こんにちは。まさおです。
世の中には、紙の辞書は時代遅れという感も流れていますが、良さがないわけではありません。
今回は、電子辞書との選択において、「どんな人は紙の辞書が向いているか」を考えてみました。
紙の辞書と電子辞書の比較については以下の記事を参照してください。
紙の辞書の長所と短所
紙の辞書には紙の辞書なりの長所と短所があります。整理してみると以下の通りとなります。
長所 | □ 視認性・一覧性が高く、関連語や前後の見出し語がすぐに目に入ってくる □ 一度に触れる情報量が多く、目的がぼんやりしているときに威力を発揮する □ 書き込みや付箋を貼るなど作業などがしやすく、印象に残りやすい □ 長く使うほど愛着がわき、パートナー感が出てくる □ 親から子へと時代を超えて引き継いでいける |
短所 | □ ページ数が多く持ち運びには不便。複数の辞書を持ち歩くのはほぼ不可能。 □ 辞書の掲載順序を理解していないと見出し語にたどり着けないことがある (特に濁音「゛」や拗音「ょ」など) □ 電子辞書のような横断検索はできない。 □ 持ち運びが不便なため、引く回数が増やしづらい |
電子辞書との比較でも書きましたが、一覧性の高さはまだ紙の辞書の方が高そうです。
一方で、持ち運びのしやすさや使用回数の増やしやすさでは電子辞書に軍配が上がります。
紙の辞書には紙の辞書のよさがあるので、まずはそれを確認しましょう。
そのうえで、自分に向いていると思えば紙の辞書を使うことが有効です。
どんな人が紙の辞書に向いているか
世の中の主流は電子辞書に傾いていますが、紙の辞書も根強いファンがいます。
紙の辞書の長所を踏まえて、どんな人が紙の辞書に向いているのでしょうか?
以下に該当する人は紙の辞書の方が向いているかもしれません。
①自宅や学校など、辞書を引く場所が比較的決まっている人
使用場所が決まっていて、辞書の持ち運びがほとんどない場合は紙の辞書がおススメです。
② 電子辞書の操作が面倒くさいと感じる人
電子辞書の短所として「操作を覚える」というのがあります。最近の辞書は簡単なので、操作が面倒というケースは減ってきていると思いますが、それでも直感的ではないと感じる場合は紙を使った方が早いと思います。
③ 電池交換や故障対応などのメンテナンス作業がイヤな人
肝心な時に電池が切れたり、故障交換でしばらく何冊もの辞書が使えないといったトラブルを抱える可能性があります。電池交換などをストレスに感じてしまう人は紙の方がよいと思います。
④ 紙が好きな人
理屈抜きに、紙の風合いや手触り、ページをめくる動作などが好きという人は、辞書を引く行為そのものが癒しになっていたりします。そういう人は理屈抜きに紙の辞書がよいでしょう。
紙の国語辞典、おすすめ5選
国語辞典の選び方は学習効率を左右する重要ポイントです。
電子辞書に搭載されている国語辞典がだんだん限られてきていますので、紙の辞書選びならではの視点で整理してみたいと思います。
特定の言葉がどう説明されているか複数の辞書で比較する
今回おススメの辞書を選定するにあたり、最近やっていなかった各辞書の説明を調べてみました。結構大変でしたが、意外と面白かったです。
選定した言葉は以下の6語です。もう少し候補がありましたが、ここまででよいかなと。
見出し語 | 選択理由 |
---|---|
アイデンティティ | 入試定番の言葉。中高生が理解できるような言葉で説明されているか。 |
合い見積もり | 社会人になるとよく使うが中高生にはなじみのない言葉。 |
飽く | 現代語ではあまりなじみがない重要語。辞書の説明姿勢が現れる。 |
演繹 | これも入試定番の言葉。中高生がわかるような言葉で書かれているか。 |
おどろく | 現代語と古語で意味が異なるため、説明の深さが現れる見出し語。 |
シンギュラリティ | 最近急速に使用頻度が上がってきた言葉。最新辞書で扱われているか。 |
上記6語を以下の辞書で調べてみて独断で得点を3段階でつけました。
3点…説明としては十分なレベル。
2点…標準的な説明。人によってはわかりにくいかも。
1点…そもそも載っていない。
各辞書の得点一覧
こんな結果になりました。あくまで独断ですので、参考まで。
辞書名 | アイデンティティ | 合い見積もり | 飽く | 演繹 | おどろく | シンギュラリティ | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
大辞林 第四版 | 3 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 17 |
