こんにちは。まさおです。
文部科学省は令和5年度の入試から、首都圏への大学生集中を避けるために行っていた大学入学定員基準の厳格化を緩和する方針を決めました。
今回のテーマは、「私大の入学基準の緩和」です。
考え方によってはかえって混乱するのではないかとも思います。
文部科学省の私大入学定員基準緩和
文部科学省は、都市部への学生集中を避けるために実施していた、私立大学の入学定員の厳格化の運用を緩和する方針を固めました。
何がどう変わり、受験生にはどのような影響があるのでしょうか?
定員基準の厳格化とは?
文部科学省は地方の活性化のために、都市部の大学が本来の入学者定員以上に学生を入学させることを避けるための施策を実施してきました。
【参考】地方創生のための大都市圏への学生集中是正方策について(H27.6)
現在は大学の入学総定員別に以下の規準が運用されています。
この基準以上に生徒を入学させると私学助成金が全額不交付となるため、都市圏の私大は合格者を一気に絞り込みました。
収容定員 | 私学助成金 全額不交付基準 |
---|---|
8,000人以上 | 1.10倍以上 |
4,000人以上 8,000人未満 | 1.20倍以上 |
4,000人未満 | 1.30倍以上 |
この施策は大学の正規合格者を絞り込ませ、結果的に入学辞退者が多く出た場合に追加合格を量産することになりました。
追加合格をもらった学生の多くはすでに他の大学に入学手続きをしていることが多いため、入学金の二重払いが増えたと言われています。
なお、入学金の不返還は過去に裁判でも返還不要と最高裁で確定しています。
文科省の基準緩和措置とは
文部科学省は、追加合格による入学金の二重払いを原書させるべく、現在運用中の入学者定員基準の緩和措置を打ち出しました。
具体的には「毎年の入学定員ではなく、全学年総定員で判断するように運用を変更する。」というものです。
ある年に予定以上に入学者が来てしまった場合には、翌年の入試で入学者を絞り込むなどして、大学全体の総定員に対して、1.1倍に収めればOKとするということになります。
読売新聞の以下の記事が参考になります。
この基準を最大限活用した場合、以下のように学年ごとの入学者はかなりブレることになります。
以下のようなシミュレーションとなります。
学年 | 定員 | 累積 定員 1.1倍枠 | 入学者 | 累積 入学者 | 対応 |
---|---|---|---|---|---|
1年目 | 8,000人 | 8,800人 | 9,000人 | 9,000人 | 旧基準では1.1倍を超えているので助成金カットだが、新基準では翌年の入学者を抑えればOK |
2年目 | 8,000人 | 17,600人 | 8,500人 | 17,500人 | 前年、1.1倍の規準(8,800人)を200人オーバーしているので、8,600名以内の入学者であれば基準クリア |
3年目 | 8,000人 | 26,400人 | 8,000人 | 25,500人 | 前年までで定員の1.1倍まであと100名残しているが、この年は定員通りの入学者となったとすると、翌年はより多くの入学者を受け容れられる |
4年目 | 8,000人 | 35,200人 | 9,700人 | 35,200人 | 4年間の総定員の1.1倍までOKだと、定員より1,700名多く受け容れられる。 |
定員が一定だとすると、年度によって4年分の調整幅が累積されることになるので、かなり多くの入学者の調整枠ができることになります。
年度別の入学者が大きく変わることで、受験生は混乱するかもしれません。
受験生は定員ガチャにはまるかも?
この施策が4年ほど実行されると、各大学が定員に対してどの程度の長歌で入学者を受け容れてきたかが見えるようになります。
上記のシミュレーションはかなり極端ですが、現実的に入学者が定員の100%の年と定員の140%の年が出てくる可能性があります。
これにより、入学金の二重払いは減るかもしれませんが、受験生にとっては「この年は合格者が多くて合格しやすかった」とか「この年は前年の入学者が多かったので合格者が絞られて厳しかった」というような、「入学定員ガチャ」のような運の要素がかかわってくることになります。
運用方法によってはかえって受験生を混乱させる可能性もあると思います。
大学側が極端な運用に走るかは見識が問われるところではありますが、できるだけ毎年の合格者と入学者が一定になるように、例外的な受け入れ枠調整としてこの制度を利用することを期待したいです。
大学側にとっては受験は毎年のことですが、受験生にとっての受験はその年1回きりのことです(浪人生は例外ですが)。
この制度が年次単位での入学者の大幅ブレを呼び込まないような、大学側の見識ある運用が重要だと思います。
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