【苦手克服】短歌読解の基礎知識③ ~掛詞・枕詞~

読解力をつける
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まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
前回、短歌の表現技法の説明をしていました。今回はその続きです。
掛詞・枕詞について」取り上げます。

短歌に関する前回・前々回の記事は以下の通りです。

短歌の表現その2「掛詞・枕詞」

◆掛詞(かけことば)は一つの言葉に複数の意味を持たせる表現技法
⇒平安時代以降多く使われるようになった
短歌の限られた文字数の言葉に複数の意味を当てるため、内容を豊かにできる
◆枕詞(まくらことば)は後ろに特定の言葉を導く決まった言葉のこと
多くは五音の言葉で後ろに決まった言葉を導き語調を整える
⇒もとはある言葉から連想される言葉のセットだったと思われ意味を考える必要はない

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短歌独特の表現技法「掛詞」

最初になぞかけから

みなさんは、「なぞかけ」というのを知っていますか?
「〇〇とかけて、××とときます。その心は~」というやつです。
しばらく前に「ねづっち」という芸人がいましたが、今はどこに行ったのだろう…。

たとえば、
「プロボクサー」とかけて、食「物アレルギー」とときます。
その心は、「どちらもげんりょう(減量・原料)が気になります。」

などというやつです。

この例は、「げんりょう」という言葉に2つの意味「減量」と「原料」という2つの意味を持たせて(かけて)、一見関係のない2つの言葉を関係づけているわけです。
このように、あることばの音に複数の意味を持たせることを「かける」というわけです。

短歌のかけ言葉とは

短歌の世界でいう「掛詞(かけことば)」もこのなぞかけに少し似ているところがあります。

掛詞…つの言葉(音)に複数の意味を持たせて歌の内容を豊かにする技法

「掛詞」については上記のように理解しておくとよいでしょう。

さきほどの「なぞかけ」同様、一つの言葉(音)に複数の意味を持たせる(異なる漢字をあてる)表現と理解するとわかりやすいです。

奈良時代にもいくつか例があるようですが、やはりひらがなができてからでないと一つの言葉に複数の意味を持たせづらい(ひらがなで書いて、漢字の当て方を複数用意するため)ので、平安時代以降に広く使用されるようになったようです。

具体例を見ていきましょう。
有名は小野小町の短歌です。

花のいろは
 うつりにけりな
  いたづらに
わが身世にふる
 ながめせし間に

ここに2カ所掛詞がつかわれています。
慣れるまでは見つけづらいと思いますが、見つけられますか?
古典の表現にも慣れていないと難しいかもしれません。
ヒントは掛詞の多くはひらがなで書かれています

正解は以下の通りです。

花のいろは
 うつりにけりな
  いたづらに
わが身世にふる
 ながめせし間に

ふる=経る(時間がたつ)・降る(雨が降る)
ながめ=眺め(ぼんやりと見る)・長雨
(「ながあめ」を「ながめ」と発音する)

どちらも現代語ではあまり言わない言葉が入っているので、全く勉強していない状態からこれを見つけ出すのは難しいと思います。

逆に代表的な掛詞をある程度覚えてしまえば、知識として掛詞を発見することが可能になります。

ただし、ここで注意しないといけないことは掛詞を見つけただけでは何の意味もないということです。掛詞を使うと、どう歌の内容が豊かになるのかに注目しないといけません
この歌の現代語訳を考えてみましょう。

花の色はすっか色あせてしまったなぁ。
わたしが世間に降る長雨を眺めてぼんやり過ごしている間に。
(私の美しさも時がたち、年齢を重ねている間にすっかり衰えてしまったなぁ)

たった31音しかない短歌が、「ながめせし間に」と「ながめ」の掛詞を使うことで「長雨を眺めてぼんやりと過ごしている間に」と言葉の意味をより豊かに読み手に伝えることができるのです。

まさお
まさお

そんなことやって何が楽しいのかと思うかもしれませんが、平安時代は和歌がコミュニケーションの手段でしたので、このような複雑な意味の短歌を作れる能力が重宝したのです。
百人一首などを丁寧に勉強すると数多くの掛詞が出て来ます。それらを理解すれば大抵の掛詞は見抜けるようになるはずです。

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「枕詞」は決まった言葉のセットのこと

一方、「枕詞」は掛詞のような複雑さはありません。

枕詞…下に決まった言葉を導く言葉。五音からなるものが多い。

まずは、具体例を1つ見てみましょう。

家にあれば
 笥(け)に盛る飯(いひ)も
  くさまくら
旅にしあれば
 椎の葉に盛る

この歌は奈良時代の有馬皇子のものです。
赤字になっている「くさまくら」が枕詞です。下にある「旅」が導かれる言葉です。

つまり、古来「くさまくら」と来たら下に「旅」が来るというのが決まった言い方だったのです。

このように下に決まった言葉を導く言葉が枕詞です。特に訳す必要はありません。下に言葉を導くための飾りととらえてください。

【代表的な枕詞と下にくる言葉】

枕詞下に来る言葉
あかねさす日・紫
あをによし奈良
石走る(いはばしる)垂水(たるみ)=滝
からごろも着る
くさまくら
白妙のころも・雪
たらちねの
ちはやぶる
ひさかたの
ぬばたまの黒・夜

下に来る言葉は1つとは限りません。上記の表もすべてが載っているわけではありません。ただし、枕詞が出てきたら下の言葉は枕詞が導いた言葉なのだろうということを知っておけばよいと思います。

まさお
まさお

掛詞と枕詞の基本知識は理解できましたか?
理屈ではなく多くの実例に接することが大事です。
機会があれば覚えておきたい短歌の解説などもしていきたいと思います。

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