こんにちは。まさおです。
11/28のニュースで、文部科学省が各大学に調査した2020年度の大学入試問題の出題形式の割合についての報道がありました。
国立大は99%が記述問題を出題。一方の私大は54%にとどまるという内容です。
今回は「入試における記述問題のぜひを考える」というテーマを取り上げます。
文部科学省の調査に関する報道
まずは、今回の文部科学省の調査に関する方度を確認しましょう。
NHKのニュースは以下から確認できます。
1.記述式問題が出題された割合
・国立・公立大学⇒99%
・私立大学⇒54%
2.長文記述・小論文の出題割合
・国立・公立大学⇒12%
・私立大学⇒1%
※大半は「穴埋め」や「短答式」
※大学の規模が大きくなるほど記述式の出題割合は減少する。
私大で記述問題が出題されない理由
国立の99%が記述問題を出し、私立は54%しか出題をしていないという結果でした。その差はなぜ生まれるのでしょうか?
センター試験(共通テスト)による足切り制度
国立大学は2次試験の前に、1次試験で指定倍率以下になるように足切りを行います。
そのため、2次試験に受験に来る受験生数の上限数があらかじめわかるため、採点体制を組むことが可能です。
私立大学は国立のような2段階選抜を行っておらず、受験者数も毎年増減します。記述問題を出した場合には採点の正確性を担保するための体制が必要ですが、その体制、特に採点員の手配が難しいというのが実際のところです。
毎年のように出題ミスや採点ミスによる繰り上げ合格が行われています。記述問題を正確・公平に採点するというのは非常に難しいことだということがわかります。
わざわざ記述を出さなくても合格者は選抜できる
もう一つの観点は、合格者を選抜するの記述が本当に必要なのか?という問題があります。
文部科学省は「思考力・判断力・表現力」を重視する方針を出していますが、だからと言って入試でそれを問わなければならないというわけではありません。
私大の立場では、自学にとって学力的に見合った受験生を選抜すればよいわけで、記述ありきで考える必要はありません。
むしろマークシートのような出題形式で、多くの答案を短時間で大量処理し、短期間で発表した方が、受験生のニーズにも合致しているということも可能です。
文科省は入試問題を変えて高校の指導を変えたがっている
文部科学省が大学入試で記述を出しているかを大学に調査しているのはなぜなのでしょうか?
高大接続改革の重要項目として、センター試験のリニューアル、英語4技能・国語数学の記述導入という2点が掲げられていますが、これを始める理由は高校の授業を変えたいからというものです。
共通テストで英語4技能の試験が実施されれば、多くの高校は高校時代に英語4技能を伸ばす指導を始めるだろうという思惑です。
同様に、共通テストで記述問題を出題すれば、高校の授業で記述力を高める指導をするだろうという思惑があります。
どっちにせよ、高校の授業内容を変えさせるために大学入試の問題を変えるというのは、すこし順番が違うようにも見えますね。
共通テストの規模で記述問題を出題するのは現実的ではない
過去に文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」でも議論されていますが、50万人の規模のテストを記述式で実施するのは現実的ではなさそうです。
採点員の確保や採点にかかる時間、正確性を担保する仕組みなどがいずれも大規模になりすぎます。
そのため、採点員確保が間に合わなかったり、採点結果を受験生に返すのが遅くなったり、何よりも正しい得点がつけられたかに不安が残る状態になる可能性が高いです。
AIによる採点という話もたまに聞こえますが、現在のペーパーテストの答案をAIに採点させるのはまだ時期が早いです。今のAIには答案の採点能力まではありません。かえって採点ミスが大量に出てしまうと思います。
文科省は今回の調査結果を踏まえて来年春ごろに提言を取りまとめる予定だそうですが、記述式を導入するのは相当難易度が高いという流れになると思われます。
普通に考えれば、今の受験生の規模や受験科目数、合格発表までの時間等を考えると、無理に記述問題を導入する方がかえって正確に採点し、合否発表をすることが難しくなる可能性があります。
入学試験の目的は何かから逆算して、冷静に判断するのがよいように思います。
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