【文科省が2案提示】どうする?9月入学の検討の行方

教育に関する政策
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まさお
まさお

こんにちは!まさおです。
5/19、文部科学省は現在検討中の9月入学について対応案を2案出したとの報道が出ています。

今回はこの9月入学への対応案について考えてみたいと思います。

9月入学の2例の見方

9月入学の目的確認が必要
→そもそもはコロナによる休校措置へのフォロー策
→2案目は一見うまくいきそうだが、多くの問題が内包されているので注意が必要
少子化と小1のみの生徒増のバランスをよく見るべき
→教室数や教員数のみで対応を考えるのは危険かも

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文科省が提示した9月入学の2例の概要

以下の記事に要点がまとまっています。

「9月入学」文部科学省が2例を提示 新型コロナ対応策 | NHKニュース
【NHK】「9月入学」をめぐり、文部科学省は来年入学させる小学新1年生を9月時点で満6歳となっているすべての子どもたちとする場合と…

1.2021年9月に17カ月の間に生まれた児童を全員入学させる
2.2021年9月から13カ月の間に生まれた児童を入学させる。段階的に1カ月ずつ対象をずらして5年かけて移行する

1.の例は2021年度の新小1の学年だけ、17カ月と幅広い期間に生まれた児童を集めるため、人数が前後の学年よりも増えてしまうこと、学年の中の発達度合いの差が特に低学年で顕著にでることなどが懸念されます。

2.の例は学年人数のバランスや同一学年内の発達段階の差は1.に比べると小さく抑えられますが、世の中全体の仕組みを長く制約するため、マイナス面も多いと思われます。

まさお
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次以降の項目でもう少し各案の問題点・課題を整理してみます。

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そもそもなぜ9月入学案の議論がスタートしたのか

今回の9月入学検討の発端は、言うまでもなく、新型コロナウイルスによる学習の遅れへの対応です。

3ヶ月にわたる休校による学習の遅れを取り戻すために、来年の4月の新学年を半年先延ばしにすることで「学習時間の確保」と「メンタルの立て直し」、「入試への十分な対応準備」を進めるのが本来の趣旨だと思います。

実務上の様々な問題があるのは想像に難くありませんが、すべての施策はその目的から離れてはいけないので、21年度にフォーカスを当てて考えていく必要があります。

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小1だけ一気に生徒を増やすとどんな問題が起きるか

今回の文科省の案は、新小1の入学生が他の学年よりも増えてしまうことを問題視しています。確かに、1つの学年だけが突出して生徒数が多いと学校行事や部活動の中でのパワーバランスなどはいびつになるかもしれませんが、私立の学校などではよくある話でそういうものだと思えば問題ないようにも思います。

試算では1.4倍程度の生徒数になり、前後の学年とのバランスを欠くことや教室や教員の数が不足するのではないかという議論が背景にあるようです。

試みに平成21年度からの児童数の推移を調べ、令和3年度の小1が140万人になるとどんな感じになるかグラフにしてみました。

令和元年(2019)の公立小学校に通う小1は1,009,153名
令和元年(2019)の公立小学校に通う小学生は全部で6,253,022名
小1の占有率は16.14%

仮に小1が今の140%となって、140万人程度になれば、ざっくり全国で40名学級が10,000クラス増えることになります。担任教師も10,000名必要になるということだと思います。

小学校全体で見れば、625万人が665万人なるわけですから、全体としては10%も増えていないという見方になります。
機械的な計算をすれば、他の学年も含めて、1クラスの人数を1割増やせば、今の体勢でも回せるということになります。

地方の複式学級などは影響が少なく、人口の多い都市部がインパクトが大きいと思います。各自治体がシミュレーションをして、教員の補充をどこまでできるかがポイントだと思います。

まさお
まさお

ちなみに、小学生が全体で665万人いたのは、2012年(平成24年)のことで、今から8年前です。
この頃はまだ団塊の世代と呼ばれるかたが教員として残っていた時代ですので、今とは教師の層の厚さが違っているのかもしれませんが、そのころの教師をうまく活用できるなら突破口は開けるのかもしれません。

段階的移行を行うとどのような問題が起こるか

では、段階的移行をとるとどのような問題が起きるでしょうか?

実は学校のクラス運営上の問題はそれほど起きないように思います。生徒も一気に40万人増えることはなく、33,000人くらいを5年に分けて各学年で預かっていくので、穏便に事が進むと思います。

一方で、本当に問題が起きるのは、社会にある様々なシステム上の問題ではないかと思います。

たとえば、履歴書などでは「〇〇年4月1日現在」の年齢を記載することがよくあるかと思いますが、定年退職をするときの年度の計算などにおいて、現在は4月1日を基準として計算されているものが多くあるようです。

もちろん学校に入学する年齢も、現在は4月1日段階の年齢を基準に考えているわけで、4月1日生まれが早生まれで前の学年に組み入れられるのもここが背景です。

一度に移行する場合はこの変更を1回行う(2021年度以降の基準を9月1日に設定する)のですが、5年かけて行う場合は、6つの基準を毎年繰り上げていくという処理が発生します。

アナログ処理でやっていれば大きな問題にはならないのでしょうが、ITが発達した今は元号の変更1つでも年齢処理が正しくできないなどのトラブルが発生しているので、この対応に各社は頭を悩ませる可能性があります

また、日常の会話などでよくある「何年生まれ?」「じゃ、1コ上だね」といった会話は直感的にできなくなります。
ある年を境に一気に変えてしまった方が社会は受け入れやすいのではないかと思います。

まとめ

上記を様々勘案すると、
1.新型コロナ対応を踏まえ2021年度にフォーカスすべき
2.小1が40万人増えるのは問題だが、2012年の児童総数とほぼ同等
3.退職教員の支援などの調整ができるのでは?
4.5年にわたっての調整は社会システムに与える影響が大きい
といった観点で、まさおは一気に変えてしまう方がよいと思います。

まさお
まさお

皆さんだったらどっちを取りますか?
どっちが正解というのはありませんが、向こう60年以上にわたって影響を与える決断です。
「今のまま変えない」という選択肢も含めて冷静な議論が必要ですね。

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