広辞苑 第七版 | 3 | 2 | 3 | 3 | 3 | 1 | 15 |
旺文社 国語辞典 第十一版 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 1 | 14 |
明鏡 国語辞典 第二版 | 3 | 2 | 2 | 3 | 2 | 1 | 13 |
三省堂 国語辞典 第七版 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 12 |
岩波 国語辞典 第八版 | 2 | 1 | 3 | 3 | 2 | 1 | 12 |
ベネッセ 新修国語辞典 第二版 | 1 | 1 | 3 | 3 | 3 | 1 | 12 |
新明解 国語辞典 第七版 | 2 | 1 | 3 | 2 | 2 | 1 | 11 |
学研常用 国語辞典 第三版 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 | 9 |
今回の比較データの詳細は上記のダウンロードリンクからPDFで確認できるようにしました。
どのような説明が各辞書に載ってい型確認が可能です。
国語辞典のおすすめ5選
便宜上、1~5位の形で記載しますが、ランキングにとらわれず使いやすい辞書を選べばOKです。重要なことは、買うことが目的ではなく、言葉を学ぶために買うことを忘れないということです。
「大辞林」と「広辞苑」はさすがに点数は高いのですが、重すぎるのと辞書としてのステージが違うので、おすすめからは外しました。
第1位「 旺文社国語辞典第11版 」
学習用の辞書としては最もバランスがよいと思います。
今回の調査の中にはありませんでしたが、有名や和歌などの意味も載っていて学習する上で必要な情報はほぼこの1冊で対応可能と思います。
語釈も突飛なものはなく、スタンダードで好感が持てます。
掲載語数は83,500語。
語源や故事などの掲載もあります。
第2位「 明鏡国語辞典第三版 」
言葉の使い方の説明に力を入れているとの言葉通り、語釈や用例は丁寧に書かれていると思います。
新しい辞書だからなのか、歴史的な言葉の使い方への言及が少なかったです。
例えば、「飽く」は「飽きる」の古い言い方ですが、「満足する」という意味があり、「あくまでも(満足するまで)」というような現代の表現につながっています。そのあたりの記述まであればよいと思いました。
第3位「 三省堂国語辞典第七版 」
三省堂はいろいろな国語辞典を出していますが、オーソドックスなこちらがよいと思います。阪神タイガース版や広島東洋カープ版もありユニーク。
今回調査した見出し語は「シンギュラリティ」以外はすべて掲載されていましたが、語釈の説明がやや淡泊な印象です。
ベネッセなどは見出し語が少なく語釈が丁寧なので、この辺りは好みで選ぶとよいと思います。
第4位「 岩波国語辞典第八版 」
評価ポイント的には三省堂国語辞典と同じですが、「アイデンティティ」の説明が少し淡泊だったことと、「あいみつもり」が掲載されていなかった分、順位を下げています。「あいみつもり」なんて言葉は中高生が使うことはないと思いますので、あまり差はないと思ってよいと思います。
全体的には大人向けの辞書という雰囲気が漂っています。
少しとっつきづらさを感じるかもしれません。
第5位「 ベネッセ新修国語辞典第二版 」
掲載されている見出し語の説明は大変丁寧で学習用の辞書として素晴らしいと思いました。一方で、見出し語をかなり絞っているのが長所でもあり弱点。「アイデンティティ」の掲載がないのは目を疑い、何度も見直しをしてしまいました。
掲載語数は47,000語とのことなので、他の辞書に比べるとやはり掲載語数が少し物足りないようです。
番外編「 新明解国語辞典第七版 」
「新解さん」の愛称で親しまれる三省堂の辞書。気になっている人も多いと思うので、番外編として掲載しました。
言葉の説明が少し独特で、辞書のくせに「味がある」という表現が適切な独特の存在感のある辞書です。
今回の調査では、味のある表現にもあまり出会えず、説明も少し淡泊な印象でした。学習用の辞書というよりも言葉が大好きな人が言葉の世界を楽しむような使い方が適切なのかもしれません。
一口に辞書と言っても、それぞれの主張や世界観があり、比べてみると意外と面白いものです。
学習における辞書は、せっかく言葉を調べるのですからそこで得られる情報量や知識の広がりという観点で見るのがよいと思います。
ぜひ、参考にしてみてください!
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