共通テスト、記述式問題の取り扱いは? ~文科省検討会議より~

大学入学共通テスト
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
もんぶ科学省で12/11に、「大学入試のあり方に関する検討会議(第19回)」が開催されました。今回はこれまでの経緯をまとめた資料が配布され、結論に向けた動きに入ってきています。
今回は「共通テストにおける記述問題の取り扱いはどうなる?」というテーマを取り上げます。

記述問題取り扱いに関する主な意見

1.記述問題を共通テストで課す必然性があるか
⇒思考力・判断力・表現力は記述問題でなくても把握できる
2.採点の公正性と採点完了までのスピードの維持ができるか
⇒質の高い採点者を8,000~10,000名確保する必要があり難易度が高い
⇒50万人規模の記述式問題の採点において個人の主観を完全に排除するのは困難
3.記述式の導入目的の再確認
⇒採点可能な条件を整理する中で字数が減ったりすると本来の目的が達せなくなる
共通テストでの出題ではなく大学個別試験での出題を支援する形が望ましいのではないか。

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大学入試のあり方に関する検討会議(第19回)資料

12月11日に開催された「大学入試のあり方に関する検討会議(第19回)」では、過去の議論をまとめた資料が提示されています。膨大な内容で読み込むだけでも大変な時間がかかるのですが、これまでの経緯を様々な論点から見直していますので、とても有用な内容だと思います。

以下のページから確認が可能です。

大学入試のあり方に関する検討会議(第19回)配布資料:文部科学省

この資料中にある、「参考資料1 これまでの主な意見の概要 」を見ると、各論点に対するこれまでの有識者のコメントを一気に確認することが可能です。

48ページから始まる記述式問題に対する意見に目を通してみると、全体の論調が見てとれます。

まさお
まさお

基本的な論調として、「記述式問題導入には総論で賛成」だが、「現実的な実務体制の構築が困難」という流れになっています。
また、実施のために出題内容を変更することで、本来の目的を達成できなくなるという真っ当な意見もあり、「記述式の実施自体を目的化しないこと」が重要だと思います。

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共通テストに記述問題は必須か?

上記議論からいくつかの論点について取り上げたいと思います。
最初に表題の通り、そもそも共通テストに記述問題は必須なのかというお話です。

前回記述問題が見送りになった際に、なぜ記述問題が実効性の検証もないまま導入前提で進んだのかという問題が取り上げられました。

その際に出た意見として、

高大接続改革については、学力の3要素をそのまま大学教育まで接続させようとするなど理念が肥大化しすぎて、フィージビリティを度外視することになったのではないか。

共通テストの英語・記述式の導入見送りについては、理念が先行し、センター試験の実態と認識がずれていたことが問題だったのではないか。

といった意見があり、そもそもエビデンスに基づいた議論がないまま、理念先行で「とにかく記述問題を導入すべし」という動きなっていたことが指摘されています。

今回の資料の中でも

今回の入試改革は高校・大学教育との一体的な改革を目指していた。一昨年高校学習指導要領が改訂され、論理的な思考力・表現力の育成が重視されたが、そこで育成される力のうち、大学での学問に必要なものは、入り口段階で評価することは合理的であり、入試全体の中で記述式が果たす役割は重要度を増す。

上記のように、入学試験段階で記述式を課すことの重要性が前提として議論されているのですが、一方で、

思考力・判断力・表現力の評価は必ずしも記述式問題でなければできないものではない。

のような意見もあり、記述式問題の意義が共通認識として確立されていないことが問題です。

まさお
まさお

まずは、入学試験において文科省が考える「記述式問題」とはどんな出題内容でどのような力を測るものかを確定させ、それをどの段階の試験で課すことができれば目的が達せられるかを整理して、個別議論に入る必要がありますね。

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現実的には各大学の個別試験での実施が落としどころ

共通テストで記述式問題の導入をしようとした場合には以下のような意見が出されています。

採点の煩雑さ、自己採点の難しさ、あるいは別解の可能性等を鑑みると、50 万人以上の受験生が参加する一斉試験で記述式問題を出題することは適切とは言えない

共通テストで記述式を課す場合、採点の都合上、一定の採点基準が設けられることは避けがたく、かえって“点数の取れる記述”に思考が固定化されるのではないか。

50 万人規模の記述式問題を採点するうえで、個人の主観の影響を完全に排除するのは困難ではないか。

共通テスト試験に記述式問題を導入する場合、質の高い採点者を8千人から1万人程度確保する必要があり、実施期日によっては大学教員による採点が困難なため、民間事業者を活用せねばならない。また、採点ミスの発生を前提に、成績確認への対応、成績修正の仕組み、万一成績修正が生じた場合の救済などの検討が必要

上記のような意見から、50万人規模の共通テストで公正な採点を従来のスケジュールを維持したまま実施するのはかなり難易度が高いことがわかります。

まさお
まさお

そもそもそんなことができていたら最初からやっているはずで、高いお金を投じてマークシート式を維持してきた背景なども考慮すると、この議論の方向自体がありもしない理想を追求しているようにも見えてしまいます

今後の議論の行方としては、
1.記述式問題とはどのような問題を指すのか、定義を確定させること
2.共通テストでの導入にこだわらず、各大学の個別試験での実施で調整すること
3.個別試験での記述問題導入を支援する体制を構築すること
あたりがポイントになりそうです。

特に、各大学が、文科省がこれまで考えてきた「思考力・判断力・表現力」を大学の入り口段階で測るのに適切な記述式問題を出題することができるような、問題例や採点規準の提示、実施大学への経済的な補助といった支援で後押しをするというのが現実的なやり方だと思います。

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