【実現可能?】文科省「小1・小6・中3優先の分散登校」について

教育に関する政策
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まさお
まさお

文部科学省が5/1に「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について」という通知を出しました。
小1・小6・中3を優先的に分散登校させてみてはどうかという趣旨です。

休校継続で学びが遅れるのは問題なのですが、果たして分散登校は可能なのか、その方法について考えてみましょう

今の世の中は前例のない感染症対応が求められ、情報収集⇒適切な判断⇒速やかな周知と実行が必要です。思考力・判断力・表現力が実践レベルで求められているケースです。これを教材として、自分の考えをまとめてみることは、学校の授業以上に貴重な学びの機会を与えてくれると思います。

分散登校実現の要点

形式にとらわれず、通知の趣旨を正しく理解することが大事
⇒一部学年優先や分散登校は例にすぎない
実現には主体的に考える人が各学校に必要。指示待ちではムリ。
⇒各自治体で考えていた分散登校モデルを流用してみる。
⇒担任などは学校を上げて柔軟に配置するような采配が必要。
⇒管理職の真価が問われてしまう。

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始めに今回の通知の趣旨を読み取る

今回の文部科学省の通知について、テレビのニュースやネット上では様々な意見が出ています。

教育の機会は平等であるべきとか、現実的に難しいとかといった意見です。

最初にこの通知の趣旨を正しく理解するようにしましょう。通知の現物は以下の通りです。

https://www.mext.go.jp/content/20200501-mxt_kouhou02-000004520_2.pdf

冒頭部に通知の趣旨説明があります。要点部分のみ引用してみます。赤字はこちらで施したものです。ここだけ拾い読みすれば趣旨は伝わります。

文部科学省が実施した調査によると,令和2年4月22日時点において,小学校及び中学校では95%,高等学校では97%について臨時休業が実施されている。一方で,懇談会提言によれば,地域によっては「徹底した行動変容の要請」が長期に渡ることも考えられ,臨時休業が長期化した場合,「新型コロナウイルス感染症対策のために小学校,中学校,高等学校等において臨時休業を行う場合の学習の保障等について」(令和2年4月21日付け文部科学省初等中等教育局長通知。以下「学習保障通知」という。)の1で示した児童生徒の学びの保障について懸念が生じることとなる
(中略)
学習保障通知で示した取組に加え,こうした提言を踏まえ,各設置者において可能な限り感染及びその拡大のリスクを低減させながら学校における教育活動を行うことに資するよう,ガイドラインを補足するものとして学校運営上の工夫の在り方を示すものである。

文部科学省「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について」より
まさお
まさお

長々と書かれていますが、要約すると以下の通りです。
・休校が長引くと学びの保障が難しくなってしまう。
・感染リスクを抑えながら学校が教育活動を行える工夫をしよう。
ということです。

さらに、その工夫の在り方については、以下のような記述が出ています。

これも一部引用します。

学校の臨時休業を続けざるを得ない地域においても,ICTを最大限活用しながら,感染症対策を徹底した上で,分散登校(児童生徒を複数のグループに分けた上でそれぞれが限られた時間,日において登校する方法)を行う日を設けることにより,段階的に学校教育活動を再開し,全ての児童生徒が学校において教育を受けられるようにしていくことが重要である。
(中略)
このような分散登校を行う際には,進路の指導の配慮が必要な小学校第6学年・中学校第3学年等の最終学年の児童生徒が優先的に学習活動を開始できるよう配慮すること。併せて,最終学年以外の指導においては,教師による対面での学習支援が特に求められる小学校第1学年の児童にも配慮すること。

まさお
まさお

つまり、進路指導が必要な小6・中3は優先する必要がある、また、よりケアが必要な小1にも配慮が必要であるということです。
つまり、小1・小6・中3を優先的に考えるということになります。

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教育の平等性とのバランスはどうあるべきか

このような工夫をするような通知が文部科学省から出ているわけですから、自治体・教育委員会もそのまま無視するわけにもいかなように思います。

一方で、一部の学年からやるのは平等ではないとか、憲法の理念に反していないかといった声が聞こえてきます。ここはどうあるべきか考えた方がよいと思います。

全学年対応できればそれが望ましい

最初に考えなければならないのは、今のままの休校状態をいつまで放置しておくのかということです。オンライン授業との対応が進んでいるとはいえ、本来の学校の指導の在り方とは大きく離れているのも事実です。学校の子どもたちに来てもらって感染リスクを最小にした指導をスタートさせるための工夫が必要というのもわかります。

