こんにちは。まさおです。
6/2、奨学金事業を行っている日本学生支援機構は、保証人が返済した奨学金のうち、保証人にはもともと返済義務のなかった半額を超える分を保証人に返金すると発表しました。
対象はおよそ2千人で、約10億円に相当します。
今回は「日本学生支援機構の過剰請求」について取り上げます。
日本学生支援機構の過払い問題
コロナ禍で学生が支払う学費の工面が難しい場合に、日本学生支援機構の奨学金は大変ありがたい制度です。
令和元年度に団体を問わず奨学金制度を利用してくる学生はおよそ454,000人、しょうが金事業額は1億3250万円程度だそうです。(詳細資料)
今回話題になっているのは、貸与型奨学金の返済が滞った場合の保証人の返済義務の範囲です。
返済義務と返済額
日本学生支援機構の貸与型奨学金の返済は以下の3者となります。
- 借りた本人
- 連帯保証人1人(父か母)
- 保証人1人(4親等以内の親族)
借りた本人と連帯保証人は借りた奨学金の全額返済の義務がありますが、保証人の返済義務は本来総額の2分の1になります。
これは、民法で連帯保証人も含めて保証人が複数いる場合は、各保証人は等しい割合で義務を負うとされているためです。これを「分別の利益」というそうです。
上記の場合は、連帯保証人と保証人で2人いるので、保証人の支払い義務の範囲は全体の2分の1になるということです。
機構側は保証人にも全額を請求
今回問題になったのは、機構側が返済が滞った場合に保証人に「分別の利益」があるにもかかわらず、全額の請求をしていたことです。
さらに、保証人が「分別の利益」を主張し、支払い義務は2分の1のはずだと言ってきた場合のみ半額の請求とし、特に保証人からの主張がない場合は全額を返済させていました。
つまり、保証人に十分な説明をせず、「全額請求をしてみて全額支払ってくれたらラッキー!」というような姿勢に見えるということです。
機構側は「分別の利益は保証人から主張すべきものと考えていた」と説明しているようですが、民法の知識を一般の人が十分に持っているとは考えづらく、このやり方は奨学金事業を担う公的機関のやり方としてはよい方法とは言えません。
札幌高等裁判所の判決
5/19、保証人2名が支払い義務のない半額以上の返済金にについて返還を求めた裁判の判決が出ました。
判決は、過払い分と利息の計約200万円を保証人に返還せよというものでした。
機構側は上告をせず、この判決が確定することになったため、今後は保証人には半額を請求することとし、データの残っている過去5年分の過払い者約2千人には過払い分に相当する、総額10億円を返金する方針を明らかにしました。
機構側のプレスリリースは以下の通りです。
日本学生支援機構も返済率を追及される
この問題の背景には、独立行政法人として奨学金の返済状況を厳しく問われているという背景があります。
もともと奨学金を申請するケースは学費の支払いに一定の困難があるケースがほとんどですから、潜在的に滞納リスクがあると考えることもできるでしょう。
一方で、民法をはじめとする一般市民の権利を守る様々な法律に準じて正しい運用をしないと、組織としての信用を失うことになります。
そもそも論として、保証人制度自体が時代と合わなくなってきているという視点もあります。
現在は、保証人を立てる方法ではなく、保証機関に一定の保証料をしはらい、返済できない場合は維持的に保証期間が支払いを肩代わりする「機関保証」が増えています。
今後も奨学金制度の充実は必要だと思いますが、その返済の仕組みについては時代に合わせてバージョンアップが求められていると考えるべきでしょう。
奨学金の返済について、このような問題が起こっていること自体、今回の報道を見るまで自分も理解していませんでした。日本の学生の海外留学などが今後増えていくとなると、お金の問題にどうしても直面せざるを得ないと思います。その際に正しく利用し、正しく返済できる仕組みを追っておくことは大変重要なことだと思います。
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