「大学入試制度が混乱しているので、大学付属の高校に入った方が得ですか??」
ここ数年、このような質問を受験生の保護者の方から多くいただきます。
前回から、ここ数年人気の上がっている「大学附属校」を取り上げています。系列の大学に上がれるというメリットがある一方で、大学選択を高校入試の段階で確定させてしまうことにもなるため、冷静な判断が求められます。
今回は「大学附属校のメリット・デメリットその2」として、準附属校の特徴を取り上げます。
附属校の類型
大学附属校の類型について改めて掲載しておきます。
内部進学率を3つに区切って性格分けをして考えるとわかりやすいです。
- 完全附属校
⇒内部進学率がほぼ100%内部進学可能な学校。
慶應義塾高校や早稲田大学高等学院など - 準附属校
⇒内部進学率が50~90%程度で、一定の成績を取っていれば内部進学可能な学校。
中央大学附属や青山学院高等部など - 進学校的な附属校
⇒内部進学率が50%未満で他大学進学者の方が多い附属校
成蹊高校や國學院高校など
完全附属校については前回の記事で取り上げました。
準附属校を選ぶ場合の注意点
準附属校と言われる内部進学率が50~90%程度の学校を選ぶ場合は、以下の点に注意が必要です。
- 内部進学率が何%程度か
- 内部進学者の学部ごとの進学者数は何名程度か
- 他大学に行く生徒の進学先の大学はどこか
- 浪人生はどの程度出ているか
1.系列大学と他大学の進学状況をチェック
いくつかの学校を取り上げてみましょう。
項目 | 青山学院高等部 (2021) | 中央大学附属横浜 (2021) | 明治大学中野 (2021) |
---|---|---|---|
卒業生数 | 414 | 331 | 414 |
系列大学進学者数 | 361 | 255 | 339 |
系列大学進学率 | 87.20% | 77.04% | 81.88% |
他大学合格数国立 | 4 | 25 | 12 |
他大学合格数早慶上理 | 48 | 51 | 46 |
他大学合格数GMARCH | 19 | 69 | 27 |
首都圏でGMARCH(学習院・明治・青山・立教・中央・法政)と言われる大学の附属校を3校取り上げてみました。
いずれも卒業生は400名程度で内部進学率は75%~90%の間となっています。
国立大学に合格する生徒を見ると、その学校の他大進学への注力状況がはっきりわかります。
青山学院は他大進学というよりは内部進学がメインで、国立への進学は1%
中央大学横浜は他大進学にも注力していて、国立進学者も7.5%程度。東大合格者も2名います。
明治大学中野はその中間レベルで、国立進学者は2.9%程度となっています。
早慶上智や東京理科大に合格する生徒は50名前後となっています。
上記の他大学の数字は合格者数であることに注意が必要です。一人の優秀な生徒が2~3校合格するのは当然なので、実数はこの数字よりも低いと考えた方がよいと思います。
そうすると、自分の学校の系列大学よりもさらに上を目指す生徒というのは、上記3校では概ね5%程度だと考えるのが妥当ということになります。
2.8割が内部進学者の中での受験の難しさ
準附属校から外部受験をする場合の難しさは、学校での学習環境にあります。
多くの準附属校は万全の進学サポート体制を敷いているとパンフレットや説明会でアピールしてきます。実際にそのような体制ではあるのですが、最大の懸念は周囲の友だち関係です。
クラスの8割が系列大学進学を前提としているため、予備校の模試なども受けないでしょうし講習などに参加する生徒もいない、放課後に一緒に受験勉強をする生徒もいないという意味で、どうしても孤立しがちです。
その中にあって、自分の目標大学合格のために受験勉強を続けるというのは、かなり強い意志が求められます。
他大学受験をする本人も、最初から他大学受験をする気ならば準附属校には入らなかったのではないかと思います。入学時は系列大学進学を考えていたものの、実際に高校生活を続けるうちに自分の行きたい道と系列大学がアンマッチになり、外に出たいと選択したということだと思います。
その意味では、多様な進路変更を受け容れられるゆとりがあるとも言えます。近年では内部進学率を留保したまま他大受験ができるという制度がある高校もあり、多様な進路選択を学校側も後押しする体制になりつつあります。
他大学受験クラスが歩かないかは大きな差です。他大受験を目指す生徒用のクラスがあればかなり受験に向けて有利に運べるはずです。
説明会時のチェック項目だと思います。
3.浪人生数は説明会などでも要チェック
上記の表には浪人生数を入れていません。学校によってHP上で公表しているケースとそうでないケースがあるからです。
明治大学中野は、ホームページ上で2022年度の浪人生(進学準備)を19名と公表しています。つまり卒業生の4.6%は他大学受験を目指し、浪人しているということです。
附属校に進学して浪人するというのは、親の立場からすると予定ルートから外れてしまったという意識になるかもしれませんが、翌年の入試で国立をはじめとした難関大学に合格するケースもあるので、一概に失敗というわけではないと思います。
準附属校を選ぶ場合は、内部進学・他大学受験・浪人といった様々な展開の可能性があります。高校時代は自分の進路に大いに悩む時期ですから、広い選択肢を残す準附属校はメリットでもありデメリットでもあります。
上記の特徴に留意して学校選びを進めるとよいでしょう。
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