こんにちは。まさおです。
デジタル庁を準備中の平井卓也デジタル改革相らが、学校の教科書も原則デジタル化を目指すべきと言っています。萩生田文部科学大臣も、現在のデジタル教科書利用は授業時間の2分の1以下という規制を見直すことに言及しました。果たして教科書はデジタル化できるのでしょうか?
今回は「教科書デジタル化の壁」というテーマです。
平井デジタル改革大臣のデジタル教科書発言の波紋
菅政権になって、デジタル庁開設に向けて平井卓也氏がデジタル改革担当大臣に就任しました。教育関連では萩生田文部科学大臣に、学校教科書も原則デジタル化すべきという提言を10月上旬にしています。
萩生田文部科学大臣も授業時間の2分の1以下にするというデジタル教科書の利用規制を見直すという趣旨の発言をし、教科書のデジタル化の議論が一気に進んだ格好となっています。
さらには、平井大臣からデジタル教科書無償化という提言まで飛び出し、今後のデジタル教科書をめぐる動きが活発化しそうな状況です。
以下の記事で平井大臣と萩生田大臣のやり取りを確認することができます。参考までに。
デジタル教科書はそれほど簡単な話ではない
一方で、教科書をデジタル化するという話はそれほど簡単なことではありません。義務教育を受ける児童生徒に普く無償で配られているものをデジタル化するとなると、越えなければならないハードルがいくつも出て来ます。
本当にそのハードルを超えられれば可能性はあるでしょうか、無償化までこぎつけるには10年以上の時間がかかると思います。
デジタル化のハードルについて見ていきたいと思います。
デジタル教科書無償化の財源はどこから?
第1の関門は財源問題です。
現在、紙の教科書は小中学校において無償で配布されています。紙の教科書は大量に印刷すれば1冊あたりのコストは下がります。
これと同等規模のものをデジタル化しようと思うと、紙の教科書よりも費用がかさむことになると尾見ます。具体的な金額は教科書会社の開発費用がいくらかかったかによりますが、紙の教科書以下になることはないでしょう。
GIGAスクール構想でただでさえPCやタブレット端末の配布・維持に費用が掛かっているところに加えて、デジタル教科書の費用も国が負担するとなれば、よほどの措置をとって財源を確保しないと難しいと思います。
デジタル著作権の処理は道半ば
新型コロナの影響でデジタル著作権の考え方もある程度進んだように見えますが、教育コンテンツにおける著作権の問題というのはなかなか時間のかかる厄介な問題です。
具体的には、
①国語や英語の教科書に載っている素材文の著作権
②社会科の教科書に載っている寺社仏閣の写真の権利
③理科の教科書に載っている写真類の権利
あたりの処理がうまくいかないと進められません。
デジタル教科書における著作権はどうしてもコピーのされやすさなどから許諾が取りづらかったり、許諾が取れても費用が高かったりします。
学校教育用には特例的に著作物の使用を認めるといった法整備をしたとしても、デジタル教科書を紙の教科書と同列に扱えるかは議論が必要なところです。
デジタル教科書の検定はどうする
もう一つのハードルが検定問題です。現在の紙の教科書は教科書検定で合格したものです。同様の検定をデジタル教科書で行うのは、紙の何倍も時間がかかります。
動画コンテンツなどを実際にすべて見るのは紙の記載内容のチェックに比して時間がかかるということです。
過去の議論でも、デジタル教科書を検定するのは難しいので、あくまで検定は紙の教科書として、デジタル教科書は参考図書の扱いとするような動きになっています。
一方で、平井大臣の言うようにデジタル教科書を紙の教科書に変わるスタンダードなものとするには、デジタル教科書自体を検定で認可する体制が不可欠になってくると思います。
全てのコンテンツをすべてデジタル化するのか、効果の高いところに絞って部分的にデジタル化するのかでも費用は大きく変わってくるはずです。
学年・教科を絞って試験導入をまずは進めるべき
上記のような議論が続いている中でのデジタル教科書の本格導入はなかなか難しいと思います。
では、今後に向けてデジタル教科書はどう進めればよいのでしょうか?
1.学年・教科を絞って導入する
最初に考えないといけないのは、とにかく全生徒に対してデジタル教科書のみを使った授業をスタートさせることです。
その意味では、学年・教科を絞ってスモールスタートで知見を溜めていくことが望ましいと思います。
2.効果的な単元に絞って利用する
もう一つの観点としては、デジタル教科書が効果を発揮する単元に絞って利用するという考え方です。平井大臣の考えとは少しずれるかもしれませんが、紙の良さとデジタルの良さを共に知っている立場からすると、すべてデジタルというのはコスト高な感じがすると思います。
したがって、「この単元はデジタル教科書が活きるよね」と学校の先生がワクワクするような単元をデジタル化するのが望ましいと思います。
3.教科書会社以外の参入も検討する
さらにコスト面で考えていくと、教科書会社以外が作ったデジタルコンテンツを活用できるようにするというのもポイントです。検定教科書はどうしても作成にお金がかかるものが多いため、デジタル化にもそれなりの費用がかかります。
民間企業がすでに持っている資産を利用して、得意な教科・単元を安くデジタル教材に移行できるなら、それを検討するのもありだと思います。
このように、教科書のデジタル化というのはそれほど簡単な話ではありません。エンタメなどと違って、教育はどうしてもコストがかかる活動です。教育用に開発されたソフトやコンテンツはなかなか収益的にも大きく利益を上げることができず、ギリギリのところでやっています。デジタル教科書もそのような流れに乗ってくる前提で整理した方がよいと思います。
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