こんにちは。まさおです。
2021年度の東大入試では文科Ⅰ類の合格最低点が、文科Ⅱ類と文化Ⅲ類よりも低いと話題になりました。この背景はどういうところにあるのでしょうか。
今回のテーマは「東大の合格最低点に見る文系の志向の変化」です。
河合塾の合格最低点サイトで確認
東大の合格最低点の推移は河合塾のサイトで過去10年分が確認できます。
文科1類が例年最も難易度が高く、日本の文系の最高峰だったわけですが、2019年に文2が文1を抜いて話題になりました。2021年度入試では以下の通り、文2と文3がともに文1を合格最低点で上回る状態になっています。
年度 | 文科1類 | 文科2類 | 文科3類 |
---|---|---|---|
2021 | 335 | 338 | 337 |
2020 | 344 | 338 | 339 |
2019 | 352 | 358 | 343 |
2018 | 355 | 351 | 344 |
2017 | 355 | 349 | 344 |
長らくトップだった文科1類がこのような状況になっているはどういう背景からでしょうか?おそらく2022年度入試ではまた文科1類がトップに戻るような気もしますが、行ったり来たりの波が続く可能性も高いです。
その背景を考えてみましょう。
文科1類・2類・3類の違いとは
東大は他の大学と異なり、入学試験時に学文単位での募集をしません。有名な「進学振分け(進振り)」と呼ばれる制度です。
1・2年次を教養学部で学び、3年進学時に学部への振り分けを行います。
東大のWebサイトでは文科1類・2類・3類の違いについて以下のように記載されています。
文科一類:
法と政治を中心にして社会科学全般の基礎を学び、関連する人文科学と自然科学の諸分野にわたって理解を深め、人間と社会について広い見識を養う。文科二類:
経済を中心にして社会科学全般の基礎を学び、関連する人文科学と自然科学の諸分野にわたって理解を深め、人間と組織について広い見識を養う。文科三類:
言語、思想、歴史を中心にして人文科学全般の基礎を学び、関連する社会科学と自然科学の分野にわたって理解を深め、人間と文化的・社会的営為について広い見識を養う。
平たく言うと、文科一類は法学部、文科二類は経済学部、文科三類は文学部や教育学部への進学者が多いと捉えるとよいでしょう。
一方、平成18年度以降、すべての科類からどの学部にも進学できる進学枠が設けられています。これにより受験生側の科類へのこだわりが薄れてきています。
文科一類の合格最低点が下がるということは端的に言うと法学部の人気が衰えてきたということを示唆しているということです。
文科一類の合格ラインが下がる理由
なぜ文科一類の合格最低ラインが下がってきたのでしょうか。
これは東大法学部が持っているイメージと受験生の将来イメージとのバランスが少しずれてきたということが背景にありそうです。
官僚養成のための東大法学部
東大法学部の設立目的の一つに官僚養成があります。
官僚の世界でトップと言われる事務次官は東大出身者が大半を占めます。
また、法曹界でも裁判官や検事などは東大卒が多数を占めていました。
東大法学部といえば、官僚または法曹界というイメージが長らくついて回ったことから、官僚や法曹への魅力が落ちると東大法学部への求心力が失われていくという背景はあると思います。
学際系学部の人気上昇
私立大学を中心に新学部の新設が相次いでいます。
古くは早稲田大学の社会科学部などが夜間から昼間学部に変更され人気を集めているような動きです。
一方で東大の学部は「法学部」「経済学部」とよく言えば伝統的、悪く言えば古臭い学部名が並び、現代風ではない印象を与えます。
中でやっている内容は最新なのですが、印象があまりよろしくないです。
そんな中「法学部」や「経済学部」に行くなら、文学部の社会科学系の学科で広く見識を広めてそれを活かして社会で活躍するというような流れも出てきているようです。
今は科類の関わらずどの学部進学ができる
平成18年度以降、東京大学はどの科類からどの学部にも進学できる進学枠が設定されました。
これにより、文科3類から法学部や文科3類から農学部といった入学時の科類に縛られない学部選びの枠ができました。
もちろん入学後に一定の成績を取っていなければこの枠に入ることは難しいでしょうから、入学試験時の科類選択も重要です。
一方で、行きたい学部が明確でないなら、どの科類でもよいので東大に入ってしまって、そこから学部を考えるというのもありだと思います。
結果的に、これまで入りやすいと言われていた文科3類に人気が集まり合格最低点を押し上げるような格好になっているということだと思います。
東大文系の序列はほぼなくなったと考えてよいのかもしれません。あと数年、合格最低点の序列は揺らぐと思いますが、固定観念で難易度を決めつけないようにしたいものですね。
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