【意識は高まったが…】道徳の教科化による変化を文科省が調査

道徳の教科化による変化~意識は高まったが内容が重い~教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
道徳が小学校では2018(平成30)年度から、中学校では2019(平成31)年度から「特別の教科」となりました。いじめによる児童生徒の自殺などを背景として、年間の授業時間をきちんと確保しみんなで道徳について考える時間を取ろうという趣旨です。道徳の教科化について文科省が各学校・教育委員会を対象に実施したアンケート結果が公表されました。
今回は「道徳の教科化による変化を文科省が調査」というテーマです。

道徳の教科化による変化

◆道徳教育に対する教師・学校の意識は高まった
⇒道徳教育の時間確保は確実に進んだ
⇒教科書の題材をか使う順番や時数配当の工夫などは検討が必要
◆授業改善・指導力をどう高めていくかが課題
⇒国・地方の連携の下、実践的知見の見える化・共有化が必要
道徳教育による指導成果の目標設定が難しい。グローバル化も視野に拡充が必要では?

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道徳の教科化による変化

文部科学省は、道徳が特別の教科になったことでどのような変化が生じたか、全国の小・中学校と教育委員会にアンケート調査を実施し、「道徳教育実施状況調査」として発表しました。

概要資料と詳細資料が掲載されていますが、概要資料で要点は十分に確認可能です。

前向きな変化
  • 道徳教育の全体計画や別葉、年間指導計画の作成・活⽤がよりなされるようになった。
  • 教師間で道徳科の授業が話題となることが増えた
  • 教科書という共通の教材があることで、学校間を越えて指導法や教材の確保・交換が容易にできるようになった。
  • 評価を⾏うため、児童⽣徒の状況をこれまで以上に意識して成⻑を⾒取り、記録を蓄積するようになった。
  • カリキュラム・マネジメントをより意識するようになった。
  • いじめに対する児童⽣徒及び教師の意識が⾼まった
課題につながる変化
  • 道徳教育の全体計画や別葉、年間指導計画の作成に当たり教科書発⾏者が提供する⾒本に頼ることが増えた
  • 評価に係る学級担任の業務が増加した。
  • 教師が⾃ら作成・蓄積した道徳教材を使う機会が減少した。
  • 教科書の発問例に依存し、児童⽣徒や学級の実態を踏まえた授業展開が⾏えていない場合がある。
まさお
まさお

教科化によって教師や児童生徒の意識は高まったようですが、逆に評価がつくことで授業内容についてあまり冒険できず、教科書発行会社の見本に頼る、画一的な授業になっていることが浮き彫りになっています。
ここのレベルアップは難しいところですが、教師本人の人間的なバックボーンが太くならないと児童生徒の反応を見て議論を深めるのは難しいと思います。

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道徳の授業が目指すところはどこか

道徳が特別の教科になった背景は、学校で増加する「いじめ」への対処が起点となっています。
一方で、道徳の授業をやればいじめがなくなるという短絡的な問題でもないため、道徳の授業の指導効果をどこに設定するかはなかなか難しいと思います。

たとえば、児童・生徒への定期的なアンケート(全国学力・学習状況調査の質問紙など)に道徳の授業による学びについての質問を入れるなどして、経年変化を見るといったことは必要だと思います。

ちなみに学習指導要領で目指す指導目標は以下のようなものです。中学校を例に紹介します。

道徳科が目指すもの(中学校)

道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の内容は,次のとおりとする。

A 主として自分自身に関すること
[自主,自律,自由と責任]
自律の精神を重んじ,自主的に考え,判断し,誠実に実行してその結果に責任をもつこと。
[節度,節制]
望ましい生活習慣を身に付け,心身の健康の増進を図り,節度を守り節制に心掛け,安全で調和のある生活をすること。
[向上心,個性の伸長]
自己を見つめ,自己の向上を図るとともに,個性を伸ばして充実した生き方を追求すること。
[希望と勇気,克己と強い意志]
より高い目標を設定し,その達成を目指し,希望と勇気をもち,困難や失敗を乗り越えて着実にやり遂げること。
[真理の探究,創造]
真実を大切にし,真理を探究して新しいものを生み出そうと努めること。

