デジタル教科書2025年度に100%普及を目指す ~政府目標~

教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
12/18、政府は経済財政諮問会議において、教育のデジタル化の加速を掲げて、具体的な数値目標を伴った、今後の工程を策定しました。
今回はその中の「デジタル教科書を2025年度100%普及」を取り上げます。

デジタル教科書の今後の工程

◆ICTを活用した授業頻度(ほぼ毎日)の割合
2019年度…小学校37.1%、中学校17.9%
2023年度…100%
◆デジタル教科書普及の目標数値
2020年3月の実績…8.2%
2025年度の義務教育の学校…100%

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政府の経済財政諮問会議の資料

以下のページから確認が可能です。

第34回会議資料 - 経済・財政一体改革推進委員会 - 内閣府
経済・財政一体改革推進委員会の資料を掲載しています。

この会議は教育以外の項目も含めた4つの柱で成り立っています。
・社会保障
・社会資本整備等
・地方行財政改革等
・文教・科学技術
この4つ目の「文教・科学技術」にある17個の項目の1つに「教育の情報化の加速」という項目があり、デジタル教科書の推進が掲載されています。

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教育の情報化の加速の具体的な項目

では、「教育の情報化」とはどんなことを薦めるとしているのでしょうか。
大きく5つの項目が掲げられています。

1.学校ICT環境の整備
2.デジタル教科書の普及促進
3.遠隔・オンライン教育の推進
4.学校の指導体制等の充実
5.ICT活用による校務改善等

それぞれの詳細は子では扱いませんが、当面は2023年度を目標に具体的な数値目標を掲げて、そのための施策・予算を効率運用していこういう趣旨です。

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デジタル教科書の普及促進の具体的な数値目標

以下のような目標を掲げています。

KPI第1階層(最初に目指すべき数値目標)

(1)学習者用コンピュータの整備状況
※2020年度:義務教育段階の児童生徒1人に1台
(※2020年3月:公立小学校5.5人に1台、公立中学校4.8人に1台)

(2)高速大容量の通信ネットワークの整備状況
※2020年3月96.6%→2022年度:100%

(3)学習者用デジタル教科書の整備状況
※2020年3月:8.2%
→2025年度:義務教育段階の学校において100%

(4)ICT支援員の活用状況
※2020年3月:約2,500人→2022年度:4校に1人程度

(5)ICT活用教育アドバイザーによる助言・支援の実施状況
※現状値データなし、今年度末に調査
→2021年度:助言・支援を必要としている全自治体

まさお
まさお

環境整備と人材育成や有識者の支援を前提に、教科書普及が行われるように配慮されているので、きちんとこの通り周辺整備から実行されれば、理論上は実行可能だと思います。

KPI第2階層(第1階層をより深掘りした数値目標)

(1)児童生徒の情報活用能力に関する指標を設定
※データなし「情報活用能力調査」の実施を踏まえ検討

(2)ICTを活用した授業頻度(ほぼ毎日)の割合
※2019年度:小学校37.1%、中学校43.6%
→2023年度100%
(参考)OECD TALIS2018調査「児童生徒に課題や学級での活動にICTを活用させる」
日本(小学校24.4%、中学校17.9%)
参加国平均(小学校:- %、中学校51.3%)

(3)初等中等教育段階において、遠隔教育を実施したいができていない学校の割合
※2020年3月12.0%→2023年度: 0%

(4)教師のICT活用指導力の向上
・授業にICTを活用して指導する能力
※2020年3月69.8% →2023年度までに100%
・児童生徒のICT活用を指導する能力
※2020年3月71.3% →2023年度までに100%

まさお
まさお

第2階層の数値が具体的に向上してくれば施策の実効性が見えてくると言うところだと思います。最終的な目的達成をどうやって測定するかを明確にしておくことが重要です。

デジタル教科書100%普及は本当に可能か

このような目標を中期的に掲げることは大変良いことだと思います。
この目標を実現するために必要な要素は何でしょうか。

1.デジタル教科書の財源
デジタル教科書とはどんなものかの定義をきちんとしないといけません。
紙の教科書をそのままデジタルデバイス上で表示(たとえばPDF)してもデジタル教科書ですが、そこに動画や音声の埋め込み、参考資料へのリンク、インタラクティブなコンテンツ搭載などギミックを増やせば増やすほど開発費用が膨れ上がります
教科書の無償化を維持するならば、それなりの予算をつけないと実現が難しくなります。

2.著作権に関する法整備
改正著作権法によって、一部規制が緩和されている状況ですが、これがデジタル教科書の運用実態に即して十分なものかの検証が必要です。
たとえば、試験をデジタル化することは可能だけれども、研究授業で使用する教材を教師間で共有する場合はNGなのかといった、具体的な運用場面を想定した制度設計をしないと、ボトルネックの存在により実用に耐えないという結論になりかねません

3.指導現場での利用方法の検討
教科書がデジタル化されると何がよくなるのでしょうか?
この議論が日本ではいつもボトルネックなっている印象があります。
たとえば、国語のデジタル教科書にある漢字の書き順をアニメーションで見せるというコンテンツであれば、従来の漢字ドリルにある筆順の説明をアニメーション化することでかかる費用と、その導入による理解度アップの関係を整理しないと投資対効果の観点が抜け落ちてしまいます
さらに言うと、授業内ではこれを見せるのか、先生が電子黒板等で見せるのか、かつてよくあった生徒の空中に指で漢字を書かせるような指導は今後辞めるのかなど、具体的な使用イメージを現場教師と共有することが重要です。

教科書会社が連合して1つのコンテンツを作って各社が共同利用できるようにしてコストを圧縮するなど、具体的な工夫とその導入による効果の検証においてデジタル教科書を「こなれた」ものにしていかないと定着が難しいように思います。

4.教師の自由度をどのように残すか
最後にデジタル化がもたらす弊害として、教師の自由な発想を妨げてしまう可能性があると思います。従来は先生が手軽に補助プリント等を作って紙で配って対応していたのですが、デジタルデバイス上での指導の場合、補助プリントもデジタル化した方が、指導としての一貫性や資料の散逸が防げて指導効果も上がるはずです。
教師のデジタル化アレルギーも一定数残っているでしょうから、それにより従来自由に工夫をして魅力的な授業を展開していた先生が窮屈に感じる可能性があります。その方たちの活躍をどう担保するか(主に研修なのでしょうが…)が、重要だと思います。


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