こんにちは。まさおです。
高校入試で学校推薦を辞めて、自己推薦型に変更する自治体が増えています。生徒の自主性や個性を重視したいという背景ですが、自己推薦型は不合格者も増えることになります。
今回は「自己推薦型受験の不合格者増について」です。
自己推薦型を導入する自治体が増えている
このブログでも何度か紹介してきましたが、自己推薦型入試を導入しようという自治体が増えています。
宮崎県公立高校や愛知県の私立高校は来年度の入試から自己推薦型の入試を導入します。
長崎県公立高校は今年の入試から自己推薦型の入試を導入しています。
自己推薦型の入試を導入するとどういう問題が起きるのでしょうか?
今年自己推薦型を導入した長崎県の主要な公立高校の倍率を前年の学校推薦時と比較してみます。
学校名 | 令和2年 一般推薦 定員数 | 令和2年 一般推薦 志願者数 | 令和2年 一般推薦 倍率 | 令和3年 前期選抜 定員数 | 令和3年 前期選抜 志願者数 | 令和3年 前期選抜 合格者数 |
---|---|---|---|---|---|---|
長崎東 | 24 | 57 | 2.4倍 | 24 | 90 | 3.8倍 |
長崎西(普通) | 12 | 19 | 1.6倍 | 30 | 138 | 4.6倍 |
長崎西(理数) | 4 | 7 | 1.8倍 | 8 | 42 | 5.3倍 |
長崎北陽台(普通) | 36 | 54 | 1.5倍 | 60 | 200 | 3.3倍 |
長崎北陽台(理数) | 8 | 10 | 1.3倍 | 10 | 23 | 2.3倍 |
諫早 | 32 | 30 | 0.9倍 | 40 | 146 | 3.7倍 |
上記表前期選抜の中にはスポーツ等の特別推薦枠も含んでいますが、全体の割合からすると少数なので、全体傾向には大きな影響はないと考えられます。
このように見ると、令和2年度で倍率の高かった長崎東高校は倍率で2.4倍、不合格者は33名でしたが、令和3年度では倍率で3.8倍、不合格者は66名と倍増しています。
他の学校を見ても、不合格者数は10倍以上に増えている状況で、この制度は不合格者を量産する制度ということも可能です。
さらに言うと、学校の総定員が削減されていなければ、後期選抜も終えた後の入学者数は前年と変わらないわけですから、前期選抜で不合格になった生徒の多くは後期選抜で合格しているわけです。
なぜなら、前期で合格した生徒は後期選抜に出願しないわけですから、後期選抜はいわば「敗者復活戦」になっているからです。
これまで1回の合格で終わったはずの生徒を、一度前期で不合格にしてから後期で合格にするという状況だということがポイントです。
そんなことなら自己推薦など辞めた方がよいという意見も出てくるかもしれませんが、中学校内で先行される学校選抜に比して、生徒自身の意欲を出願先に表せるというメリットはあります。また、不合格を経験することでメンタル的に強くなるという要素もあります。
大学入試以降の大半は実力一本になるので、セーフティネットをどこまでかけてあげるかは議論の余地があるところだと思います。
倍率が高いがゆえに受験生のメンタルケアが大事
上記の通り、自己推薦型は倍率が高く、一本化入試であれば不合格にならない生徒を不合格にするという特徴がありますので、受検生本人もそれなりの心の準備をして臨まないと不合格当時実に傷ついてしまうという問題が発生します。
心の準備として必要な内容は以下の通りです。
制度を正しく理解すること
・自己推薦型入試はどこの世界でも高倍率の競争入試であるということ
・不合格者の多くは後期選抜で合格になっていること
・合格すれば早く受検から解放されるラッキーな入試であること
受検前に倍率を正しく理解すること
・倍率4倍というのは受検者の上位4分の1が合格する入試であるということ
例)50人の入試に200人の応募があったら、成績順位で上位4分の1だけが合格する
・倍率4倍ということは4分の3が不合格で、落ちる方が多数派であるということ
最終ゴールは後期選抜(一般入試)と位置付けること
・自己推薦型入試は、通過点で合格すればラッキー、不合格でも計算通りと考えること
・後期選抜の対策を怠らず、ここで確実に合格できるように準備をすること
上記のような準備をすることで、自己推薦入試を乗り越えることができると思います。首都圏ではここ10年くらいで自己推薦入試を廃止する動きが出てきています。この制度を数年運用すると、やはり不合格者が多すぎるという議論が必ず出て来ます。そのタイミングで再度制度変更の議論がスタートすると思われます。
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