B 主として人との関わりに関すること
[思いやり,感謝]
思いやりの心をもって人と接するとともに,家族などの支えや多くの人々の善意により日々の生活や現在の自分があることに感謝し,進んでそれに応え,人間愛の精神を深めること。
[礼儀]
礼儀の意義を理解し,時と場に応じた適切な言動をとること。
[友情,信頼]
友情の尊さを理解して心から信頼できる友達をもち,互いに励まし合い,高め合うとともに,異性についての理解を深め,悩みや葛藤も経験しながら人間関係を深めていくこと。
[相互理解,寛容]
自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,それぞれの個性や立場を尊重し,いろいろなものの見方や考え方があることを理解し,寛容の心をもって謙虚に他に学び,自らを高めていくこと。

C 主として集団や社会との関わりに関すること
[遵法精神,公徳心]
法やきまりの意義を理解し,それらを進んで守るとともに,そのよりよい在り方について考え,自他の権利を大切にし,義務を果たして,規律ある安定した社会の実現に努めること。
[公正,公平,社会正義]
正義と公正さを重んじ,誰に対しても公平に接し,差別や偏見のない社会の実現に努めること。
[社会参画,公共の精神]
社会参画の意識と社会連帯の自覚を高め,公共の精神をもってよりよい社会の実現に努めること。
[勤労]
勤労の尊さや意義を理解し,将来の生き方について考えを深め,勤労を通じて社会に貢献すること。
[家族愛,家庭生活の充実]
父母,祖父母を敬愛し,家族の一員としての自覚をもって充実した家庭生活を築くこと。
[よりよい学校生活,集団生活の充実]
教師や学校の人々を敬愛し,学級や学校の一員としての自覚をもち,協力し合ってよりよい校風をつくるとともに,様々な集団の意義や集団の中での自分の役割と責任を自覚して集団生活の充実に努めること。
[郷土の伝統と文化の尊重,郷土を愛する態度]
郷土の伝統と文化を大切にし,社会に尽くした先人や高齢者に尊敬の念を深め,地域社会の一員としての自覚をもって郷土を愛し,進んで郷土の発展に努めること。
[我が国の伝統と文化の尊重,国を愛する態度]
優れた伝統の継承と新しい文化の創造に貢献するとともに,日本人としての自覚をもって国を愛し,国家及び社会の形成者として,その発展に努めること。
[国際理解,国際貢献]
世界の中の日本人としての自覚をもち,他国を尊重し,国際的視野に立って,世界の平和と人類の発展に寄与すること。

D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
[生命の尊さ]
生命の尊さについて,その連続性や有限性なども含めて理解し,かけがえのない生命を尊重すること。
[自然愛護]
自然の崇高さを知り,自然環境を大切にすることの意義を理解し,進んで自然の愛護に努めること。
[感動,畏敬の念]
美しいものや気高いものに感動する心をもち,人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めること。
[よりよく生きる喜び]
人間には自らの弱さや醜さを克服する強さや気高く生きようとする心があることを理解し,人間として生きることに喜びを見いだすこと。

文部科学省新学習指導要領より抜粋

内容的には素晴らしいと思いますが、教師個人に背負わせるには少し重すぎる内容ですね。

これだけの項目を中学校3年間でもれなく指導しようと思えば、カリキュラム配当などを綿密に作らないといけないと思いますし、教科書会社の見本にも頼りたくなるというものだと思います。

まさお
まさお

外国人の道徳心は宗教によって育てられる部分が多いと思います。一方日本人には共通する宗教基盤がないので、改めて学校で「道徳科」として教えないといけないということなのだと思います。そうなると、社会の変化、例えばジェンダーの問題やSDGsの問題なども適宜適切に教科書に盛り込んでいくという必要が出てきて、学校への依存度がどんどん高まっていきます。
本来は、家庭内の教育で補うべきことまで学校に持ち込まれないように、家庭や社会で教えてほしいことなども明示する必要があるのかもしれません。
課題が多くあることは明白なので、今後の道徳教育についても学校に丸投げせず、社会がきちんと見ていくことが大事だと思います。

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