緊急事態宣言が延長され、休業要請や営業自粛といった動きが長く続いています。これによる経済的な打撃は大きく、受験生を抱える家では学費の心配も始まっているかもしれません。
今回は、「コロナ不況」ともいうべき現況で、大学進学はどんな影響を受けるのか考えてみました。
所得格差が大学進学率に影響
新型コロナウイルスによる不況が出てくる前から、日本の学歴自体は親の所得に影響を受けすぎているという議論がありました。
たとえば、以下のようなNewsweekの記事がありました。
このグラフを見ると、父親の所得と大学進学率は非常に強い相関があります。つまり、経済力が一定レベルあって始めて大学に4年間通うことができるということです。
大学の学費は30年間で約2倍に
一方で、学費の方はどんどん上がっています。
このグラフは昭和61年度平成26年の国立大学・私立大学の学費の比較です。
国立大学も学費がどんどん上がってきており、年間で50万円を超えてきます。私立大学も文系と理系でかなり差がありますが、平均して約86万円という状況です。
これが4年間続き、さらに入学金や一人暮らしの場合の仕送りなどを考えると、4年間でかかる費用は1000万前後にまでなってくるという調査もあります。
学力と大学進学率の関係
前出のNewsweekの記事の中にはこんなグラフもありました。
小6の時の「全国学力・学習状況調査」の平均正答率と大学進学理宇の関係を見たグラフです。
一般的には小6時の正答率が高い=学力が高い地域はそのまま大学進学者が多くてもよさそうですが、実際は東北・北陸の青い囲みの県では大学進学率が学力に比して低く出ています。
もちろん、大学に行くことだけが人生ではないですから、家業を継いだりといった地域の特色が大学進学率に及ぼす影響を考慮する必要もあると思います。
一方で、経済力が影響を与えている可能性も見え隠れしているともいえると思います。
コロナ不況が続くと格差がより顕著に
最近のニュースでは学生が大学を続けられず退学を考えるといった話題がよく取り上げられます。
上記のような経済負担の中で、学生が自らアルバイトで生活費を稼いでいたり、学費を稼いでいたりといったこともあると思います。
今回の緊急事態宣言、緊急事態措置による休業要請で飲食店やカラオケ店でアルバイトをしていた学生を中心に多くの学生が仕事を失った状態になっています。
一般的に企業はアルバイトよりも正社員に厚く対応せざるを得ない状況ですから、会社の売り上げそのものが縮小してくれば、学生に仕事を出せないといった状況になってくるのはやむを得ないところもあります。
親世代の収入もコロナ不況の影響を受けていきます。このままですと親の年収にも影響を与え、本来払えていたはずの学費が払えないといった状況が出てくると思われます。
大学側の経営もそれほど余裕がないところが多いでしょうから、国による支援が必要な状況は間違いないでしょう。
大学入試の志願者への影響
上記のような背景から2021年度の大学受験(予定通り行われるかも微妙ですが…)を考えてみましょう。
リーマンショック時の受験者動向
不況と大学入試の関係を考えるには、リーマンショックや東日本大震災の後の入試が参考になると思います。
過去の大学進学率を見てみると以下の傾向だったことがわかっています。
旺文社の以下の調査が参考になります。
http://eic.obunsha.co.jp/resource/viewpoint-pdf/202005.pdf
・大学等の進学率が低下し、専門学校の進学率が上昇
・大学の現役志願率が低下
・現役入学率は上昇
・出願大学を1ランク落とす安全志向
学費の問題から大学進学そのものをあきらめざるを得ないといった人が増え、大学進学率は下がりました。
一方で、卒業後に堅実に収入を得たいという心理からの専門学校進学率が上昇するといった傾向がありました。
現役志願率も経済的な背景から大学進学をあきらめた人の影響で下がっています。
一方で、現役入学率(浪人回避)は高まり、浪人により支出を避けたいという心理も働いています。
出願大学も浪人回避と連動して、安全志向が働き1ランク出願大学を下げて確実に合格を狙うといった動きが出ています。
2021年度入試特有の問題
上記は過去の不況時の動きですが、2021年度入試に向けて粒子ないといけないことがいくつかあります。
大学入学共通テストスタート
なかなかなお騒がせになっている大学入学共通テストですが、センター試験と似ているものの少し配慮が必要な内容になっています。
現高3生はこれをターゲットに学習をしているのである程度の対応力があると思いますが、昨年現役で浪人している人はちょっと対応が難しいと感じているかもしれません。
いずれにせよ、新入試によって大学入試回避の心理が働く可能性があります。
私立大学定員厳格化の動き
都内の大学を中心に定員超過しないために合格者を絞り込む動きが続いています。ある意味当たり前なのですが、これにより上位大学だけでなく中堅私大も難易度が軒並み上がってきています。
不況時に働く安全志向に定員厳格化要素が加わりますます安全志向が働く可能性があります。
休校継続による大学入試への不安感
これまでの不況時は、経済的な問題こそありますが学校は休校になっていません。一生懸命学習を続ければ大学に合格する学力を身につけることはできました。
現在は休校により学校の授業そのものが停滞あるいはストップしている状況で、在籍している学校の取り組みに少なからず影響を受ける状態になっています。
一方で、5月に入り一部の自治体が学校再開となっており、休校地域と再会地域の格差も問題視されています。
受験生の心理としてはこのまま大学受験に突入して大丈夫なのかといった心理は少なからず働くと思います。文科省には早く対応策を提示してもらいたいところです。
かつては大学進学は一部の人のみの世界でしたが、今やだれでも大学を考える時代です。一方で経済的な負担は厳しい状況もあります。
今回のコロナ騒ぎで仕事を失ってしまった大学生の状況をきちんと把握して、学生が安心して学べる環境を作っていかないと大学進学者そのものが減少していく可能性が高いと思います。
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