こんにちは。まさおです。
前回から俳句の読解について取り上げています。前回は主に形式とはいくならではのルールである「季語」について説明しました。今回はもう少し深掘りしていきたいと思います。
今回取り扱うテーマは「俳句の句切れと切れ字」です。
俳句の句切れとは
短歌のときに、「5/7/5/7/7」の意味の切れ目を句切れというという話が出てきたと思います。31音ある短歌は短いとはいえ、その中に複数の意味のかたまりが入ることが多く、その切れ目を「句切れ」といいました。普通は「。(句点)」を入れられる場所が句切れ目となります。
俳句も同様で「5/7/5」の中で、意味の切れ目を「句切れ」と言い、「初句切れ」「二句切れ」「句切れなし」と言います。ただし、俳句の場合、稀に二句の途中に切れ目が入ることがあります。これを「中間切れ」といいます。
「初句切れ」「中間切れ」「二句切れ」「句切れなし」の4つがあると覚えましょう。
俳句における句切れの見分け方
俳句における句切れの見分け方ですが、主に2つのパターンがあります。
1.「切れ字」を目印に句切れを見分ける
⇒この後の項目で「切れ字」を説明しますが、「切れ字」が出てきたらそこで意味が切れます。
2.名詞や句点が入れられるなどの意味の切れ目を見分ける
⇒俳句の途中に「。」が入れられたり、初句に名詞が置かれている場合などはそこが意味の切れ目となります。
例)やれ打つな はえが手をすり 足をする
この俳句は、「おい打たないでくれ。ハエが手をすり、足をすって命乞いをしているだろう。」という意味です。ハエの手をする動作を拝んでいるかのように見ているのが面白い視点ですね。
作者:小林一茶
季語:はえ 季節:夏
句切れ:初句切れ 「やれ打つな」の後ろに「。」を入れられますよね。
「切れ字」を知ると俳句がわかりやすくなる
先ほど少し話題に出た「切れ字」ですが、俳句読解の際には切れ字を正しく理解することが超大事です。
俳句中に「や」「かな」「なり」「けり」が出てきたら必ず印をつけるようにしましょう。
具体的に切れ字に注目すると以下のようになります。
具体例で切れ字を考えてみよう
例1)
しずかさや 岩にしみいる 蝉の声
この俳句は「しずかさ」に切れ字「や」がついていますから、感動の中心は「しずかさ」になります。意味も切れていますから、初句切れとなります。
俳句の意味は「なんと静かなのだろう。蝉の声がまるで岩に染み入っていくようだ」という感じです。
作者:松尾芭蕉
季語:蝉 季節:夏
句切れ:初句切れ
蝉の声というとうるさいイメージがありますが、静かさを強調するために蝉の声を取り上げるというのが表現上の特徴と言えます。
例2)
柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺
この俳句は「鐘が鳴る」に切れ字「なり」がついていますから、感動の中心は「鐘が鳴る」になります。二句切れですね。
俳句の意味は「柿を食べていると、鐘の音が聞こえてきた!法隆寺の鐘の音だな」となります。
作者:正岡子規
季語:柿 季節:秋
句切れ:二句切れ
鐘の音が聞こえてきただけで感動するのか?と思うかもしれませんが、遠くから不意にお寺の鐘の音が聞こえて、「あれ?あの音は…?そうか、法隆寺の鐘か?」と考えるような瞬間だと考えてみましょう。
例3)
万緑の 中や吾子(あこ)の歯 はえ初(そ)むる
この俳句は「中」に切れ字「や」がついていますから、感動の中心は「(万緑の)中」ということになります。「中」だけに注目しても意味が分からないので、「万緑の中」ととらえるとよいでしょう。
句切れですが、二句の途中に「や」が入っていますね。これを「中間切れ」と言います。数は少ないですが知識としては知っておきましょう。
意味は「一面の緑の中で我が子に生え始めた白い歯が印象的だ」というような意味です。
作者:中村草田男
季語:万緑 季節:夏
句切れ:中間切れ
一面の緑(万緑)があるから、わが子の白い歯の色がより目立つという色の対比が特徴です。我が子の歯が生えた嬉しさもありますが、切れ字に注目すると中心は万緑の方にあると考えるのが正しい読み方となります。
いかがでしたか?
ちょっとコツを使でいくつかの俳句に触れれば、句切れと切れ字は頭に入ってくると思います。
重要なことは、俳句の知識を暗記するのではなくて、俳句の知識を手掛かりにして俳句に作者が込めた思いを読み取ることです。
俳句はコミュニケーションの手段なので、作者がここに込めた思いは何かと考えて読むことが大変重要です。
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