「2025年度の大学入試、情報Ⅰは結局どう扱われるの?」
2022年度の高校1年生から新課程での学習が始まっています。この代が受験する2025年度入試から大学入学共通テストの「情報Ⅰ」が加わります。
国立大学協会は情報Ⅰを必須化することを方針として出していますが、2次試験における配点は各大学が検討しています。一部の大学が配点をゼロと発表しました。
今回のテーマは「2025年度大学入試における情報の取り扱い」です。
25年度入試における情報の取り扱い
2022年度の高1は新課程の最初の学年ということで、大学受験をする2025年度入試から大きな変更が予定されています。
特に大きな変更となっているのが「情報Ⅰ」の必須化です。
2025年1月に実施される大学入学共通テストから、6教科8科目にすることが決まっています。
詳細は以下の国立大学協会の記事で確認ができます。
2024年度に実施する入学者選抜から、全ての国立大学は、「一般選抜」においては第一次試験として、高等学校等における基礎的教科・科目についての学習の達成度を測るため、原則としてこれまでの「5教科7科目」に「情報」を加えた6教科8科目を課す。
「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」より
なお、2024年度に実施する入学者選抜での経過措置問題を含む「情報Ⅰ」の活用の方法等について、各大学は、速やかにホームページを活用して公表するなど、受験生に対して十分な説明を行う。
上記の通り、国立大学協会は「情報Ⅰ」を2025年度入試から全国立大学で実施する前提で方針を展開しています。少なくとも共通テストで課す試験科目は、「6教科8科目」とかなり負担も多きいものとなっています。
現在の高1生はこの前提で受験の準備が必要なので、大変ですよね。
一部の国立大学が配点ゼロを発表
現在、世間にざわつかせているのが、一部の国立大学が二次試験における「情報Ⅰ」の配点をゼロにしたことです。
具体的には、北海道大学と徳島大学です。
◆北海道大学の対応
北海道大学の対応については、大学のWebサイトの入試案内ページから確認が可能です。
上記ページに付されている「令和7年度入学者選抜の実施教科・科目等 (一般選抜)」には以下のような記述があります。
【入学者選抜方法】
大学入学共通テストの成績,個別学力検査等の成績及び調査書等を総合して合格者を決定します。ただし,大学入学共通テストの情報Ⅰの成績は配点しません。
なお,本学が指定した個別学力検査等の教科・科目等の全てを受験していなければ,合格者としません。
また,成績同点者の順位決定にあたっては,個別学力検査等の成績を重視します。個別学力検査等の成績も同点の場合は,大学入学共通テストの情報Ⅰの成績を活用します。
導入初年度の2025(令和7)年度入試では得点化をしないと言っています。それ以降の年度がどうなるかは未定であることも別途注意喚起していますので、まずは初年度のみの対応と考えた方がよいと思います。
この方針決定が、様々な方面に波紋を呼んでいますね。
◆徳島大学の対応
徳島大学もWebサイトの以下のページに情報が出ています。
上記ページの「令和7年度入学者選抜(令和6年度実施)の予告【第1報】」には以下のような記述があります。
徳島大学全学部の一般選抜,学校推薦型選抜Ⅱ,総合型選抜では、大学入学共通テストの指定科目として「情報Ⅰ」を課します。
令和8年度入学者選抜(令和7年度実施)までは「総合判定の参考」とし点数化を行いませんが,令和9年度入学者選抜(令和8年度実施)より点数化を行う予定です。令和9年度入学者選抜の詳細は令和7年度中に公表します。
初年度2025(令和7)年度入試と翌年の2026(令和8)年度入試までは「情報Ⅰ」を点数化の対象としないと発表しています。
問題の本質は制度設計では?
この2大学の対応について、情報処理学会は反発をしており、「大学入学共通テストで「情報」を必須としつつ配点しない入試に対する本会の見解」を発表しています。
情報処理学会の立場を考えればこうなるのは当然だと思うのですが、大学側も苦渋の決断をしているようにも読み取れます。
少し掘り下げて考えてみましょう。
「情報Ⅰ」を無配点にした理由を考える
今回、北海道大学と徳島大学は「情報Ⅰ」を無配点にした背景には以下のような問題があると思われます。
- 旧課程の受験生への配慮
- 高校における「情報」の指導体制
1.旧制度の受験生への配慮
今回、共通テストで「情報Ⅰ」を必須化する際に大問題となったのは、浪人生の扱いです。
浪人生は新課程での授業を受けていませんので「情報Ⅰ」を受検することができません。
一方で共通テストは6教科8科目とすることが決まっていますので、いわゆる「移行措置問題」で対応するという方針が決まっています。
ところが、旧課程における情報は「情報と社会」「情報の科学」と、情報Ⅰとは全く求められる水準が異なるため、仮に移行措置問題を作ったとしても、同じ土俵で得点を比較してしまってよいものかという問題がついて回ります。
その意味では、1~2年待って浪人生がほぼいなくなることを待って、得点化するというのは受験生ファーストの視点ではある意味、理にかなっているということもできると思います。
2.高校での指導体制への配慮
もう一つの配慮ポイントは、高校での指導体制です。
教科書やカリキュラムがそろっていても、指導する教員がきちんと確保されていなければ、指導自体は実効性を伴いません。
北海道大学は地元の受験生を多く入学させたいという意向もあると思われますが、地元の高校での指導体制などに配慮をして、体制が整うまでは情報Ⅰの扱いを留保していると考えられます。
方針に対する反発というよりは、制度上の問題点が無視できずに苦渋の決断をしているようにも見えますが、皆さんはどう思われますでしょうか?
受験生は早期の情報収集が大事!
多くの大学は、今年中に2025年度の大学入試における「情報Ⅰ」の取り扱いを公表すると思います。
受験生の側はどの大学が「情報Ⅰ」をどう扱うかを早期に調べておくことが重要です。
塾や予備校が順次、「情報Ⅰ」の取り扱い情報をまとめて公表すると思いますが、「情報Ⅰ」で学習する内容は今後の社会に出て必須となる重要事項です。
決して軽視してよい科目でもないですし、これからの情報化社会においてはむしろ積極的に深く学んでほしいところですらあるという前提でとらえておくべきでしょう。
「情報Ⅰ」の必須化は政府の肝いりですし、国家の未来を考えても大変重要な内容です。入試制度で国家の人材育成の根幹が揺るがないようにという視点は常に持っておきたいですね。
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