【また頓挫!】2020年度導入予定だった「情報提供システム」とは?

教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです!
文部科学省は、7/22、大学入試に導入予定だった「情報提供システム」について、運営許可を取り消す方向で調整していることを明らかにしました。いったい何が問題だったのでしょうか。

今回は「大学入試の情報提供新システム」を取り上げます。

「情報提供システム」運用中止の要点

もともとは生徒の主体性などを記録する前向きなアプリ
⇒今年の高3生は豆にデータ入力をするように先生に言われていた様子
運営主体の一般社団法人「教育情報管理機構」はベネッセの関連会社
⇒ベネッセのClassiとの連携などもできるがその体制に批判も多かった
利用大学が少ないことが最大の要因
⇒利用大学が少ないと運営費用が賄えない

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「情報提供システム」とは何なのか

文部科学省が「高大接続改革」として進めていた案件は、主に3つの要素でできています。

1.高校教育改革
・教育課程の見直し(新指導要領)
・学習指導方法(アクティブラーニング)
・高校生のための学びの基礎診断(民間試験の活用による認定制度)

2.大学教育改革
・卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)
・教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)
・入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)

3.大学入学者選抜改革
・大学入学共通テスト(記述問題・民間英語試験)
・個別入学者選抜改革(推進委託事業・JAPAN e-Portfolio

上記の通り、高校側の改革・大学側の改革・それをつなぐ入試改革と3つの要素を関連付けて全体の指導内容を現代の世の中に合わせて改善しようという取り組みが進んでいました。

「情報提供システム」とは上記の「JAPAN e-Portfolio」として掲げられている、高校時代の学習への取り組みを記録し、その内容を入試でも使えるようにするという仕組みのことでした。

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JAPAN e-Portfolioとは?

以下の記事が詳しく説明をしてくれていたので、これを見るとわかりやすいと思います。

誰も知らなかったJAPAN e-Portfolioの実像
eポートフォリオの本質とJAPAN e-Portfolioの課題を明らかにする。
文部科学省「『JAPAN e-Portfolio』における『情報銀行』の活用について」から転載

端的にいうと、以下のようになります。
高校生は高校時代の「学びのデータ」を入力・蓄積
高校の教員は入力内容の閲覧・承認
高校の教員はデータを参照・把握をして、「調査書」等の作成に活用
大学はWeb出願ポータルを使って「学びのデータ」を入試に利用
大学は入学後に「学びのデータ」を活用

高校教育と大学教育、その橋渡しの入試にも使える、「情報の銀行」という位置づけでした。理念は間違っていないのですが、具体的手法には無理が相当あります

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JAPAN e-Portfolioが普及しなかった理由

様々な理由があると思いますが、端的に言うと高校生が情報を登録する部分に何らの工夫が見られないところが厳しいです。

このシステムにどんな情報をいつ登録すると、登録者本人にどんなメリットがあるのかを明示しないといつまでたっても登録情報が増えないということです。

銀行に預金をすると利息をつけてくれるのと同じで、ユーザーに何らかの行動をさせる場合には、それによるリターン・メリットが目に見える形でユーザーに戻る必要があります

文科省は、「それは大学入試への情報提供」などと考えているのかもしれないが、高校生にとってはただの面倒な作業に見えていたようです。

まさお
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去年、高校生の取材を受ける機会があってお話をした際に、「e-Portfolioって高校でどう使われているの?」と質問をした際に、数名の生徒がお互いの顔を見て、苦笑いをしているのが印象的でした。「ほとんど使っていないです。先生は入力しろとうるさいのですが…。」と言っていました。

委託先のサポートにベネッセが入っていて混乱

また、JAPAN e-Portfolio自体は「一般社団法人教育情報管理機構」が運営をしています。文部科学省が営利団体に委託をすることはできませんから、一般社団法人が実運用を行っている体裁になっています。

ところが、この運営サポートにベネッセが入っていたために、実質ベネッセが握っているシステムだという批判が出ました。

特に生徒IDはベネッセのID管理システムを借用する形で、ベネッセ共通IDとなっており、「Classi」との情報連係などがあったことから、一気に問題視されて、火消しに躍起になるという事態に発展しました。

教育情報管理機構」のホームページのトップには以下のような情報が出ています。

2020年2月7日
利用者のなりすましを防ぎ、高校の先生方の異動等による変更を管理するため、民間事業者のID管理システムを借用しておりましたが、2021年4月1日より新たなID管理システムに移行する予定です。詳細については改めてお知らせ致します。

2020年1月28日
一部メディアにおきまして、当機構が運営する「高大接続ポータルサイトJAPAN e-Portfolio」の情報が民間事業者等に提供されている等の指摘がありますが、利用者の皆さんが入力した情報は当機構が厳重に管理しており指摘のような事実はありません。

まさお
まさお

これにより利用大学も減ってしまって、文部科学省としては認可を取り消すという動きになっているということです。
もう少し民間企業が「ユーザーエクスペリエンス」などに配慮して、システム化すればよいものになったかもしれないのですが、一旦頓挫ということになりました。

民間英語試験・共通テスト記述問題・e-Portfolioといずれも発想自体は悪くないものの実運用が無理で頓挫するという展開です。この状況を打開できる優秀な人材が必要ですね。

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