「助動詞は数が多くて知識が整理できない!」
受験生からは助動詞の知識の整理が難しいという声をよく聞きます。
前回から助動詞の解説をスタートしました。助動詞とはどのような品詞なのか、そして、助動詞18個を一覧で見てもらうところまで説明しました。
今回から助動詞の覚え方について解説します。
今回のテーマは「助動詞の学習で覚えるべき内容とグループ分け」という観点でご説明します。
前回の記事は以下から確認ができます。
助動詞の学習で覚えるべきこと
助動詞の学習では何に注目をしておけばよいのでしょうか。
入試では、助動詞の活用表を埋めさせるような問題はまず出ません。
活用表を覚えたりする必要はないのです。
一方で、助動詞の意味を選ばせたり、同じ働きの助動詞を選択肢を与えて答えさせたりする問題はよく出されます。
入試や定期テストでよく出る問題に対応できるようにするには、以下の内容をきちんと覚えておくことが重要です。
1.基本形と意味をセットで言えるようにする
最初に覚えないといけないのは、「基本形と意味」のセットです。
上記のように助動詞の基本形(終止形)とその助動詞がどのような意味を持っているかを頭の中でくっつけて覚えておくことです。
面倒くさく感じるかもしれませんが、「ない」が打消しというのは覚えなくてもわかりませんか?
「走る」を「走らない」と「ない」をつけることで打ち消しになるのは日常的に使っている言葉の感覚でわかることだと思います。
一方で、「せる」が使役(しえき)というのは、ちょっと覚えていないと出てこないですよね。日常で「使役」なんて言葉使わないですし。
このように覚えなくてもわかるものと覚えておかないとわからないものがあるので、メリハリをつけて覚える必要があります。
このブログでは、一つ一つの助動詞の学習ポイントを示していますので、そこで何を覚えるべきか確認しましょう。
多少量がありますが、覚えればすべて解けるようになります。他の受験生に相当差をつけられますので、頑張って覚えるようにしましょう!
2.助動詞の活用の型を覚える
助動詞は活用のある付属語であると前回説明をしました。活用があるので、形の変わり方を覚える必要があります。
動詞のときには「五段活用」「上一段活用」などと活用の種類というのがあったかと思いますが、助動詞も同様に活用のパターン(型)があります。
次の項目で詳細を説明しますので、そこで要点を確認してください。
ここでもすべてを完璧に覚える必要はなく、型のイメージができれば自分が普段使っている日本語の間隔である程度補えます。
イメージを作るための基本的な考え方を身につけることが重要です。
3.どんな言葉の下につくか(接続)
もう一つ重要な観点が、「接続」という考え方です。
たとえば、
例1)先生に怒られる。
例2)好きなものが食べられる。
上記の2つの「られる」の違いが分かりますか? 助動詞だけを抜き出せるでしょうか。
この違いを見分けるには「接続」という考え方が役に立ちます。
「接続」とはその助動詞がどんな言葉のどんな活用形の下につくのかという性質のことです。
この知識があると、先ほどの例の解答が分かります。
例1)先生に怒られる。
⇒「怒ら」は五段活用の未然形。「れる」だけが助動詞。
例2)好きなものが食べられる。
⇒「食べ」は下一段活用の未然形。「られる」が助動詞。
見かけ上は同じ「られる」でも単語に分ける場合に、切れる場所が異なります。
このブログでは一つ一つの助動詞で覚えるべきポイントを示していますので、その際に上記3つの観点を意識しておくとすっきりと知識を整理することが可能です。
・基本形と意味のセット
・活用の型
・接続
この3つの観点が重要です。
助動詞のグループ分け
助動詞は全部で18個あるというお話をしてきました。
この18個を機械的に覚えることはとても有効なのですが、その際にグループ分けという視点を持つとスムーズに覚えられるようになります。
文法解説の初回の記事(以下にリンク)で「文法は分類をする勉強だ」という話をしました。グループ分けという考え方も分類という発想が根底にあることを知っておきましょう。
助動詞の「活用の型」を基準に、以下のように6つのグループで整理するとスムーズです。
詳細を確認していきましょう。
1.「下一段型」…「る」で終わる助動詞
下一段型といわれる助動詞は「る」で終わる助動詞のグループです。
おまけの「たがる」は「る」で終わりますがこの仲間には入りません。「たがる」は例外として考えておきましょう。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
れる | れ | れ | れる | れる | れれ | れろ れよ | 受身 | 五段・サ変の未然形 |
られる | られ | られ | られる | られる | られれ | られろ られよ | 受身 | 上一段・下一段・ カ変の未然形 |
れる | れ | れ | れる | れる | れれ | ○ | 可能 自発 尊敬 | 五段・サ変の未然形 |
られる | られ | られ | られる | られる | られれ | ○ | 可能 自発 尊敬 | 上一段・下一段・ カ変の未然形 |
せる | せ | せ | せる | せる | せれ | せろ せよ | 使役 | 五段・サ変の未然形 |
させる | させ | させ | させる | させる | させれ | させろ させよ | 使役 | 上一段・下一段・ カ変の未然形 |
「られる」「させる」の活用表は「れる」と「せる」の活用表の未然形~命令形のマスにそれぞれ「ら」「さ」をつけただけです。
