休校が長引く中、文部科学省はオンライン授業の積極活用を打ち出しています。一部の公立学校でもオンライン授業がスタートしました。このまま休校が継続すれば、オンライン授業も拡大していくのでしょうか。
急拡大するオンライン授業にはどのような問題点があるのでしょうか?
今回は、オンライン授業のやり方・受け方について取り上げます。
学校教育の役割を考える
オンライン授業の前に、そもそも学校教育とは何のために行われているかから考えていかないといけません。
本来の学校教育の役割は、将来社会で活躍できる人材を国家事業として育てていくことです。
国力を維持・発展させるための国策が教育ということです。
特に小学校は社会に出ていく人が持っている共通の規範を身につける問側面もあり、「知育」「徳育」「体育」と言われる3つの柱を据えてます。
これからの時代は社会の規範も変わっていくでしょう。どちらかというと社会の規範に自分を合わせるという方向から、周囲に人を認めながら自分の個性を発揮することに価値の中心が移ると思います。
いずれにせよ大事なのは、知識や学力だけでなくそれを支える自己肯定感や他者を認めるものの見方を一緒に育てなければならないということです。
学校の学習単位にオンライン授業は含まれない
以下の日経新聞に、文科省の対面重視の姿勢がオンライン授業の壁という記事が出ていました。
対面指導なしでは原則単位は認めないので、オンライン授業が広まらないという趣旨です。
ここには学校教育の本質的な部分をオンライン授業だけで賄えるのか、という問題意識が読み取れます。
もちろんこの制度は、今回のような休校措置があることを想定して作られていないわけですから、時限的にでも現状に即して変更していかないといけないと思います。
一方で、オンライン授業をやればすべて解決という考え方もできないというとだと思います。
現状においては、オンラインで何らかの学習を再開させることが急務だと思いますから、まずはオンライン授業でできることから始めるのが得策です。
オンライン授業でできること・できないこと
「オンライン授業」という言葉の範囲はとても曖昧です。インターネット回線を使った遠隔指導はすべて「オンライン」と括られてしまうので、その中身がどうなっているかが読み取れません。
オンライン授業をタイプで分けながら、どうあるべきかを考えたいと思います。
知識や技能を鍛える配信やアプリ型のオンライン授業
オンライン授業の中で古くからあるタイプは映像配信という手法です。
多くの学習塾も授業映像を持っており、学習を止めないといったときには「授業映像を見よう」という動きになります。
また、この派生として「ライブ配信授業」という形式のオンライン授業もあります。
これも映像を使うことで、実は対面の授業よりも短時間で密度の濃い授業が展開可能です。知識を増やしたり、計算力などの技能を鍛えるにはある意味十分機能する内容だと思います。
ネックは受講者のやる気の維持です。
導入当初は物珍しさも手伝って、やる気が続くものですが、1か月もすれば受講者のやる気にもかなり差が出て来ます。
配信しっぱなしでは定着には至らないということです。
以下の札幌進学プラザなどのYouTube配信は典型的なオンライン授業だと思います。
Web会議システムなどを使った双方向性のあるオンライン授業
こっちの方が学校の授業に近いのだと思います。
Zoomなどのシステムにクラスの生徒を全員集めて、一緒に学ぶということです。
特にZoomを使っている学校が多いのは、多くの生徒の顔を一度に見られるメリットが大きいからだと思います。
一方で、学校と同じような授業をZoom上で行うにはかなりのスキルが必要です。
学校や塾がZoomでどんな授業をしているかあまり見られないので何とも言えませんが、自分がZoomを使っている限りは「授業もどき」になってしまって、本当の授業はここでは展開できないと感じます。
生徒たちに新しい単元の概念や解法をインプットさせるのはむしろ、ライブ配信にチャットを加えた方がスムーズな感じすらします。
クラスのみんなとの意見交換や宿題の提出、質問対応などのコミュニケーションにはZoomなどが向いていると思うのですが。
学校教育で言うところの、「徳育」などは双方向性のあるオンライン授業がとても有効だと思います。
結論としては、どちらにも一長一短があるといことです。対面授業をどちらかで完全に置き換えるのではなく、それぞれのいいとこどりをして組み合わせるのが正しいのではないでしょうか。
学ばせたい内容 | 使うべき仕組み |
---|---|
概念の理解 解法の習得 | オンライン一斉配信授業 (チャット併用など) |
質問対応 コミュニケーション | Web会議などの双方向型授業 |
定着に不可欠なのは教員の理解
学校の先生は上記のいいとこどりの考え方を正しく理解する必要があります。よくわからないまま「とにかく使えと言われたから使う」というのは、典型的な失敗パターンです。
これまで教育ICTが遅々として進まなかったのも教員の研修に思いのほか時間を取られていたからです。
ここを現場任せにしてしまうと大きな教育格差を生むと思います。文科省も教員免許の取得要件の一部にICT教育を組み込むなどの施策を考える必要があります。
自宅の通信環境の問題
オンライン授業を広く展開する際には、通信環境の問題がついて回ります。
携帯3社は学生向けの通信料を50ギガを上限に一定期間無料にすることを発表しました。
中高生の皆さんで、自宅にWi-Fiがない場合は、これを最大限生かすことが重要だと思います。
また、システム側の問題についても理解をしておく必要があります。
典型的な例がClassiです。
今回、122万人の情報流出と一部ログインができない状況が長く続くなど、教育インフラとしての弱さを露呈しました。
Zoomにもセキュリティ脆弱性の指摘があったりと、短期間で一気にオンライン学習が進んだ結果、別の課題が浮き彫りになってきています。
オンライン授業をやる側も受ける側も常に情報を守るという意識をも続けることが重要です。
今回の新型コロナウイルスによる休校で、一気にオンライン授業への方向転換が進むと思われます。
ここで積んだ経験はコロナ終息後も続くでしょうから、新しい学習スタイルへの転換期ととらえるべきだと思います。
重要なことは各要素のメリット・デメリットを理解すること
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