平等を訴える人は、平等にできるやり方を考えていく必要があります。全学年平等にできればそれに越したことはありません。
文部科学省の主張は、それを実現するだけの余力が今の学校にはないだろうという前提に立っています。
全学年同時でなければ意味がないというなら、それを実現すればよく、それが難しい時に全学年ができないからどこもやらないというのでは困ると言っているということです。

現実的にどの学年から始めるべきか

今の状況で本当に困っている学年を上げるとすれば、最優先は中3だと思います。
来年2~3月に行われる入試に向けた準備が完全に止まっています

次に困るのは都市圏を中心に中学受験が盛んな地域の小6です。都市圏以外も今は公立中高一貫校受検がありますから、やはり小6生の学習を早くスタートさせないと遅れを取り戻せなくなるはずです。

次は意見が分かれるところですが、確かに小1はフォローが必要かもしれません。もちろん、小1はやるべきで小2は後回しでもよいのかといった議論の余地がありますから、小1の必然性は小6・中3に比べればずいぶん下がると考えてよいと思います。

まさお
まさお

今の状況は非常事態です。非常時に際して、学校や塾はどのように子どもたちと接するべきかを考える必要があります。
全ての子どもたちに平等に接することは重要ではありますが、それができないときに何もしないわけには来ません。

受験を控えた生徒へのケアを先に始めるべきというのは現実的な選択だと思います。

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実行可能な方法はどうあるべきか

文科省の通知で求めている要件は以下の2つです。

① 感染リスクを可能な限り低減させること
② 進路指導が必要な学年から順に学びの保障を行うこと

実際に全学年のフォローが難しいとして、小6・中3だけでも分散登校などということは可能なのでしょうか?

文部科学省の通知内容の記載をベースに、もし実現するにはどんな手法があり得るか考えてみました。

クラスを2つに分けた分散登校

感染リスクを最小化するには…
① 学校に来る生徒は感染の可能性が限りなく低い必要がある
② 学校においてもお互いが感染しにくい距離や防御を行う必要がある
という配慮が必要だと思います。

文科省の通知にある以下の考え方は少なくとも必須だと思います。

・生徒間の距離を1~2m程度離す
・クラスの半数の座席は使用せずに空ける
・マスク着用と咳エチケットの徹底を生徒に促す

文科省「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について」より抜粋

分散登校に耐えうる人の配置

文科省の通知が現実的かどうかを最終的に決定づけるのは人の配置です

上記の座席配置をしたうえで生徒に登校させるには、以下の対応が必要です。

① クラスを2つに分け、1日おきの投稿などのスケジュールを組む
② 現状の学年枠にとらわれず、学校を上げて生徒を迎える体制を組む
③ 職員に学校への出勤を可能な限りしてもらう

この3つの条件がそろわなければおそらく実現は不可能です。
ここを実現できるかが、各自治体の教育員会や学校管理職の手腕が問われるところです。

・中3の1組をAグループとBグループに分ける。
・教員もAグループ指導チームとBグループ指導チームに分けて編成する。
・クラス担任もAグループとBグループで異なる教員が担当する。

つまり、1クラスの運営に従来の2倍の人を関わらせて対応するしかありません。
万が一どちらかのグループに感染者が出た場合、両グループに同じ人がかかわってしまうと全員が濃厚接触者となってしまうからです。

学校の先生もテレワークが進んでいるようですが、文科省の当初の趣旨を踏まえれば、先生も生徒も2日に1回は学校に来て対面授業。残りの自宅にいる時間は映像を見るなどのオンライン授業と住み分けるのが現実的でしょう。

上記を本気で真剣に考える人がいれば、おそらく実施は可能です。
その際に、ご家庭にも感染リスクを理解していただき、万が一の感染に理解を示していただける方のみを手厚く面倒を見るというのが正しいと思います。
無理やり全員登校させることは難しいと思います。

まさお
まさお

自治体の中にはすでに分散登校モデルを構築していながら、緊急事態宣言によってお蔵入りさせたところもあります。
その制度のほどは知り得ませんが、そこで検討されたものをより精度の高いものにすれば、感染リスクをゼロにはできないものの、学習の再開は可能になると思います。

感染リスクをどこまで恐れるかが最大のポイントだと思います。

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