文部科学省がデジタル教科書の中間まとめの骨子作成

教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。

1/27,「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の第8回が文部科学省で開かれ、中間まとめの骨子案が共有されました。
今回は「デジタル教科書のあり方」について取り上げます。

デジタル教科書のあり方骨子案のポイント

◆デジタル教科書のメリットの例
⇒画面上へ繰り返し記入と消去ができることで生徒の試行錯誤が容易
⇒音声読み上げやコントラスト調整等で紙でのアクセスが困難だった生徒も使用しやすい
持ち運びの負担が軽減される
◆令和6年をデジタル教科書本格導入のタイミングとする
⇒大学の教員養成課程や教育委員会・学校内研修を通じて教師の指導力向上を図る
紙とデジタル教科書の組み合わせによる試行錯誤の継続が重要

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デジタル教科書の利用ポイントの検討状況

文部科学省の検討会議ではデジタル教科書の利用ポイントについての議論が進んでいます。
1月27日に第8回の会議が開かれその中で骨子案が提示されました。
以下から確認が可能です。

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第8回)配布資料:文部科学省

上記骨子案では、いくつかの有効利用ポイントが記載されていました。
資料には詳細が記載されていますが、主要ポイントをまとめると以下の通りです。

(1)画面への書き込み消去が容易で試行錯誤がしやすい
(2)音声読み上げ等のアクセシビリティ向上が期待できる
(3)教科書の持ち運びの負担が軽減できる
(4)他のデジタル教材との連携強化が容易である
(5)児童生徒の作業内容を学習者全体に共有しやすい

上記はいずれもこれまで言われてきたポイントのまとめに過ぎないと思いますが、これをGIGAスクール構想で配布される端末と連携させてどこまで具現化できるかがポイントになると思います。

まさお
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ポイントは費用対効果をどう評価するかと言うことだと思います。1人1台の端末配布は初期費用だけでなく維持費用も膨大な額が必要となります。「そこまでのお金をかけて画面共有だけかよ」という議論も出てくるはずです。
デジタル教科書の導入目的の合意形成が非常に重要だと思います。

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学習効果向上のみに目的を置かないことが大事

逆説的な言い方になりますが、デジタル教科書推進のためにはデジタル教科書の導入が学習効果を高めるという前提に立たないことが大事だと思います。

指導の現場で長い間授業をしてきた立場で言えば、紙の教材が費用対効果は最強です。デジタル教科書にした途端に、端末の購入・保守・トラブル対応が始まりますし、ネットワークの構築・速度の維持・障害対応も必要になります。
一方で、PCやタブレットはセキュリティ対策が日々必要なため、定期的なバージョンアップ、バージョンごとの動作確認など、授業以外の項目が膨大に発生します。

ITサポーターなどでフォローするにしても、紙の手軽さに比べると比較にならないほどの手間隙をかける必要が出てきます

学習効果向上のためにこれだけの仕組みを整えるのかと考えると、やはり費用対効果でネガティブな意見が出てきますし、出て来なければ健全でないと思います。
それを無理やり押さえ込むような方向性はかえって推進力を阻害する可能性もあると思います。

では、デジタル教科書の導入目的をどう定義すればよいのでしょうか?

自分の考えは、
児童生徒に早くからIT機器に触れる機会を確保することにより、学習効果だけでなくITリテラシーの向上を日常的に促すことが目的である。
ということです。

全く新しい考えでもなく、みなさんわかっていることだと思います。
一方で、学校現場の先生方はどこまでこのことを理解して議論をしていますか?
授業のしやすさや学習単元の理解のさせやすさに軸足を置くと上記の考えは必ず優先順位で下位に置かれてしまいます。

グローバル化が進む中で、中国や欧米の企業の日本進出がすすんでいく中、PCの設定やネットワークのトラブル対応などでいちいちフリーズしてしまうような状況では国際競争力で後れをとることになります。
今の若い世代に将来活躍してもらうためにも、学習効果という観点とは別に、ICT機器に触る機会を確保するという目的を明確に認識してもらうことが大事だと思います。

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令和6年度に向けた準備

文部科学省は令和6年(3年後)を目処に、デジタル教科書の本格導入を検討しているようです。
過去には2020年度に1人1台の端末とデジタル教科書を実現すると言っていましたが、結局財源問題で頓挫しました。今回のコロナ騒動で時計を巻く格好になりましたが、変化したのは端末が手元に行ったことだけで、実運用を行う学校の先生に対する手当がなかなか進んでいないと思います。

教師の研修は必須だが、人の増員も必要

教師向けの研修の充実を標榜して、これから具体的な活動が始まると思いますが、その際に重要なのは具体的なスキルの前にこの活動の意義・目的を正しく共有することです。
目的の共有が曖昧なまま具体的な使い方の研修に入ると、必ず使わない人が出てきます。
目的を履き違えているからです。

次に重要なことは、この活動を支えるには何人の人が必要なのかを試算することです。
学校の先生は明らかに業務過多でこれ以上の業務を課すことは難しいと思います。
学校のクラス人数を5人程度減らしたところで焼け石に水なのは明らかです。

・教師が朝から退勤までにどんな業務をやっているのか。
・それは必須業務なのか、イレギュラーなのか。
・個人の意識の差によってやったりやらなかったりという差の出る業務には何があるのか。
・その業務を禁止すると教育上どんな問題が起こるのか。
・親御さんへの教育のへ協力体制はどのように要請しているのか。

といった、諸々の調査や問題解決を棚上げしたままではやはり時間が足りずに物事がうまく進まないのではないかと思います。
上記の調査をした上で必要な人員増強や予算増をしないとやはり難しいのではないかと思います。

紙の教科書との併用に関する研究も重要

コロナ禍においてオンライン授業が急遽スタートしたこともあり、教科書のデジタル化の方に意識が向いていますが、紙の教科書は長い利用実績ど指導効果が認められているため、紙の教科書を維持しなければならない理由も確認しておく必要があります。

特に学習においては、必要な情報を出来るだけ早く見られること、必要な情報を同時に見られることという観点が重要です。

紙の教科書は検索性においてはデジタル教科書に負けますが、ページ繰りの速さや教科書や資料集など複数の教材を同時にデスク上に広げられるなどのメリットがあります。
また、メモの書き込みやすさやしおりを挟むといった行為もでじたる教科書に比べて直感的です。

そういった複数の特長が、学習のテンポを作り、このテンポの心地よさが学習を長い時間維持する上で重要な要素になります。

その意味ではデジタル教科書と紙の教科書の併用のあるべき姿については継続的な議論を進めてほしいと思います。

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