兵庫県小野市の蓬莱市長という方が、休校している小学校の授業時間を確保するために、お盆期間の8月13日〜15日を除き、夏休みをゼロにする方針を示しました。
今回はこれを題材に考えてみたいと思います。
小野市の蓬莱市長の主張の背景
神戸新聞に詳しい記事が出ていました。
4月10日からの休校で授業日数の減少は15日間に上ります。
さらに休校が伸びた場合には、不足した授業日数を確保するために、8月13日〜15日を除いた夏休みの平日に授業を行うという方針を確認したということのようです。
背景には、4月23日にブログに書いた文部科学省の通知(学習保障)もあるでしょうし、現実的に授業が終わらなければ次の学年に上げられないという危機感もあると思います。
かつては夏休みは暑くて学習に向いていないので、外で思いっきり遊び宿題を一生懸命やるという期間でした。
小野市は全校にエアコンが完備されているため、暑いから授業ができないということはないとのことで、遅れを取り戻すには適切な日数が取れるという考え方のようです。
文部科学省の反応
これに対する文部科学省の反応も記事に出ていました。
見出しではそんな自治体は「きいたことがない」という反応です。
また記事本文中のコメントとしては、
「遅れを取り戻す方法には、土曜の授業や7時限までの授業などもある。判断は各自治体に任されており、夏休みがゼロになるからといって一概にだめとは言えない」
と出ています。
まとめると、
決めるのは自治体だからダメとは言えないが、夏休みを潰す自治体というのは聞いたことがないくらいレアな判断だ。
ということのようです。
実際は、同様の判断をする自治体がこれから出てくるのではないかと思います。
土曜授業で少しずつ補っていくのと夏休みで一気に遅れを取り戻すのとどっちが良いのかという判断のように思います。
どちらにも一長一短があるように思います。
みなさんが市長だったらどっちが良いと考えますか? またその理由としてどんなことを挙げますか?
夏休みを潰して学習するメリットとデメリットを考える
物事を考える際に常に意識しなければならないことは、メリットばかりの案というのはきわめて稀で、多くの案はメリットに対応したデメリットがあるということです。
夏休みを全て遅れを取り戻す期間に充てるメリットとデメリットを整理して、どのようにこの問題を解決すべきか考えてみましょう。
夏休みを使って休校を補うメリット
・期間を決めて集中して学習の遅れを取り戻せる
・週5日の学習ペースで参加する生徒に無理な負担がない
・9月以降に先送りしないことで対応に余裕が出る
夏休みをなくしてしまうデメリット
・夏休みという心理的な節目がなくなり、1年間がだらだら続くイメージができる
・楽しみにしていた夏休みがなくなり生徒のモチベーションが下がる
メリットを見ると、それなりに合理的な理由もあるようで必ずしも悪い施策とも見えません。
デメリットを見るとちょっと違った見え方もしてきます。
夏休みがなくなることの意味
今回の小野市の発表を聞いた子供たちはどんな思いでこの話を聞いているかを考えてみましょう。
特に事前の予告や相談があったわけでもなく、突然夏休みがなくなるという発表を聞けばそれなりにショックを受けていること思います。
夏休みは子供たちにとって、普段学校で頑張ったご褒美のような自由な時間です。6週間に及ぶ自由な時間は、時間の使い方や宿題の実施計画、家族や親戚の人とのコミュニケーションなど、机に向かう勉強以外の様々な学びの場になっています。
また、夏休みという長期休暇があることで、夏休みまで頑張ろうといった心理的な節目として機能する部分もあります。
学校の役割が、カリキュラムに沿って新しい単元を教えることだけであれば夏休みを使うのもやむを得ないのですが、「知育」「徳育」「体育」の3つの柱で考えた場合にが学習カリキュラムを消化すること以上に大事なことを学べるのが夏休みの特長です。
その意味においては、夏休みをすべてなくしてしまうというのは、子どもたちの楽しみを奪ってしまう、心理的な節目を不明瞭にして馬力がかからなくしてしまうことに他なりません。せめて1~2週間程度は夏休みを残し、それ以外の時間を学習に充てるなど丁寧に判断した方が良いかったと思います。
個人的には、土曜授業と夏休み短縮の両方を使ってはどうかと思います。
夏休みを1週間残してお盆と合わせて14日間とすると、5日×6コマで30コマ分を別の場所でやる必要がでてきます。9月~1月の土曜日が20日ありますから、隔週土曜日登校で、土曜日に3コマずつでちょうどはまります。
20年度の授業時数を100%やるかというと、そもそもそこからの議論も今後出てくるとは思いますが…。
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