最近、日々各種通知を出している文部科学省ですが、5/14には「学びの保障の方向性」に関する通知を出しました。
内容を見ると各種学習の遅れの取り戻しに取り組んでも遅れの解消ができな場合は次年度・次々年度までの繰り越しも視野に入れてよいとの発信になっています。
今回は「学習の遅れをどう取り戻すか」について取り上げます。
文部科学省の通知概要
今回の文部科学省の通知本文は以下のリンクにあります。
「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における「学びの保障」の方向性等について(通知)」
概要をまとめてみます。
https://www.mext.go.jp/content/20200515-mxt_kouhou01-000004520_5.pdf
あらゆる環境の子どもたちの学びを保障する
新型コロナウイルスの感染拡大を予防する措置を徹底した上で、子どもたちの学びの保障ができる体制を構築してほしいという趣旨です。
・ICTを使った学習環境の整備
・分散登校などの措置による感染予防
・児童虐待など学校を避難所的に扱った方がよい生徒を優先的に登校させる
といった内容です。
学校教育の趣旨を踏まえた対応の徹底
学校教育はカリキュラム通りにものを教えることだけを目的としていません。
「知育・徳育・体育」と言われる要素をそれぞれ満たし「生きる力」をはぐくむのが目的であるから、ことさらに遠隔授業だけに偏って「知育」に終始しないような配慮を求めています。
特に、「学校教育は、教師から児童生徒への対面指導、児童生徒同士の関わり合い等
を通じて行われるもの」であると明記されているとおり、学校という場に生徒を集めることの重要性を指摘しています。
これは、授業に限ったことではなく、友達同士の交流の場や先生と生徒のコミュニケーションそのものの重要性を意識して、自宅で一人で学習では困るということをあえて発信していると受け取れます。
登校日の設定
上記趣旨から、臨時休業中にも登校日を設定したり、社会教育施設などを使った分散登校を積極的に推進することや、1コマの授業を5分程度短縮等の工夫により、密度を上げた対応をしてほしいと要請されています。
今回の措置は指導時間が指導要領の予定時間数を下回ったことをもって、学校教育施行規則に反するものとはしないとわざわざ断っており、いわゆる「お役所的な対応」にならないように注意を喚起しています。
さらに、登校日の設定については小6や中3といった進路選択の入る最終学年と丁寧な対応が求められる小1を優先的に考えてほしいとも記載されています。
分散登校における優先学年の設定については賛否両論あるようですが、与えられた時間や人員、環境などを勘案すればやむを得ないという結論になると思います。
指導内容が年度内に終わらない場合の対応
前述のような対応を強化したにもかかわらず、年度内に予定の指導内容が終わらない場合の対応は、以下のような記述になっています。
学校教育が協働的な学び合いの中で行われる特質を持つことに鑑み、学校行事等も含めた学校教育ならではの学びを大事にしながら教育活動を進めていくことが大切であること等を踏まえ、令和3年度又は令和4年度までの教育課程を見通して検討を行い、学習指導要領において指導する学年が規定されている内容を含め、次学年又は次々学年に移して教育課程を編成する。
「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における「学びの保障」の方向性等について(通知)」より引用
つまり、ICT等で詰込み的に学ばせるのは学校教育の趣旨と反するから、そこまで無理せずに次年度や次々年度まで視野に入れてい教育課程を編成すべきだとしています。
実際は転校生がいるため、あまり独自の調整をするのは現実的ではないように思います。次々年度までという言い方は、今後コロナの第2波・第3波が来た時に備えた表現と受け止め、なるべく早く後れを解消するように努めるのが筋だと思います。
ICTの活用と学びの重点化
最後に、ICT機器を十分に活用して家庭学習を充実されることと、学校に生徒を集める以上は生徒を集めることに意義のあることに重点を置いて指導をしてほしいということが記載されています。
ICT機器についてはいろいろな支援策を用意していることも記載されています。
端的に言えば、与えられたリソースを最大限活用して学校教育が最も高いパフォーマンスを発揮するように「いいとこどり」で組み合わせて全体設計せよということです。
非常に難易度が高いと思いますが、それを各自治体で考えてほしいと通知をしているということです。
今後の学校教育はどうなるのか?
この通知を踏まえて各自治体・教育委員会が対応を考えることなると思いますが、おおむね以下のような対応が出てくると思われます。
1.最終学年と小1を中心とした分散登校のスケジュール
2.学校以外の教育施設を使った行事の実施案
3.夏休みや冬休みの短縮と土曜日授業等の実施案
4.ICT機器の配布とそれによる家庭学習の充実施策
5.教育課程の見直し案
2020年5月16日段階でも緊急事態宣言が解除されたエリアと継続されているエリアがあり、今後感染の第2波や第3波が来た時の対応も考えなければならず、上記をあまり具体的に示すことは難しいのかもしれません。
とはいえ、何も示さなければ誰も動けないので、現状の案を出し、運用しながら適宜修正を加えていくという動きにならざるを得ないと思われます。
1~4の項目は集中して作ってしまえば、何らかの情報発信は可能だと思います。問題は5番目の項目で、1~4をきちんと作って指導時間の計算ができれば第1案は出せると思いますが、現場のパフォーマンスや感染状況によって影響をかなり受けると思います。
その意味では、現状はこの案で進めるが何か新しい要素が出てくればその時点で修正、というような動きにはるはずです。
小6と中3の対応は待ったなし
一番問題になるのは、小6と中3についてです。
入試の日程や範囲が明確にならないといつまでにどこまでの学習を行えばよいか決められません。
文科省は高校入試や中学入試について、試験範囲への配慮を求める通知を出していますが、果たして試験範囲を狭めることは可能なのでしょうか?
特に公立高校は上記対応ができたとしても、私立高校の試験範囲が公立高校の足並みとずれてしまえば中学校側は対応をせざるを得ません。
その意味では、小6や中3の対応については、試験を実施する側の一刻も早い対応決定と情報発信が必要になります。
現在の情勢を客観的に見れば、来年度の入試は大きな日程変更もなく、従来通りの日程で行う前提で準備が進みそうです。
そうなると、調整弁は試験範囲ということになります。試験範囲の調整も相当難易度の高い課題だと思いますが、受験生の立場で言えば、とにかく早く決めて情報を出してほしいということに尽きると思います。
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