こんにちは。まさおです。
先日の読売新聞の社説にデジタル教科書の使い方は格差を広げないよう慎重に検討を重ねるべきという趣旨の記事が出ていました。
今回は自分の過去の指導経験も踏まえて「デジタル教科書はどうあるべきか」を考えてみました。
デジタル教科書の導入方針とアンケート結果
最初にデジタル教科書の導入方針について確認しましょう。
2021年1月27日文部科学省はデジタル教科書の在り方についての骨子を発表しています。
1月30日のこのブログでも取り上げています。
具体的な活用案は5つ提示されました。
- 全ての教科等において、デジタル教科書を主たる教材として使用する
(紙の教科書を全てデジタル教科書に置き換える) - 全て又は一部の教科等において、紙の教科書とデジタル教科書を併用する
- 発達の段階や教科等の特性の観点を踏まえ、一部の学年又は教科等においてデジタル教科書を主たる教材として導入する
- 設置者ごとに当該年度で使用する教科書を紙の教科書とするかデジタル教科書とするかを選択できるようにする
- 全ての教科等において、デジタル教科書を主たる教材として使用し、必要に応じて、紙の教科書を使用できるようにする(学校に備え付けた紙の教科書を貸与する、紙の教科書で学習する方が教育効果が高いと考えられる部分に限定した紙の教科書を配布する等)
一方で、2021年1月末から2月上旬に一般男女1200名に対してトレンドリサーチ社が行った「教科書」に関するアンケートでは以下のような結果が出ています。
アンケート全体のレポートはこちらから。
文科省も一般の人も、デジタル教科書には期待と不安が相半ばしていて、こちらがよいという方向性を明示できないというのが現実だと思います。
一方でデジタル庁などはデジタル化の推進が存在意義なので、一気にデジタル化すべきという教育的な背景もないまま意見を言う状況があります。
「教科書」の性質を考えれば指導効果を無視できないので慎重な議論が必要です。
当面は紙とデジタルのいいとこどりの模索
2024年のデジタル教科書導入については、上記の経緯から考えても一気にすべてデジタル化というのは難しいと思います。
教材自体のデジタル化は可能でも、指導がそれに合わせて変化しきれないという状況があるはずです。
学校の研究授業などを見ても電子黒板に教科書を移した授業のすべてがデジタル化で恩恵を受けているかというと、中には「かなり無理して使っているな~」というのもあります。
たとえば、デジタル教科書に漢字の筆順のアニメーションが出ていたりしますが、あれを使うシーンは本当に少ないと思います。黒板に先生がお手本を書いて見せて、それをまねて生徒がノート上に練習をする方が時間的にも指導効果的にも高いと思われます。
そのようなデジタルが聞く場面とノート上に練習させた方が早い場面をきちんと切り分けて教師が指導できる状況を作る必要があります。
その意味では教科書のデジタル化だけでなく、「教師用指導書」をどのようにアップデートするかの方が重要だと思います。デジタル教科書用の指導書を見たことがないので機会があれば確認してみたいと思います。
本当に重要なことはデジタル教科書のインターフェース
デジタル教科書を本気で普及させたいとするなら、紙の教科書の内容をデジタル化するだけでなく、デジタルならではのインターフェースが必要だと思います。
過去に大きなパラダイムシフトが起きたケースを考えると単純移植で進んだものは少ないと思います。
パラダイムシフトの例
1.パーソナルコンピューター
⇒従来のコマンドプロンプトからアイコンをマウスでクリックするGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)によって一気に身近な存在になった
2.携帯音楽プレイヤー
⇒初代iPodは1000曲という膨大な曲数を保存できるようになっただけでなく、スクロールホイールで100曲単位で曲を容易に探すことができた
3.アマゾン
⇒書店よりも膨大な書籍を扱い、レビューで他者の意見を参照し、1クリックで購入でき、自宅に届くという手軽さから拡大してきた
デジタル教科書はどうあるべきか
デジタル教科書のインターフェースについて自分の過去の指導経験を踏まえて考えると、以下のような要素が必要だと思います。
1.紙の教科書のレイアウトをばらす
A4サイズの紙の教科書をそのまま移植しているうちは無理。端末の画面サイズに最適化した文字サイズやレイアウトに変わる「レスポンシブ」デザインである必要がある。
2.ページ繰りの手軽さ
⇒すくなくとも慣性スクロールは必要
⇒画面上にページ繰りスライダーのようなものがあり、動かしが幅に応じてページ繰りのスピードが変化する
⇒手を離せばそこのページで止まる
⇒その間のページの動きがスムーズで見ていて気持ちよい
2.アンダーラインや小さなメモの書き込み
⇒アンダーラインは指でもペンでも直感的に線が引ける
⇒アンダーラインボタンタップ→指で線がすぐ引けるといった手軽さ
⇒メモの書き込みはペンがあって小さな字でも書きこめることが重要
3.起動の手軽さ
⇒起動してから目的の教科の教科書が開くまでのスピードが重要
⇒画面上に教科ボタンがあり、使いたい教科のボタンを押すと該当教科書の前回開いていたページが開く
専用のハードウェアがあるのがベスト
上記のような動きを踏まえると、汎用的な機器ではなくデジタル教科書の機能で最大のパフォーマンスを発揮するような機器をオリジナルで作った方が良いと思います。
メインボードやCPU、グラフィック処理、カメラ、電池などをこの用途に合わせて特化すれば、単価もそれなりに下がるはずです。
利用者は1学年80~100万人で小1~高3までで12学年分、3年ごとに交換というくらいですから、毎年300~400万台の製造ということになると思います。
新小1・新小4・新中1・新高1の4学年を新規端末配布学年として、以降3年間は同一学年の全生徒が同一スペックのハードウェアを使用するといった整理であれば不可能ではないと思います。
予算は相当かかると思いますが、機器の設計開発に1億円、端末単価を30,000円以内に収めて、年間1000億円程度の予算を取れば対応可能です。ただし教科書代は含まれません。
個人的には量産体制こそ懸念ですが、そこがクリアできれば現実的だと思います。iPadの年間出荷台数が4000万台程度あることを考えれば、300万台の生産体制の確保も計画さえきちんとしていればあり得ると思います。
国の本気を見せてほしいと思います。
コメント