これまでも何度か話題になっていた9月入学案。政府・与党が本気で検討を始めたようです。
以前もこのブログで取り上げましたが、改めて政府の案を検討するときにどんな問題が立ちはだかるのかを整理してみたいと思います。
また、今回はもう少し踏み込んで、どんな問題が解決すればできるかも考えてみましょう。
9月入学の検討の概要の確認
まずは日経新聞のリンクを張っておきます。以下の記事に要点が書かれています。
ポイントはおおむね以下の通りです。
・2020年度の指導期間を2021年8月までとする。
・2021年度の指導期間を2021年9月スタートとする。
・入学試験等は20201年4月以降に行われる。
・新小1は9月までは待期期間とする。
9月入学に変更することによるメリット・デメリット
9月入学に変更することによるメリット・デメリットをコロナ問題と関連するものと関連しないものに分けて整理した方がよいと思います。
コロナウイルスと関係するメリット・デメリット
コロナウイルスに関連するところでのメリット・デメリットは主に以下のような内容だと思われます。
メリット | 現在の学習の遅れを取り戻す時間が作れる |
デメリット | 外的な要因により日本の年中行事の スケジュールが大幅に変えられてしまう コロナが長期化した場合、実現可能かわからない。 |
9月入学案の発端は、学校が休校になって学習が止まっていることに対して、いわばゴールを先延ばしにすることで時間を作りたいということです。
コロナによる休校が長期化したり、一度始まった学校が再度休校になるとこの問題は再燃します。1年後には終息しているという予断は禁物だと思います。
コロナと無関係のメリット・デメリット
実はコロナウイルスとは無関係の9月入学推進派がいると思います。コロナと関係のないところのメリット・デメリットも整理しておきましょう。
メリット | 多くの海外の学校と入学時期をそろえられる それにより多くの留学生の受け入れが可能になる 日本人も海外留学がしやすくなる |
デメリット | 小1の就学開始時期が遅くなる 小1生のみ1年半分の生徒が集まり従来の1.4倍に。 幼稚園や保育園との接続への配慮が必要 先生の異動や定年時期の変更が必要 予算年度との調整が必要 |
日本の大学の国際ランキングがなかなか上がらないことの一つに海外の大学の9月はじまりに日本が会わせられていないことがたびたび取り上げられます。日本人が海外の大学に出づらいですし、海外からの留学生も受け容れづらいというのが背景です。
国際競争力を上げるという意味では9月入学案は歓迎されるところだと思います。
9月入学を検討する際に解決しないといけない問題
上記の様々な要因が絡んで、9月入学は検討がされますが、デメリット欄に記載した様々な問題が挙がってきます。これを解決しておかないと現実的には対応が難しいということになると思われます。
学校の先生の異動・定年を9月にずらす
学校の先生を年度の途中で変えるのは難しいと思います。9月入学に移行するにあたっては、学校の先生の異動時期も9月にずらす必要があります。
それに伴って、昇進や定年退職の時期なども9月にずらす必要がありますね。自治体の予算なども9月はじまりの方が扱いやすくなる可能性が高いです。
入試の時期の確定
従来通り7月下旬から8月が夏休みだとすると、入試の時期は6月~7月がメインになります。
現在の1月入試⇒5月に実施、2月入試⇒6月に実施、3月入試⇒7月に実施ということになります。
共通テスト…5月実施
国立2次試験…6月下旬~7月中旬にかけて実施
というイメージです。
卒業式は7月中旬から下旬にかけてということになりますので、卒業式に袴をつけたりブレザーを切るのは難しくなりますね。
日本人は、真冬の寒い時期に入試をやって、寒さが緩み桜の咲く春に新しい門出を迎えるという季節感が定着しています。
これはすべてリセットです。卒業ソングなども季節違いになってしまいますね…。
部活動の大会をいつやるか
現在行われている多くの大会が5月ごろから予選をやって7~8月に全国大会というようなスケジュールなのではないでしょうか?
上記の通り、卒業が7月になると、8月の全国大会には高3生が参加できなくなります。
スケジュールをもう少し後ろにずらして、9月から予選を初めて大会を11月くらいにやれればよいのですが、水泳など季節的に難しい競技も出てきてしまいます。
とはいえ、部活は学校教育の柱の一つですから、できれば3年間に3回の大会出場をさせてあげたいという気もしますね。
入試の時期と合わせて部活動の大会日程の調整が必要になりますね。
小1の就学時期の問題
小1の就学開始が9月になると、7歳半からの義務教育開始となる子が出て来ます。国際的にはかなり遅い義務教育開始となります。本当にそれでよいのかきちんと議論が必要です。
また、初年度は新小1が17カ月分の児童を対象とするため、1.4倍程度の児童数が膨れ上がるということが予想されています。教室や教員数など、受け入れ態勢の調整が必要ですね。
就職活動の時期の調整
高校や大学を卒業する予定の生徒が就職活動をいつするのかも整理が必要です。企業の新卒受け入れが9月からになるとすると、企業の人事の時期も一緒に9月に変更する必要が出て来そうです。
学校の9月開始は、上記の諸問題の解決が前提となりますが、やると決めてしまえばきっとスタートができると思います。
それよりも本気で考えないといけないのは、新型コロナウイルスによる休校措置が今後ないとは言えないということです。また休校になった場合、遅れをどう取り戻すのか、また半年先延ばしというわけにはいかないと思います。その時の対応策も一緒に考えておくことが必要です。
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