こんにちは。まさおです。
2021年度はGIGAスクール元年でデジタル教科書も本格的な利用がスタートしています。一方で「デジタル教科書には教育的な効果がない」という記事も散見されます。デジタル教科書とどう向き合えばよいのでしょうか?
今回のテーマは「デジタル教科書に教育効果はあるのか?」です。
デジタル教科書の教育効果に疑問を呈する記事は多い
デジタル教科書の議論が始まって以来、常に底流にあるのが「デジタル教科書を使うと学力は向上するのか?」という議論です。
自分も長い間学習塾で指導していたこともあり、デジタル教科書についても様々な議論をしてきましたが、教育効果は限定的だろうという結論に至っていました(その理由は後述)。
世の中にもいろいろ批判的な記事が出てきています。たとえば、以下のような記事です。
上記の記事では「デジタル教科書は子どもの学力を下げる?」とむしろ逆効果であるというような見出しになっています。
そうはいってもデジタル教科書は推進の方向ですし、いったいどう向き合っていけばよいのでしょうか?
この記事もそうですが、デジタル教科書が学力向上のためのツールと考えるとスタートラインが少しずれてしまっているのかもしれません。
本来はIT機器を触ることが目的だったはずなので、学習効果を期待すること自体が間違っているようにも思います。もっともこの記事は学力を下げると言っているので、この点は無視をせずにきちんと向き合わなければならないと思います。
デジタル教科書の教育効果が限定的な理由
様々な統計的なデータではデジタル教科書が学力向上に直接寄与しないことが明らかになりつつあります。
これは学力というのは「基礎知識の吸収」と「知識を使った思考や試行錯誤」の組み合わせで形成されていることと関係があります。
IT機器は基礎知識の吸収には向いていますが、その上でものを考える媒体としては向いていないように見えます。
さらにいうと、デジタル教科書のインターフェースがまだまだ複雑で、直感的な操作になっていません。紙の教科書に鉛筆や色ペンで書き込みをする操作に比べて、ペンを選んだり太さを変えたりといった手数が多すぎて、学習者にとってノイズになっています。
ノイズが多いことが学習者を思考に集中させないことにつながり、学習効果が限定的になるだろうという結論に至っています。
一方で、英単語や漢字をひたすら覚えるとか、社会科の言葉の知識を動画付きで解説するといった知識の拡張にはデジタル教科書ははかなり有効だと思います。
つまり、知識のインプットや持っている知識の幅を拡張するにはデジタル教科書を使うことが有効で、与えられた知識をもとに思考する場合は、思考に集中するための環境を別途用意しないといけないということになります。
これは文部科学省も言っていますが、「デジタルか紙か」という二項対立的な議論をしてはいけないということを意味しています。
デジタルが効果的な部分にはデジタルを使い、紙が効果的な部分には紙を使うというだけの話です。
デジタル教科書の裏ミッション
学校教育のことだけを考えれば当面は紙の教科書のみでも指導効果はあまり変わらないので、それでよいと思います。
一方で、日本の子どもたち(大人も含めた)ITリテラシーの低さは他国を圧倒するものがあります。
それはIT機器を道具として積極的に活用しようとしない日本人の特性(特に大人側の問題)が背景にありそうです。
2018年のPISAの補足資料では日本の学習環境におけるICT機器の利用状況が世界の中でもかなり低いレベルであることが報告されています。
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/06_supple.pdf
つまり、日本の子どもは科学的リテラシーや読解力は高い水準にあるものの、道具としてのICT機器の利用経験が少なすぎる(ゲームは多い)ので、これが将来的な国力の低下を招く(すでに招いている)という危惧が付きまとっているということです。
前出の新潮の記事の記述にある
プログラミングや、情報機器を使って必要な情報を収集したりすることは、誰でもすぐにできるようになることであり、わざわざ学校の授業で教育することではないでしょう。
という考え方は少しずれているように思います。
誰でもすぐにできるようになるのと、学校の授業でみんなで同じ経験を積んで大人になるのとではICT機器に対する姿勢が大きく異なるということです。
教育効果が下がるのは困りますが、同レベルであれば国の支援の下に小さいころからICT機器を触る機会を確保することが重要です。スマホをゲームのために使うのではなく自らのスキルや知識の拡張のために使う習慣を小さいころから身につけさせることができればデジタル教科書導入の最初の目的は達せられるのではないでしょうか?
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