先日プレジデントオンラインの記事で「データで見る教育格差『AO入試組と一般入試組の年収格差66万円』」という記事が出ました。内容をよく見ると決してAO入試を批判ばかりしているわけではないのですが、この見出しだとAO入試はやめろ!とも読み取れます。
まさおはコロナ時代こそ、総合型選抜が重要になってくると思っています。今回は「総合型選抜のススメ」を取り上げます。
該当の記事は以下の内容です。
AO入試とはどんな入試だったのか
そもそも「AO入試」とは何なのかを最初に整理しておく必要があります。
1990年に慶應義塾大学が湘南藤沢キャンパスを開設する際に導入した書類審査や面接を主とした入学者選抜方式で、欧米型の入試として話題になりました。
当の慶應義塾大学は思惑通り、よい学生をとれていると自信を持っているのですが、それを一部の大学が趣旨をゆがめて導入してしまったことで評判を落としてしまったのです。
「AO入試」は学力のない学生ばかりが集まってだめだというような論調が展開され、2011年度以降は学力把握措置が追加されました。
事実として知っている英単語数や数学の解法を使える数は確かに少ないので、ある意味正しい報道であり、一部の問題ある大学にとっては学力把握は必要な措置でした。
本来の正しい選抜方法で正しい学生を入学させれば、大学にとっても、学生にとっても非常に有効な武器となる入試です。
本来の趣旨を理解せず、表面的な問題を指摘するだけだとこの問題は解決しません。何のために始まった制度かを正しく理解することがスタートラインだと思います。
コロナ時代こそ既存価値観の転換が必要
2019年末から徐々に拡大してきた新型コロナウイルス。今世の中はかつて経験したことのない大変革に見舞われてます。
政府も明確な対応指針を出せず、経済も停滞しています。多少の経済対策はやってみたものの、どうやってこの難局を乗り切るかと言えば、国民一人一人が頑張るしかないという状況です。
大学も企業も自分たちが置かれた立場によってこの問題の見え方も対処の仕方も全く異なってしまい、一律の対応というのが難しい状況です。
例えば、これまで飲食業は不況でも需要が減らないため強い業界というイメージがありましたが、今回のような休業要請がされてしまうと全く対処策がないという状態です。一部アイデアが出せる企業はテイクアウト中心に業態を変更をするなどして生き残りを図っています。
このような状況下では、現状の問題点と未来予想から自分たちがとるべき道を素早く判断できる人材が求められます。
ある意味、過去の成功体験を早く捨てて、新しい手法にチャレンジできる人、それも極力リスクを最小化してチャレンジできる人が求められるのです。
そんな人いるのか…?ということになるわけすが、本来AO入試で評価されるべき人材というのはそういう人だと思います。
英単語をたくさん知らなくても、調べればよい時代です。むしろ世の中にあふれる情報から必要なものを選び、組み合わせて、新たな価値創造ができる人の選抜がAO入試の趣旨です。
もちろん18歳で経験もありませんから無茶も言うはずなのですが、そこを見極められるかが大学の力量となります。
総合型選抜がその人の伸び代を浮き彫りにする
2021年度から、AO入試は総合型選抜と名称を変更します。出願期間も9月以降とずれこみますが、基本理念に大きな変更はありません。
総合型選抜では、現時点の学力よりも将来の伸び代を評価する入試ととらえるべきです。
学力把握型の試験の限界
総合型選抜と反対の考え方として学力試験型の入試(一般選抜)があります。伝統的にはこちらの入試が重要視されてきたわけですが、今回のコロナウイルスによる価値観の変貌によってすこし状況が変わるかもしれません。
学力把握型入試の特徴は、一定水準以上の学力を身につけるにはそれ相応の忍耐力や工夫する力、ストレス耐性があるはずだという前提で選抜しているのです。
ただし、明示的に工夫した内容を書かせるわけでもないですし、生まれつき物覚えの良い人もいるでしょう。
新たな価値を創造する力というのとは少し視点がずれてきているようにも見えます。
学力把握型の試験の限界がきているように思います。
総合型選抜で浮き彫りになる将来性
総合型選抜の方法は大学によってまちまちですが、多くの場合、書類審査や小論文、複数回にわたる面接などで受験生のものの考え方をあぶりだしていきます。
重要なのは大学側の評価者の視点(評価規準)となります。
企業の入社試験と同様で以下のような要素が必要となります。
このような経験を高校の行事でも部活動でも趣味でも高い水準で実行してきている人であれば、多少の知識不足をものともせず新しい価値創造ができるでしょう。
本来、大学は就職希望者の職業訓練の場所ではありません。興味のある学問で専門性を高め、新しい価値を創造することが重要なのです。その点は注意が必要です。
総合型選抜(旧AO入試)の問題点
冒頭のプレジデントオンラインの記事で、年収格差が66万円という見出しがついていました。
ここまでの記載内容が全て本当だったら、もっと年収が上がってよいのではないかと思うのではないかと思います。
現状のAO入試の問題点を確認しておきます。
見出しの「年収格差66万円」の理由
https://president.jp/mwimgs/b/5/450/img_b521e16bf313aa52a522604b13ed2299434096.jpg記事中の上記のグラフを見てみましょう。
このグラフの対象は2013年(今から7年前)の調査結果で、45歳以下の平均年収を比較したものです。
本来は同じ企業グループで似たような境遇で就職した(スタート年収がほぼ同じ)学生を経年で比較するのが望ましいのですが、そのようなデータは取りづらいのではないかと思います。
傾向としてAO入試出身者が一般入試出身者に比べて、数的にも就職先の企業も劣っていた可能性は確かにあるのですが、これをすべてのAO入試出身者に当てはまるようにとらえるのは危険だと思います。
AO入試を募集困難大学が生き残り策として実施
現在、大学全入時代と言われています。2009年ごろ言われ始めた言葉で、正にAO入試の拡大と歩調を合わせています。
つまり、大学は(選ばなければ)学力がなくても入れる時代になってしまっていて、その学力を求めない(手続きが簡単な)入試としてAO入試が活用されたということがあるのです。
特に年間の退学率が2割などという「募集困難大学」と言われるところのAO入試が、学生数確保のためにAO入試を行い、AO入試の価値を下げてしまったとも言えます。
冒頭の慶應義塾大学のような理念を掲げたAO入試とは全く違う世界がそこにあります。
総合型選抜の受験は受験機会の複数化という観点でも非常に有効です。自分の中学高校時代の取り組みを評価してくれる大学があるならば積極的に受けてみるとよいでしょう。一方で、ただの学生数合わせのAO入試は注意が必要です。受験者側が見極める目を持つことが重要です。
一番大事なことは、受験生が知識詰め込みだけの勉強スタイルをやめることです。部活や学校行事、校外活動など、興味のあるものに次々と首を突っ込んで経験を積むことが将来の基礎力を育てます。
遊びを通して学ぶことが大事なのです。
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