
「助動詞の知識がどうしても頭に入らない」
覚える内容の多さから、最初からあきらめている人も多いのですが、助動詞をきちんと学ぶと日本語の理解が一気に進みます。
ここ数回、助動詞を一つずつ取り上げ、その特徴の解説をしています。残りは後8つとなりました。
今回は特殊型の活用をする「です」「ます」「た」「ぬ」の4つです。
「た」は少し意味が多くて大変ですが、それ以外は活用のパターンが特殊であることを除けば、識別が難しいわけでもなく対応は簡単です。活用表をきちんと覚えさえすれば大丈夫でしょう!
◆「です」
⇒意味は『丁寧な断定』。断定の「だ」を丁寧にした言い方です。
⇒接続は、『だ』と同じで体言と助詞です。
◆「ます」
⇒意味は『丁寧』。
⇒接続は、連用形。動詞の活用形の時に連用形の後ろには「ます」がつくとやりましたね。
◆「た」
⇒意味は『過去』『完了』『存続』の3つ。英語と間違えそうですが、過去と完了の違いに注意。
⇒接続は、「ます」と同様、連用形。
◆「ぬ」
⇒意味は『打消し』。助動詞『ない』と意味は同じです。
⇒接続も、『ない』と同じ未然形。

特殊型の活用はわざわざ「特殊型」というくらいなので、活用がこれまでの経験とは異なります。新しい知識として、この4つの活用の仕方をきちんと頭に入れることが重要です。
助動詞「です」

「です」は、前述の通り、断定の助動詞「だ」を丁寧にした言い方です。経験的にもわかりますよね。
意味は「丁寧な断定」ということになります。そのままですね。
1.「です」の活用
「です」の活用は「です」独特の特殊な活用です。呪文のように何度も唱えて覚えましょう。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
です | でしょ | でし | です | です | ○ | ○ | 丁寧な断定 | 体言 助詞 |

「でしょ・でし・です・です・○・○」と何回も唱えましょう。意外とすぐに覚えられるはずです。
これで「~でしょう」や「~でした」をきちんと単語に分解できますね。
「/でしょ/う」「/でし/た」となりますね。
2.「です」の意味と接続
「です」の意味は「丁寧な断定」のみです。断定の助動詞「だ」を丁寧にした言い方です。
接続は、当然断定の助動詞「だ」と同じで、「体言(名詞)」「助詞『の』」となります。
(1)丁寧な断定
⇒世界に必要なのは平和です。
⇒彼は一人で戦っているのです。
3.助動詞「ます」

意味は「丁寧」です。
「ます」は「です」以上に活用の仕方が特殊でなじみがありません。「です」と同様に、何度も呪文のように唱えて頭に叩き込んでしまいましょう。この活用がわかっていると、品詞分解もかなり自信をもってできるようになります。
1.「ます」の活用
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ます | ませ | ましょ まし | ます | ます | ますれ | ませ まし | 丁寧 | 連用形 |

仮定形の「ますれ」、命令形の「ませ」「まし」が特に注意です。
仮定形は「できますれば、」などと今はだれも使わないような丁寧な言葉遣いの時に出て来ます。命令形も「いらっしゃませ」「いらっしゃいまし」などといったパターンで使われてきました。
2.「ます」の意味と接続
「ます」の意味は「丁寧」のみです。「です」と違って断定の意味を持っていませんのでご注意ください。
接続は「連用形」です。動詞の活用形を学ぶときに、「ます」は連用形につくと習った通りです。
(2)丁寧
⇒外は雨が降っています。
⇒どんなにつらくても走り抜きます。
助動詞「た」

意味は「過去」「完了」「存続」の3つです。
活用が特殊な上に意味の識別も必要なため、少し厄介です。丁寧に確認をするようにしましょう。
1.「た」の活用
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
た | たろ | ○ | た | た | たら | ○ | 過去 完了 存続 | 連用形 |
※「た」が濁って「だ」になることがあるので注意!

「たろ・○・た・た・たら・○」を何度も唱えて覚えるようにしましょう。仮定形の「たら」は要注意です。「できたら」とか、「よかったら」のように「ば」を伴わずに使われることが多いです。
2.「た」の意味と接続
「た」の意味は「過去「完了」「存続」の3つです。
それぞれの意味と識別パターンを頭に入れておきましょう。
(1)過去
⇒昨日、雨が降った。
⇒あの本は去年読んだ。
(2)完了
⇒たった今、列車が到着した。
(3)存続
⇒壁にかけた時計が12字を告げた。
3.「た」の識別問題
「た」は3つの意味のほかに「だ」と濁ることもあるため、他の品詞と間違いやすいという特徴があります。前に言葉を補って、冷静に見極めれば難しくないので、識別パターンをよく覚えておきましょう。
1.過去の助動詞(上に「昨日」など過去の言葉を補えるもの)
⇒長崎は昨日も雨だった。
2.完了の助動詞(上に「たった今」が補えるもの)
⇒台風による雨が(たった今)止んだ。
3.存続の助動詞(「~ている」または「~てある」に置き換えられる)
⇒切り立った岩山を歩く。

「た」の識別は、補う言葉や言い換える言葉をきちんと意識すればすぐに問題が解けるようになります。
過去と官僚の違いは、今か今じゃないかという違いです。「今」と言えれば完了、「今」といえなければ過去というイメージで整理しておくとわかりやすいと思います。
助動詞「ぬ」

意味は「打ち消し」です。
「ない」と同じ打消しなので、皆さんも意味はすぐに分かると思います。活用パターンのみきちんと頭に入れておけば大丈夫です。
1.「ぬ」の活用
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 意味 | 接続 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ぬ | ○ | ず | ぬ | ぬ | ね | ○ | 打消し | 未然形 |

そもそも、基本形を「ず」だと思っている人がけっこういるので注意です。「ず」は古典では打消しの助動詞でよいのですが、口語文法では終止形は「ぬ」ですので注意してください。
2.「ぬ」の意味と接続
「ぬ」の意味は先ほどから言っている通り「打消し」のみです。
接続も「ない」と同じで未然形となります。
(1)打消し
⇒傘もささずに歩いている。
※「ず」は連用形と覚えた方が早い
⇒目に見えぬウイルスと戦う。

特殊型の助動詞4連発はいかがだったでしょうか?
いずれも活用表をきちんと覚えるところがスタートです。「た」は意味が3つあって少しややこしいですが、活用表がきちんと頭に入っていれば、どんな問題で出てきても解答は出せるようになると思います。
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