こんにちは。まさおです。
令和3年度入試で早稲田大学政経学部が数学を必修科目にして話題を集めました。受験者は約3割減りましたが田中愛治総長は成功だったと言っています。その背景は何なのでしょう。
今回のテーマは「早稲田大学政経学部の数学必須化の狙い」です。
週間エコノミストのインタビュー記事
10/18、週刊エコノミストonlineに早稲田大学田中愛治早朝のインタビュー記事が掲載されました。
令和3年度の入試から政治経済学部で数学を必須化したことに対して、「受験者減も成功」と断言する内容でした。
早大政経が受験者減でも成功という理由
田中総長は受験者減でも成功とする理由を以下のように説明しています。
- 大学の経済学や政治学では授業内で統計を使う場面が増えている
- 数学やデータ科学は世の中に出た後、必要不可欠になる学問
- 私大文系の入試科目に数学がないことで数学嫌いを後押ししている
社会に出て活躍できる、真の政治学や経済学を学んだ学生を輩出するためには数学の必須化が必要だったということだと思います。
田中総長自身が早大政経出身で他大学教授からやってきたいわゆる「生え抜き」でない初の総長、研究分野では統計などデータ解析を多く使っていることもあり、大きな変革を進めやすかったのかもしれませんね。
早大政経学部の試験科目における数学の位置づけ
実際に早大政経学部の一般型選抜では数学をどう扱っているのでしょうか。
共通テスト+独自試験(定員300名)
区分 | 教科 | 配点 | 科目 | 必須or選択 |
---|---|---|---|---|
共通テスト | 外国語 | 25点 | ①英語②ドイツ語③フランス語 から1科目選択 | 必須 |
共通テスト | 国語 | 25点 | 国語 | 必須 |
共通テスト | 数学 | 25点 | 数学Ⅰ・数学A | 必須 |
共通テスト | 地歴公民 数学 理科 | 25点 | 日本史B等から選択 数学Ⅱ・数学B 物理等から1科目等 | 1教科 選択 |
独自試験 | 総合問題 | 100点 | 日栄両言語による長文を読み記述 | 必須 |
上記の通り、必須となっているのは「数学Ⅰ・A」のみで、数学苦手組でも取り組めないわけではない程度。「数学Ⅱ・B」まで取ると200点中50点が数学配点になり、全体の25%を数学が占めるようになり数学が得意な受験生にはかなり有利な状況となります。
共通テストのみ(定員50名)
教科 | 配点 | 科目 |
---|---|---|
外国語 | 200点 | 英語 ※リーディング100点、リスニング100点 |
国語 | 200点 | 国語 |
地歴公民 | 100点 | 次のうちから1科目 ①世界史B②日本史B③地理B④現代社会 ⑤倫理⑥政治・経済⑦倫理、政治・経済 |
数学 | 200点 | 数学Ⅰ・数学A(100点) 数学Ⅱ・数学B(100点) |
理科 | 100点 | ①物理基礎②化学基礎③生物基礎④地学基礎から2科目 または⑤物理⑥化学⑦生物⑧地学から1科目 |
共通テスト利用型入試では独自試験はありません。こちらでは「数学Ⅰ・A」「数学Ⅱ・B」が必須で800点中200点の配点(25%)となっています。
数学があまり得意でない場合は、数学Ⅰ・Aのみで対応できるパターンを選ぶことでそこまでの負担なく勝負ができる状態だと思います。
社会で活躍できるには数学ができることが重要
ここで重要なことは、早稲田大学は受験生を多く集めることだけを考えているのではなく、社会に出て有用な学生にはどのような基礎学力を求めるべきか、大学ではどのような授業を行うべきかを考えた上で、数学必修化にかじを切っているということです。
週刊誌等の記事は受験生の増減を取り上げがちですが、入学者の学力や卒業生の釈迦に出てからの活躍などに目を向けるとこの判断は数年後に良い結果をもたらす可能性の方が極めて高いということだと思います。
結果的に、
・慶應経済や慶應法との偏差値逆転
・早慶両方に合格した場合の早稲田選択率の向上
といった成果をもたらしているということです。
(偏差値は調査機関によって結果が変わるので一概に早稲田が上とは言い切れないですが…)
逆に受験生側は「数学が苦手=文系」という考え方を捨てて、文系でも数学をある程度は学び続けることが大学入試だけでなく社会に出てからの差になると考えるべきでしょう。
日本の文系大学はもっと数学を取り入れた方がよいと思います。今回の早稲田の英断が多くの私大の受験科目を変えてくれると日本の教育市場も大きく変わると思うのですが、そんな決断ができる次第は多くないのかもしれませんね。
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