的な意味はあまりないのです。
今の受験勉強の弊害は、詩の表現技法がなぜ重要かを説明せず丸暗記させようとしてしまうところにあります。
知識は必要ですが、なぜ重要かの説明はもっと大事ですよね。
詩の主題を考える
詩の表現技法はその裏に作者の「感動を伝えたい」という表現への挑戦が現れているということを理解したら、その詩が結局読者に何を伝えたいのかを考えるようにしましょう。
いわゆる主題の読み取りです。
詩は読まれ方も何通りもありうるため、一つの主題が明確に読み取れないのものもあります。それでも、読者としては「作者はこんなことを伝えたいのだろう」という解釈をしてあげることが重要です。
「ぞうさん」の主題を考えてみる
たとえば、まど・みちおさんの有名な詩「ぞうさん」。これは歌にもなっていて 誰もが知っている 詩なのですが、その主題は意外と深いのです。
少し考えてみましょう。
ぞうさん まど・みちお
そうさん ぞうさん
おはなが ながいのね
そうよ
かあさんも ながいのよ
この詩の解釈について、かつて作者自身が解説をしていた文章を読んだことがあり衝撃を受けました。
「いわずにおれない」という本に書かれていました。
「おはなが ながいのね」で、「人間というものは人と違うところをあげつらう性質をもっていることを表している」、というのです。
人間は、「あいつは足が短い」とか「頭がハゲだ」とか「頭が悪い」とか、人の欠点を指摘して優越感を感じようとする性質があるということです。
学校では特にそういう傾向があるかもしれません。いじめになることも…。
「そうよ かあさんも ながいのよ」では、ぞうの子はそんな人間が欠点をあげつらっていることなど全く気にも留めないで、「おかあさんもはながながいのよ、いいでしょ」と自分がぞうに生まれて生きていることを心から喜んでいる、そしてお母さんが大好きだということを伝えたいという思いで作ったのだと書かれていました。
あんな短い詩からそんなことは読み取れないですが、詩の読解の真髄はこういうところにあります。
まど・みちおさんの詩はとても素敵なので、勉強とは関係なく、読んでみることをお薦めします!
最後はまどさんの紹介になってしまいましたが、このような経験を積んでいるかいないかは、長い人生で大きな差を生むはずです。
理系でも文系でも人生に彩りを加える意味でも、若いうちに詩を読んでみましょう。
コメント