「『文節相互の関係』っていう言葉自体がわかりづらい。」という声をよく聞きます。
前回は「文節相互の関係」の基本的な考え方を取り上げました。
「主語・述語」「修飾・被修飾」「並立」「補助」の4つの関係を解説していたのですが、今回は残った「補助の関係」を取り上げます。
前回の記事とセットと読むとわかりやすいです。
「補助」の関係とは?
前回も触れましたが、「文節相互の関係」というのは複数の文節同士の関係がどうなっているかというのを考えるところがポイントです。「相互」という言葉に注目するということです。
当たり前のことではありますが、一つの文節にしか注目していない場合は、「文節相互の関係」は問えません。必ず2つ以上になります。
その中にあって、入試の定番であり、受験生がつまずくのが「補助」という考え方です。
形を丸暗記してもある程度得点できるようにはなりますが、その後の学習のことを考えると、なぜこの形式が「補助」になるのかを理解しておいた方がよいでしょう。
後の文節が単独で意味をはっきり持っていないというのが大事です。
この後詳しく解説します。
「~て(で)/…」のパターン
最初に例文を1つ挙げておきます。
例1)新しい アプリを 使って みる。
この例文は「補助」の代表例です。
「使って みる」に注目してみましょう。
「使って みる」という表現を他の言い方にするとどんな意味だと分かるでしょうか?
「試しに使う」という意味ですよね。
「補助」の関係というのは、上でも説明した通り、2つの文節がセットとなって1つの意味を表す関係です。特に2つ目(後ろ)の文節が、それだけでは独立した意味を持たずに前の文節に意味を付け加える(補助する)働きをしているというのがポイントです。
この場合は、後の文節が「みる」なのですが、「見る」は本来視線をそちらに向けて状態を視覚的に確認するという意味です。
ところが、今回の「見る」はそのように視線をそちらに向けるという意味ではないですよね。「見る」の意味合いが本来の意味から薄れてしまっているということです。
このように、後ろの文節の意味合いが本来の意味と離れて前の文節に意味を付け加える(この場合は「試しに~」という意味)関係が補助の関係です。「2つの文節で1つの意味を表している」ととらえるとわかりやすいです。
ポイントは後ろの文節の意味です。2つの文節セットで意味を表し、後ろだけの文節の意味が本来の意味と変わっているかを目印に判断するとよいでしょう。
代表的な「補助」の形は「~て(で)/…」
「補助」の代表例を挙げると形式的に似たようなパターンであることに気づきます。
・考えて おく
・住んで いる
・拾って くる
・やって しまう
・飛んで いく
などです。いずれも後ろの文節の言葉の意味が本来の意味と少し異なっていることに気づけますか?
「いく」とか「くる」は同じに見えるかもしれませんが、後ろの言葉が単独で移動するという意味を表しているのはなく、2つの文節で1つの動作を表しているという考え方で整理をしてください。
「~く/ない」のパターン
「補助」の関係の多くは「~て(で)/…」のパターンなのですが、もう1つ覚えておくと得をするのが「~く/ない」のパターンです。
例2)彼の 話は 面白く ない。
このパターンは「~て(で)/…」とは全く形式が異なりますが、「2つの文節で1つの意味」を表していますので、補助の関係です。
基本ルールに従って、後ろの文節に注目をすると「ない」というのは「無い」=「存在しない」というのが本来の意味です。
ところが、この文の場合は「存在しない」という意味ではなく、前の文節「おもしろく」を打ち消す(否定する)という意味しか持っていません。
このように「補助」の関係となる条件を満たしているので、「補助」ということになります。
「~ない」が全て補助となるわけではない
上記のパターンで、「~く/ない」と前に「~く」がつくのは何でだろう?とおもいませんか?
そう思った人は鋭いのですが、「~ない」がすべて補助というわけではありません。いくつか「~ない」の例を挙げておきます。
①おもしろく ない
②つまらない
③笑えない
①~③の例はいずれも「~ない」という言い方です。意味も似ているのですが、補助の関係なのは①のみです。なぜかわかりますか?
理由は簡単です。
②と③は複数の文節になっていないからです。
文節というのは「ネ」などを入れて意味を切るかたまりのことですが、②③はどこにも「ネ」を入れて切ることができないのです。
文節相互の関係は冒頭にも言った通り、「相互」である以上、複数の文節であることが前提なので、複数の文節に切れないものはすべて「補助」にはなりません。
このあたりの詳しい理解は「単語」や「品詞」を学ぶとより正しく理解できるようになります。それは今後説明を加えていくようにしますね。
いかがでしたか?
補助の関係は国文法の面白さを少し感じる入り口のようなところです。
パズルのように少し頭を使う必要がありますが、今後、品詞の勉強をより深く進めていくと、言葉の性質がわかってきて、なんと、読解力も上がっていきます。
文法の本質は「言葉の性質を見極めて分類すること」です。
まずは、目の前の言葉の性質を正しくとらえるようにしましょう。
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