「れる」の活用を下一段活用にあわせて「れ・れ・れる・れる…」と覚えてしまい、それぞれの頭に「ら」をつけると「られる」の活用になるのです。
また、「れる」と「せる」の接続と「られる」と「させる」の接続が同じというのも大事です。1つ覚えれば2つの助動詞の接続を覚えたことになります。
2.「形容詞型」…「い」で終わる助動詞
以下の助動詞が形容詞型です。形容詞型ですので形容詞と同じ「い」で終わります。「まい」は「い」で終わりますが例外として除いて考えてください。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ない | なかろ | なか なく | ない | ない | なけれ | ○ | 打消し | 未然形 |
たい | たかろ | たか たく | たい | たい | たけれ | ○ | 希望 | 連用形 |
らしい | ○ | らしかっ らしく | らしい | らしい | らしけれ | ○ | 推定 | 終止形 |
語尾の「い」の部分を形容詞にならって、「かろ・かっ・く…」と活用させていけば活用表が出来上がります。
「らしい」の未然形がありませんが、あまり意識しなくても大丈夫です。
「形容動詞型」…「だ」で終わる助動詞
ここまで来るとパターンが見えてきますよね。形容動詞型は形容動詞と同じなので「だ」で終わります。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ようだ | ようだろ | ようだっ ようで ように | ようだ | ような | ようなら | ○ | 不確かな断定 たとえ 例示 | 連体形 助詞「の」 体言 |
そうだ | そうだろ | そうだっ そうで そうに | そうだ | そうな | そうなら | ○ | 様態 | 動詞の連用形 形容詞・形容動詞の語幹 |
そうだ | ○ | そうで | そうだ | ○ | ○ | ○ | 伝聞 | 終止形 |
だ | だろ | だっ で | だ | な | なら | ○ | 断定 | 体言 助詞 |
形容詞型と同様、語尾の「だ」を形容動詞の活用に合わせて「だろ・だっ・で・に…」と活用させていきます。
一部活用が表に「○」が入っていたり、連用形のマスに2つしか入っていなかったりしますがあまり気にしなくて大丈夫です。
特殊型…特殊なので丸暗記した方がよい
特殊型といわれる助動詞が4つあります。入試などで問われるのは一部の難関校だけなのですが、ここは活用表自体も丸暗記してしまうと、他の受験生に差がつけられるポイントになります。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
です | でしょ | でし | です | です | ○ | ○ | 丁寧な断定 | 体言 助詞 |
ます | ませ | ましょ まし | ます | ます | ますれ | ませ まし | 丁寧 | 連用形 |
た | たろ | ○ | た | た | たら | ○ | 過去 完了 存続 | 連用形 |
ぬ | ○ | ず | ぬ | ぬ | ね | ○ | 打消し | 未然形 |
特殊型の活用は、助動詞独特の活用を集めたものです。
それぞれの活用パターンを覚えておくと、かなり力が付きます。
たとえば、「いらっしゃいませ」の「ませ」は「ます」の命令形だと気づけるわけです。派生形で「いらっしゃいまし」という言い方があることも説明がつきます。
「無変化型」…終止形と連体形しかないので、見かけ上「無変化」
助動詞の活用の型に「無変化」とあるのは違和感があると思います。だって、「活用とは形が変わること」ですから。形が変わらない活用なんて活用していないじゃないかと思うかもしれませんね。
確かにそうなのですが、これはたまたま「終止形」と「連体形」しかないために見かけ上、形が変わらないのだと納得させてください。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
う | ○ | ○ | う | う | ○ | ○ | 意志 推量 勧誘 | 五段活用の未然形 |
よう | ○ | ○ | よう | よう | ○ | ○ | 意志 推量 勧誘 | 上一段・下一段・ カ変・サ変の未然形 |
まい | ○ | ○ | まい | まい | ○ | ○ | 打消しの意志 打消しの推量 | 五段の終止形 上一段・下一段 カ変・サ変の未然形 |
これを覚えておけば、「う」「よう」「まい」は迷わずに助動詞だと答えられるようになります。頭の中でどんなに形を変えようとしても形は変えられませんが、助動詞です。
おまけ「五段型」…「たがる」のみ
最後に余ったのが「たがる」です。五段活用と同じ活用の型になっています。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
たがる | だがら たがろ | たがり | たがる | たがる | たがれ | たがれ | 希望 | 連用形 |
助動詞の働きとしては「たい」とほぼ一緒なのですが、活用パターンが異なるため、分けて覚えておきましょう。
今回は少しボリュームが多くなりましたが、グループ分けの視点を覚えておくとその後の知識の整理がスムーズに進むはずです。
活用表は完璧に覚えなくてもよいので、だいたい「下一段に似ているパターン」「形容詞に似ているパターン」などと整理しておくだけでよいです。
次回から、助動詞一つ一つの特徴を解説します。
言葉の性質を精緻に理解すると、その後の言葉の学習の世界が一気に広がります。
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