毎日新型コロナウイルスの感染者数が増えたという報告ばかりで、なかなか出口が見えないキツい日々が続いています。
なかなか精神的に厳しいこんな逆境に際して、人ははどう対処すべきかなのでしょうか。
今回は、来年の大河ドラマや次の1万円札の肖像になることが決まっている渋沢栄一の教えをいくつか紹介しながら考えたいと思います。
渋沢栄一とはどんな人?
渋沢栄一(1840年~1911年)は幕末から明治・大正・昭和と活躍した経済人です。近代日本の発展に民間の立場から関わりました。
設立に関わった企業や学校はなんと500以上と言われ、その中には現在の日本を支える大企業が多数あります。 たとえば、みずほ銀行や東京証券取引所、サッポロビール、一橋大学等々。
激動の日本にあって、日本の基盤を作った人です。詳しくはWikiの記事をご参照ください。
渋沢栄一の講演や発言、原稿をまとめた有名な本に「論語と算盤」があります。
今回はこの本の中から、今の時代の若い人たちにぜひ知っておいて欲しい言葉を取り上げます。
特に若い人たちは以下の言葉から逆境をものともせずに頑張ってほしいと思います。
中学・高校・大学生の時に心がけるべきこと
青年時代は…自分が正義と信ずる限りは、あくまで進取的に剛健なる行為を取って貰(もら)いたい。…ならざることをなし、という意気込みで進まねばならぬ。…たとえ失敗することがあっても、…衷心(ちゅうしん)毫(ごう)も疚(やま)しいところがなければ、かえって多大の教訓を与えられ、…倍々(ますます)自信を生じ、勇気を生じて猛進することができ、次第に壮年に進むにつれて有為なる人物となり、個人としても将(は)た国家の一柱石としても信頼しうる人物となるのである。
「論語と算盤」
幕末時、尊王攘夷派だった渋沢は、ひょんなことから幕臣になるという意外な経歴をたどります。たまたま使えた一橋慶喜が将軍になったことで、欧米視察に行くことになり、ヨーロッパの経済システムや工場に感銘を受けて帰ってきました。
その経験をもとに、明治時代になって、自らの行動力で日本に初めての銀行を設立し、株式会社の仕組みを導入・拡大していくような動きを取りました。
そこから、以下のようなポイントを読み取ることができます。
長い目で見ると、たとえ失敗しても若いうちにいろんなことにチャレンジすることに価値があるということですね。
目の前の失敗にとらわれず、30~50年単位で物事を見るとよいと思います。
逆境への向き合い方
世の中には逆境は絶対に無いとは言い切ることはできない…宜しくそのよって来る所以(ゆえん)を講究し、それが人為的逆境であるか、ただしは自然的逆境であるかを区別し、しかる後これに応ずるの策を立てねばならぬ。…自然的の逆境に処するに当たっては、まず天命に安んじ、おもむろに来たるべき運命を待ちつつ、撓(たゆ)まず屈せず勉強するがよい。それに反して、人為的の逆境に陥った場合は如何にすべきかというに、これは多く自働的なれば、何でも自分に省みて悪い点を改めるより外はない。
「論語と算盤」
長い人生では、うまくいくときもあればうまくいかないときもあります。渋沢栄一の生きた時代は、明治維新・日清戦争・日露戦争・第1次世界大戦・関東大震災といった様々な問題が矢継ぎ早に立ち現れてくる時代でした。
そのような時代の流れに合わせながらも、大事業を進めてきた渋沢の言う逆境との向き合い方は以下のようなポイントになると思います。
今の新型コロナウイルスの拡大に合わせて考えると、この事態そのものをどうにかすることはできないので、事実として受け容れること。
次に、事態の終息に向けて自分が勉強したり努力したりできることはし続けることが重要ということになります。
理論と実践のバランス
学問と社会との関係を考察すべき例を挙げると、あたかも地図を見る時と実地(じっち)を歩行する時とのごときものである。
「論語と算盤」
教科書で学んだ理論を実践しようとすると、なかなか思い通りにいかないことが多いものです。世の中は理論だけでなく、多くの人間が絡んでそれぞれの利害関係の中で動いているからです。
渋沢栄一の時代は、まだ日本に経済を理解していない人が多く、日本人特有の金を稼ぐ奴は卑しいというような考え方も広く一般的だった時代です。
その中で多くの事業を成し遂げた中で実感として出てきた言葉なのでしょう。
学生時代は、理論だけで何が正しいかを判断しがちですが、実践はそう簡単にはいかないもの。理論をベースに実践で修正する経験を積むと人間としての対応の幅が広がってきます。
真の常識人に必要なもの
意志の鞏固(きょうこ)なるが上に聡明なる智恵(ちえ)を加味し、これを調節するに情愛をもってし、この三者を適度に調合したものを大きく発達せしめて行ったのが、初めて完全なる常識となるのである。
「論語と算盤」
ここでいう「常識」とは「みんなが知っていること」という意味ではなく、「 社会を構成する者が有していて当たり前のものとなっている、社会的な価値観、知識、判断力 」という意味です。
子どもも大人も、立派な人間もいれば、とるに足らない愚かな人間というのも残念ながら存在しています。世の中が健全に発展していくためには、多くの人に身につけておいてもらいたい共通の価値観というのがあるということです。
意志と知恵を持っている人は今の世の中に多いのですが、最近は「情愛」のある人が減っているかもしれません。
マスコミの報道を見ても、ツイッターを見ても、容赦なバッシングでその人を再起させないような論調も多いのが残念ですね。
いかがでしたか?渋沢栄一の教えは、時代を超えて今でも全く色褪せずに現代人に様々な示唆を与えてくれています。
これから受験を迎える若い人たちにこそ、このような考え方をぜひ身につけてもらいたいと思っています。
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