こんにちは。まさおです。
11/27に文部科学省で開かれた「大学入試のあり方に関する検討会議」で、大学入試センターの山本理事長は、「25年度までに共通テストにスピーキングテストを導入することは難しい」との見方を示しました。
今回は「共通テストにおけるスピーキングテストの行方」について取り上げます。
大学入試センターが提出した資料
11月27日の「大学入試のあり方に関する検討会議」に大学入試センターが提出した資料は以下から確認が可能です。
https://www.mext.go.jp/content/20201127-mxt_daigakuc02-000011142_5.pdfリスニング導入時の経緯を踏まえて、スピーキングを同等の準備で考えた場合の課題を整理しています。
スピーキングはリスニングと異なり、大教室での一斉実施が困難という点が難易度を上げています。
別室にそれぞれ受験生を入れて録音させるとなると、どれだけの部屋が必要かということになりますね。
試験の公平性を担保するには
共通テストのような合格者を選抜するためのテストの場合、実施条件が公平でないと後で大きな問題になります。スピーキングテストを公平に実施するための条件を整理してみるとやはり難易度が高いことがわかります。
評価者の確保
例えば、録音方式をとって、ICレコーダー等であらかじめ設定された質問に対する答えを録音した場合、その録音データを聞いて得点をつける評価者が必要です。
仮に1名5分のスピーキングデータがあったとして、全受験者分で45,000時間程度の音源データになります。それを何名の採点者で評価をするのかという問題になります。
10,000名確保しても、1人4.5時間分の音源を聞くことになります。
一定の採点規準に基づいて公平・公正に評価できる人を10,000名規模で確保できるでしょうか?
採点規準の統一
次に問題になるのが、採点規準です。
小論文の評価などと似ていますが、どうしても主観領域が入ってきます。発音やアクセントの正確さを評価するとなると、どの程度の正確さをもってAとかBとかという評価にするのかを統一し、評価者に周知・徹底を図る必要があります。
上記の10,000名が全員同じ基準で採点するのは不可能でしょうから、複数の評価者の評価を平均するなどの調整が必要になるかもしれません。そのような基準と運用体制を構築できるでしょうか?
録音データの取得・保管・保全
一発勝負の入試において、データを滅失させたり欠損させてしまった場合、軽々に再テストというわけにはいきません。一度実施してしまったテストを再テストしたら当時よりの良い解答が出てくるのは間違いないです。
その意味において、一発勝負の試験の音声を全員分正確に取得し、誰のものか分からなくならないように管理する必要があります。そのような仕組みを構築できるでしょうか?
試験会場の音源に録音させて、それをクラウド上のサーバーに順次アップさせるのか、ICレコーダーの音声を試験後まとめて回収するのか等、手法が問われるところです。
一般的にはICレコーダーに一時保管したものを、順次Wi-Fi等でクラウドにアップさせるのが順当なやり方のように思われますが、試験場にすべてWi-Fiが完備されているわけでもなく、アップロード上の不具合があった場合にどの機器の音声がアップされていないかを後から追跡するのは困難を極めると思います。
このように見てくると大学入試センターの山本理事長の考えは至極もっともな内容で2025年までにこの課題をすべて解決するのは難易度が高いという結論で間違いはないように思われます。
共通テストでスピーキングをやらないといけないのか?
毎度に多様な議論になりますが、そもそも共通テストの段階でスピーキングをやらなければならないのでしょうか?
別の記事でも書きましたが、共通テストの狙いの一つに「高校での指導に変化を与えたい」というものがあります。つまり、共通テストで全員にスピーキングを課せば、多くの高校が授業内でスピーキング対策を行うだろうという思惑です。
そのような発想でスピーキングを導入するとするならば、費用対効果の面で全く見合わないという結論でよいと思います。
各大学が必要に応じて個別試験でやれば十分
スピーキングを共通テストの枠組みで一斉にやるのは困難だとして、各大学の個別試験段階で必要な学部が面接官をそろえて実施する分には何ら問題がないように思います。
これまでも一部の学校ではそのような試験をやっていたわけで、改めて共通テストの枠組みにそれを入れなければならないというのは建設的な議論とは思えないです。
各高校の指導をきちんと管理することも重要
一方で、大学入試でスピーキングをやれば高校が授業時にスピーキングをやるだろうという思惑なのであれば、共通テストにスピーキングを入れるのではなく、高校の指導内容そのものの監査や評価を入れればよいだけという考え方もあります。
各高校においてどのようにスピーキング指導が行われているか、各学校設置者に定期調査を義務付けて報告を上げさせるようにするのではだめなのでしょうか?
何か報告がいい加減になったりするような懸念や人件費的に見合わないといった問題があるのでしょうかね…?
共通テストに50万台以上の録音機器や音源保存の仕組みを構築する方が大変ないように思えてしまいますが、この辺りは有識者のご意見をお聞きしたいところです。
共通テストでのスピーキング導入は当面難しいというのは間違いなさそうです。今後大学入試におけるスピーキングの取り扱いがどうなるか、注目が必要です。
多分実施はないと思いますが…。
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