4月23日教育新聞に「【入試改革】入試改革を考える会 文科相に要望書を提出」という記事が出ました。
共通テストの拙速な導入に反対の声明を出していた同会はどのような要望書を出したのでしょうか。
今回はこの要望書の内容をもとに今後入試がどうなるかを考えてみます。
萩生田文部科学大臣が「学校推薦型選抜・総合型選抜の日程を延期すべきでは?」と言及した際の記事は以下の通りです。
入試改革を考える会の要望書
一部の自治体が緊急事態措置に伴う休校の延長に言及し始めました。
これ以上の休校継続は、新型コロナウイルスへの感染から生徒を守るという意味では必要な措置ですが、来るべき入試日程が固定である前提においては、今以上に厳しい環境を受験生に強いる判断ということになります。
そんな中で、進路を決め、入試を迎えなければならない今年の受験生の皆さんにとって、現在は本当に厳しい、忍びない状況だと思います。
やはり入試制度そのものを現況に合わせて変化させていく必要に迫られていると考えるべきでしょう。
「入試改革を考える会」が発表している要望(これが要望書の内容と一致しているかはまだ公表されていないので未確認です)をみると、以下の検討を提案しています。
以下の要望が主張の要点であるとして、この記事では検討を進めてみます。
すなわち、
1 試験の実施時期を遅らせる。
2 出題範囲を限定して予定通りに実施する。
3 共通テストの実施は中止して個別試験のみで合否判定を行う。
です。
この検討項目の実現可能性については「入試改革を考える会」も以下のような見解を付記しています。
しかし,現時点ではコロナウィルスの収束の目途がついていません。そうすると,上記1や2の措置をとるとしても具体的なことを即座に決めることは難しいと考えます。3の場合は,ある程度時間的な余裕が確保できますが通常の日程による試験実施の可能性は不透明であるため,事情は同様です。
つまり、どれも現実的には今の状況下で決めきれないし、仮に決めたとしてもまた変更になる可能性があるので難しいという判断です。
「入試改革を考える会」が結局要望した内容とは?
現在の新型コロナウイルスの日本における広がりは、終息時期を予測できるレベルではありません。
一方で、2021年度の入学者を確定するための試験までの残り時間は確実に減っていきます。
そんな中で「入試各階を考える会」が文部科学省に最終的に要望した内容は以下のようなものでした。
1 学校での授業は,通常の年度と同一の進行速度で全項目が実施されるように配慮すること。
2 オンライン授業等を対面授業の完全な代替とは扱わないこと。
3 来年度の大学入学試験についても,どの受験生にも不公平が生じないようにあらゆる可能性を検討して実施すること。
4 そして,事前にそのような準備のあることを公表すること。
この要望から具体的な施策として何を考えているのかはとても読み取りが難しいです。何を求めているか、解説をしてみます。
学校の授業の速度を例年と同一の進行速度で全項目実施
休校分を何らかの措置でやったことにせず、きちんと学校再開後にしかるべき時間をかけて教えてほしいということ。
これは休校期間分、その学年の学習内容の終了時期を後ろ倒しにすることを示唆しています。それを回避するには休校した時間分の授業をどこかでやらないといけませんが、それだと例年の速度より早くなってしまいますね。後ろ倒しの要求です。
オンライン授業を対面授業の代替と扱わない
これは文字通りの意味ですね。オンライン授業でやった内容を授業時数にカウントしないということです。前の項目ともリンクしますが、学年の終了時期が休校した期間分後ろにずれることになると思います。
来年度の大学入試をどの受験生にも不公平にならないようにする
これはすごく難しい要求だと思いますが、全受験生に不利にならないように入試制度を設計せよということですね。
すでに休校継続と学校再開の2グループに分かれて不公平が生じていますから、普通に考えると、最も休校期間の長い学校に合わせ、その生徒が不利にならない入試制度を検討せよということになります。
そこに合わせても入試日までの学校の授業時間数に差があればこの要件は満たせないです。
事前に前項目のような準備をしていることを公表する
これは必要だと思います。どのような検討がなされているかを早く公表しないと、いたずらに受験生の不安をあおることになります。
ものすごくざっくり要約すると、「このままではまずいと思っており、入試について変更の検討をしているということを早く公表して検討に入れ」と言うことです。
その通りだと思いますが、検討内容の具体が難しすぎます。どんな決定をしても必ず批判されるケースになると思います。
要望書を踏まえた21年度入試の対応予測
仮に文部科学省がこの要望書を受け取り、ここに書かれていることをまじめに検討した場合、2021年度の入試はどのようになるでしょうか?
勝手に予測してみます(あくまで個人の感想です…)。
そもそも文部科学省がまともに受け取るかから微妙ですが、受け取らなくても問題は残るので、解決策の検討は必要です。
1.試験の回数を減らすため「大学入学共通テスト」は中止とする
⇒これはかなり現実的かもしれません。二段階選抜をやめ、個別試験のみとすることで受験生の感染リスクや負担軽減にはなると思います。
2.入試の時期を1~3か月後ろ倒しにする
⇒いつまで後ろに倒せるのか微妙ですが、4月開始の新年度を特例的に5月あるいは6月開始などにして、「共通テスト」を2月中旬や3月中旬に実施。個別試験を3月下旬や4月上旬に実施というように数か月ずらすという方法です。
新型コロナが終息傾向になったタイミングでスケジュールを組んで公表するしかないので、判断時期が難しいです。また、一度公表したスケジュールは変更が難しいと思います。
3か月後ろ倒しでも「入試改革を考える会」の要望は完全に満たせないですが、休校期間分入試を後ろにずらすということを考える時期に来ていると思います。
最大のネックは予算年度だと思われます。前例がないのでぐちゃぐちゃになると思いますが、財務省の頭脳明晰な役人が本気で考えれば何とかできるはずです。最後は政治力が要求されます。
民間企業だって決算月の変更とかやっているわけですから…。
3.試験範囲を一部削減する
これは他の施策とセットで考えないといけませんが、あまり実行出来ではないかもしれません。
どこの試験範囲をカットしてもそれで公平性の担保にはならない、むしろ不公平感を助長する可能性があります。
陸上で言えば「10種競技から棒高跳びを外す」といった措置なので、棒高跳びが得意だった選手からすれば不利になるしかありません。
個人的には、1と2はあり得ると思います。特に2.の動きは真剣に検討を開始すべきと思います。日本中が混乱すると思いますが、すでに混乱しているので、現行制度を強行するよりましだと思います。
そして何よりも制度設計の変更を検討していることを早く公表し、大学も含めて具体的な対応検討をスタートすべきです。入試問題もそろそろ作成が始まる時期だと思います。スピードと透明性が大事だと思います。
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