こんにちは。まさおです。
GIGAスクール構想などで電子機器を使った学習が進んでいますが、多くの人は暗記は紙の方がいいのでは?というような「感覚」を抱いていると思います。
東大の酒井邦嘉教授の研究が読売新聞で報道されていました。
今回はこの研究記事をもとに「紙の方がスマホより暗記しやすい!?」というテーマを取り上げます。
読売新聞がスマホより紙の方が「覚えやすい」との記事を掲載
3月20日の読売新聞に以下のような記事が出ていました。
スマホよりも紙の方が「覚えやすい」という記事です。多くの人が感覚的にそう感じていることがタイトルになっているので、やはりそうかと思った人も多いかもしれません。
一方で、学習デバイスに関わっている立場の人間からするとこの記事だけで暗記は紙が有利と決めるのは少し早計なようにも思えます。
少し考えてみたいと思います。
紙が「覚えやすい」という見出しになったのはなぜ?
この記事で紙の方が覚えやすいという見出しになった理由を考えてみると以下の2点がポイントになっているようです。
1.ある文章から14のイベントの日程を抜き出して記録する時間が紙の方が短かったこと
2.記憶に関するテスト中の脳の状態は紙のグループの方が活発だったこと
イベントの日程を抜き出すという行為自体がスマホに向いてない
この研究自体が暗記に対するテストなのでこういう結果になるのはある意味当然なのかもしれませんが、タブレット端末に専用ペンで書きこんだり、スマホに入力するという行為が長い文章から日程を探して記録をするという作業を想定して設計されていないように思います。
タブレット端末やスマホが目指しているのは、日程を探す行為すらやめてすべて自動で記録させてしまう方向なので、そもそも暗記のテストでこの方法をとるべきかということが若干疑問に思われます。
この記事は研究の前後の文脈をかなり端折っているように見えるので、もう少し丁寧に研究内容を見た方がよいのかもしれません。
長い文章が紙なのか、タブレットやスマホ上にある文章なのかによっても差が出ますよね。紙から抜き出して、紙に書き移すという作業だとすると紙が有利になるように思えます。
覚えた内容を思い出すときの血流が多いとどんな効果があるのか
覚えた内容を1時間後にテストした際の結果として、正答率は紙もタブレットもスマホも変わらないが、紙のグループの人の方が脳の血流が多く記憶領域が活性化しているという結果を得たとしていました。
血流が多いとその後も記憶が定着しやすく忘れにくいという因果関係があるかがこの記事だと見えません(きっと因果関係があるのだと思いますが)。
暗記の仕方にもいろいろな手法がある
新聞とテレビのニュースを比較した時にどちらが暗記しやすいかということを考えてみるとそれぞれに一長一短があるように思います。
新聞は大きな紙面で一覧性があるため、多くの情報を俯瞰的に眺めて特に自分に必要な情報をインプットするときに有効なように思えます。
一方で、テレビのニュースは新聞にはない映像や音声などの情報が一緒に入ることでより深い情報を印象付けることができます。
覚えたい情報によってどっちを使うべきかを選択するのがよいのではないかと思ってしまいます。
今回の記事は、紙面上にある情報を脳に記憶させるという観点では、紙の利便性(情報の取り扱いのしやすさ)が電子機器に比べて有利であるということがポイントのように思います。
一方で、電子機器も日々進化しているので、記憶を補助する機能が今後数年でより強化されるでしょう。また紙の取り扱いのしやすさと同じように、多くの人が電子機器の操作に慣れてくれば、同じテストをした際の結果が変わってくるかもしれません。
その意味では現時点では紙の方が少し有利という整理が公平なものの見方のように思います。
電子機器で勉強をする際の最大のネックは、その操作性です。操作を覚えたり自分がやりたいことをすぐにできなかったりするストレスが暗記を妨害してしまうということがあると思います。
もっと電子機器を自分の手足のように使いこなせるように習熟してもらうことが最初の課題だと思います。
小さいころに鉛筆の持ち方を親が教えるように電子機器の使い方を教える時代が来れば様相は少し変わってくるのかもしれませんね。
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