こんにちは。まさおです。
10/10の朝日新聞に「行かない大学の入学金 学生らが署名『コロナで厳しい家計に配慮を』」という記事が出ていました。たびたび問題になる「入学金」を入学しない大学に収めても返還されないことに対して、お金が無駄であるという議論です。
なかなか難しい問題でもあるのですが、今回はこの「行かない大学の入学金を支払うべきか」問題を取り上げます。
10/10の朝日新聞の報道
行かない大学に入学金を払うことは受験生の立場からすると無駄と言わざるを得ません。一方で、大学側としては新入生受け入れのための様々な事務処理があるため、ある時期に入学金を納めてもらわないと大学の経営上困るということがあると思います。
定期的にこの話題がニュースになるのですが、10/10に朝日新聞が記事を掲載していましたので、リンクを貼っておきます。
コロナ禍もあり経済的に厳しい家庭は、入学金の支払いができずに受験を断念する大学が出てきてしまいます。そのような事情を背景に、2021年6月に当時の文部科学副大臣に署名を提出し国にも具体的な検討を要請したという内容です。
入学金が何の費用かもはっきりしないこともあり、これまで多くの受験生がいかない学校に入学金を支払ってきました。制度上やむを得ないと思いつつも理不尽さも感じているこの制度、果たして今後メスが入るのでしょうか?
学納金返還訴訟の判例
入学時に収める、入学金や授業料等の各種費用について、入学を辞退した場合にどこまで返還を求めることができるかという訴訟がかつてありました。
「学納金返還訴訟」と呼ばれています。平成16年(2004年)9月10日に判決が出ています。
いかにその裁判の結果のリンクを貼っておきます。
判決では下のようなことが言われています。
- 入学金は返還義務なし
入学金は「入学できる地位の対価」である
入学金を納付されると大学側は入学を断れないという制約下に置かれる
不当に高額である場合などは例外もあり得る - 授業料、施設設備費、教育充実費等は返還義務あり
原則入学前にに在学契約が解除された場合は返還義務がある
入学後であっても在学契約に基づく給付がなければ提供されていない部分に対応する金額は返還義務あり
つまり、大学側は事前に受験生に「在学契約」として、「入学試験合格後、指定された期日までに入学金等の指定された費用を納めれば、在学契約を結びます」と告知をしており、受験生はそれに同意した状態で入学金を修めているので、返還義務はないという話になっているわけです。
また、在学契約の性質として、受験生側には解除の権利があるが、大学側には解除の権利はなく手続きをされたら受け入れなければならないという制約が発生するため、入学金の返還までの義務は認められないということになっています。
受験生側も理屈では理解しているので、これまで不満を感じつつ支払ってきたという経緯がありますが、このままこの問題が進むかというと、この先潮目が変わるのではないかと思います。
入学金問題の本質は国立の入試が遅いこと
この問題の根本原因は何かというと、私立大学の入試スケジュールと国立大学の入試スケジュールがずれていることです。
国立大学の発表がされる3月上旬にはほとんどの私立大学は入学手続きを終えており、3月の1カ月間は大学側が新入生の受け入れ準備を進めていく時期になっています。
私立と国立が歩調をそろえて入試を実施できるようになればこの問題の多くは解決するのですが、現実的には、共通テストから2次試験までのスケジュールを考えると、私大に合わせることは相当難しいと思います。
結果、私大側に一方的に入学金負担問題の解決を求めると私大側の反発も予想され、制度的にこの問題を解決するのは簡単ではないと思われます。
一方で社会通念の変化に伴い、世の中的に「入学しない大学に入学金を支払うのはおかしい」という機運が高まることも予想され、何らかの対応が必要になる時期はそう遠くない将来に起こる可能性があります。
落としどころとして、「就学支援金」の範囲に入学しなかった大学の入学金支援を含める(ただし、一定の条件は付ける)といった、支援の一部でフォローする形が現実的なように思います。
多くの受験生は入学金支払期限を考慮して受験する大学の計画を立てているはずです。入学金がいくらかにもよりますが、やむを得ず1校程度の入学金を支払ってしまったが、後から国立に合格して無駄になった場合など、特定の条件が成立した場合にのみ入学金の返還を実現する手法を国が主導で整備することが肝要かと思います。
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