こんにちは。まさおです。
ここ数年話題になっている東大の女子合格者数。ダイバーシティの観点からも、日本の男子重視の傾向からの脱却の意味からも女子比率をどうアップしていくかというテーマがよく取り上げられます。
2023年度入試の状況はどういうだったのか改めて確認してみました。
今回は「2023年度東大入試女子の合格者数について」を取り上げます。
2023年度東大合格者男女別状況
2023年度の東大合格者の男女別の状況は東大HPにアップされていません。
Y・SAPIXの「東大研究室」のWebサイト上で男女別の合格者数をまとめてくれています。
この表をもとに、まとめると以下のような状況となっています。
2023東大男女別合格状況
まずは全体状況です。以下の表は過去3か年で合格者数の比較を比較をしています。
2021年度女子の占有率は20.0%でしたが、2022年度は19.8%と0.2ポイントダウンしています。
科類 | 23 男子 合格 | 23 女子 合格 | 23 女子 比率 | 22 男子 合格 | 22 女子 合格 | 22 女子 比率 | 21 男子 合格 | 21 女子 合格 | 21 女子 比率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
文科一類 | 282 | 124 | 30.5% | 300 | 105 | 25.9% | 311 | 92 | 22.8% |
文科二類 | 285 | 73 | 20.4% | 301 | 56 | 15.7% | 294 | 61 | 17.2% |
文科三類 | 280 | 191 | 40.6% | 282 | 187 | 39.9% | 277 | 192 | 40.9% |
理科一類 | 1025 | 93 | 8.3% | 1027 | 94 | 8.4% | 1014 | 108 | 9.6% |
理科二類 | 399 | 148 | 27.1% | 416 | 131 | 23.9% | 416 | 130 | 23.8% |
理科三類 | 73 | 24 | 24.7% | 77 | 20 | 20.6% | 83 | 15 | 15.3% |
合計 | 2344 | 653 | 21.8% | 2403 | 593 | 19.8% | 2395 | 598 | 20.0% |
女子率の3か年推移グラフ
女子比率の推移をグラフにしてみると以下の通りとなります。
上記の通り、文科三類と理科一類以外は2023年度の女子比率が最も高くなっています。
合計で見ることに意味があるか微妙ですが、合計でも2023年度が最高値という状況です。
一方で、最も女子比率が高い文科三類でもその割合は40.6%にとどまっています。
主に人文科学を中心にしていることもあり女子の志願者が最も多いところでも合格者の女子比率が50%を越えないところが東大の特徴とも言えます。
理Ⅰの女子率の低さが最大の課題
2023年度の女子比率の特徴は、理科一類以外のすべての科類で女子比率が上がっているということです。
東大も意思を持って女子を増やそうと様々な広報活動などを行っているのでその成果が出ていると思いますが、逆に深刻なのは理Ⅰの女子比率の低下傾向です。
Y・SAPIXの資料を見ると理Ⅰの女子比率の過去10年の推移は以下の通りです。
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6.9% | 7.7% | 8.4% | 7.5% | 8.2% | 8.1% | 10.0% | 9.6% | 8.4% | 8.3% |
2020年の10%をピークに4年連続で低下しています。
文部科学省が「教育未来創造会議」の中で、「理系女子学生の活躍促進」をわざわざテーマに挙げている通り、国家の課題として理系女子の少なさが問題になっているとも言える状況です。
文部科学省の理系女子を増やせという指示は一部の大学に「女子枠」創設という形で具現化されつつあります。
東工大も2024年度から女子枠を設置
文科省の「理系女子を増やせ」の号令は全国の大学に対して出ていていくつかの大学はそれに伴う「女子枠」を作っています。
有名ないのは「東京工業大学」で2024年度入試から「総合型・学校推薦型」選抜で143名の女子枠を導入することを発表しています。
これはこれで一定の批判もありました。都立高校入試では女子の募集枠が少ないのは女子に対する差別であるという炎上案件があって、結果3年かけて男子と女子の合格ラインを同じにするような動きがとられています。
このような男女平等の観点からすると、この対応は女子優遇ではないかという見え方もするわけです。
しかし、制度的に女子を増やすようなやり方をしなければ実態を大きく変えていくことは難しいとも思います。
根本的な課題は日本人の伝統的な女子の捉え方
上記以外にも富山大学・名古屋大学・島根大学などの国立大学ではすでに2023年度から女子枠が設置されており、当面この動きは続くと思います。
一部の人からは不平等なこのやり方に対して継続的な批判が出てくると思いますが、私は時限的な対応であれば女子枠設置もやむを得ないとも思っています。
根本的な問題は、日本社会における「女子は家庭に入って家事をやる者」といった古いものの見方が根強いことがあると思います。
国会議員にしても、自治体の首長にしても、一般企業の役員数にしても、日本は女性比率が他国に比べて著しく低いことが多いです。
背景にあるのは、女子が男子を実力的に凌駕して、部下を従えることを潔しとしない男子の意識があると思います。頭の回転がよく、ロジカルにいろいろな意見を発信できる女子を周囲の男子が抑圧してしまい、リーダーになることを邪魔するというパターンです。
特に、理系に進学する場合は「男社会でやっていけるのか」とか「女だてらに理科系を極めることなんてできるのか」といった大人側の偏見をもとにした圧力が女子の難関大学の理系進学を阻んでいるケースは相当あると思います。
この根本的な問題を解決するには、制度的に女子枠を設定して既成事実として女子学生を増やすというのも一つの手段であると思います。
これを何年続けるかは、様々な情勢を見て判断しないといけないと思いますが、この制度自体が不自然なやり方であるのは自明なので、いつかは女子枠を設置しなくても理系女子が一定割合で増えていくような方向にかじを切らなければなりません。
それに何年かかるかが日本の真価が問われるところですが、主要な高校・大学・政財界のリーダーがこの問題に正面から向き合うことが間違いなく必要だと思います。
話題をもとに戻すと、東大の女子比率というのは、このような文脈でも日本のジェンダーに対する偏見がどの程度残っているかを知るバロメーターになり得ると思っています。
理科一類以外の比率が上がりつつあることはよい兆しなので、継続的にこの問題を見ていくことが重要だと思います。
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