こんにちは。まさおです。
7/23の記事で、大学入試における「情報提供システム」である、JAPAN e-Portfolio(以下、JeP)が運営許可を取り消されてしまう可能性について紹介をしました。
一方で、このシステムが停止になるとせっかく登録した情報が無駄になってしまうという議論もあるようです。本当に無駄なのでしょうか!?
今回は「JAPAN e-Portfolioと主体性評価」について取り上げます。
JePのとん挫で嘆く高校の先生
AERAにJePが頓挫したことで、生徒が登録したデータが無駄になってしまうと嘆く先生の話が紹介されていました。実際の記事は以下の通りです。
この先生のように、入試で利用するからせっせとJePへの登録を生徒に促していたとすれば、やはり日本の入試制度は大きな問題を抱えているといわざるを得ません。「主体性」というのは「自分から」ということですから、「入試のため」という段階ですでに「主体的」ではないということになるからです。
「入試で使えるから入力する」という判断も主体的な判断だという議論もありそうですが、この仕組みが狙っているのはそういう主体性ではなく、あらゆる学び舎課外活動に興味を持ち、それに自らの判断で取り組んだという実績を記録として残すということだと思います。
内申点稼ぎではないということです。
なぜ大学入試に主体性が必要なのか?
そもそも大学入試で、なぜ「主体性」などという評価のしづらい項目を入れようとしたのでしょうか?
色々な背景がありますが、日本の国際競争力の低下が背景にあると思われます。
社会人基礎力の必要性
日本企業の国際的な競争力の低下が叫ばれて久しいです。2011年ごろにはすでに国際競争力の低下が見え始め、団塊の世代と言われる昭和20年代前半に生まれた方々が定年を迎えるころ(2010年ごろ)には、日本の活力は低下傾向に向くと思われています。
そんな中で日本が国際的地位を維持するためには、若い世代に将来活躍できる素養を身につけておいてもらう必要があります。
その素養の「社会人基礎力」と経済産業省が定義しました。2006年のことです。
ここの「前に踏み出す力」の中に「主体性」という言葉がありますね。
経産省は人生100年時代を迎えるにあたって、2018年に上記の基礎力をさらにライフステージごとに振り返り(リフレクション)を入れながら「目的」「学び」「統合」の3つのバランスをとることが必要と付け加えています。
要は、「自分の人生の各ステージにおいて、何を実現したいのかを自覚して、それに向かって道を拓く力を身につけておけ」と言っているのです。わかりにくいですが以下のような資料がついています。
普通科教育の限界
日本化高度経済成長期に多くの高校に「普通科」を設けました。普通科は文字通り「普通」の人を育てるコースです。その主たる目的は、一定レベルの読み書き計算ができて、社会人として社会の規範に逸脱しない人を育てることです。
つまり、端的に言うと「高度経済成長期にマニュアルを読み解けて、会社の言うとおりに仕事ができる人を育てたい」ということだったのです。
高度経済成長期は、大量生産による「モノ」の時代ですからそれでよかったのですが、顧客体験や「コト」の時代と言われる現代では、マニュアル世代は通用しなくなってしまったのです。
よって、普通科を再編しようという動きも出てきているわけですが、まずはマニュアルを読んで書かれていることをそのままやるという価値観を棄てることが大事だということになります。
主体性評価の真の意味
このような経緯から、学校教育においても社会に出て活躍できる基礎力を育てておくという観点から、「主体性」とか「主体的、対話的で深い学び(アクティブラーニング)」といった言葉や取り組みが注目されるようになりました。
本来、大学入試で評価したかったのは、上記の文脈からの主体性です。
自分の夢ややりたいことを実現するために、自ら考えて行動する力というようなことになります。部活でも語学検定でも文化活動のコンテストでも、自分の主体的な行動によって成果を出していくことが大事です。
その取り組みの記録簿として、「JAPAN e-Portfolio」が作成されたと考えるべきだと思います。
入試で使われるから、情報を登録しておくというような使い方で進めるようなものではありません。
入試で使われるから登録するということであれば、そこに「主体性」というものが見えなくなってしまいます。
大人も含めて、自分がどのようなキャリアを積んで何を実現していきたいのか、どんな能力を磨いて社会で活躍していきたいのかを考えていくことが重要です。
長い人生なので方向転換もあると思いますが、例えば「将来に備えてまずは英語力を磨きたい。だから英語力を鍛えてTOEFLで自分の実力を客観的に見られるようにする。」というような動機があって、その取り組みをJePに記録するという順番を意識すべきです。
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