【給与体系見直しを】公立校教員の残業代訴訟で裁判長が苦言

教員残業訴訟判決教育に関する政策
スポンサーリンク
まさお
まさお

こんにちは。まさおです。
10/1、さいたま地裁で公立小学校教員が残業代の支払いを求めた裁判の判決が出ました。現行法に照らすと原告の請求を棄却せざるを得ないが、現行法自体が問題であるという異例の指摘がありました。

今回のテーマは「公立教員の給与のあり方について」です。

公立教員残業代訴訟の意義

◆残業代支払いは勤務実態に照らしても現行法では難しい
給特法では一律4%の「みなし残業」代が支払われる規定
制定された1971年当時の教員の平均残業時間が8時間だったことが背景
◆判決の中で裁判長が異例の指摘
給特法は現在の教員の勤務の実情と乖離している
⇒法改正のみならず、管理職の業務改善意識や監督意識なども重要
今回の判決がきっかけで改善機運が高まるはず。財源が問題か。

スポンサーリンク

公立校教員の残業訴訟の判決内容

10/1に出た、公立校教員の残業訴訟の判決内容については、様々なメディアが報道しています。
判決の全体像については朝日新聞の以下の報道がわかりやすいと思います。

教員の残業代支払いめぐる訴訟、原告の請求退ける さいたま地裁:朝日新聞デジタル
教員の時間外労働に残業代が支払われないのは違法だとして、埼玉県の公立小学校教員の男性(62)が県に未払い賃金として約240万円を求めた訴訟で、さいたま地裁は1日、男性の請求を棄却した。石垣陽介裁判長…

ポイントは以下の通りです。

  • 労働基準法の法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた勤務があった事実を認定
  • 残業しなければ業務が終わらない状況が常態化していたとは言えない
  • 原告の求める賃金支払いや損害賠償は認められない
  • 給特法が教育現場の実情に適合していないとの思いを抱かざるを得ず、教育現場の勤務環境の改善を切に望むと付言

上記の通り、原告の訴えを退ける一方で、現在の勤務実態には大いに問題があると指摘をしています。

今後、萩生田文部科学大臣の記者会見等でもこの判決についてのコメントを求められるなどの動きが出始めるでしょうから、今回の判決は大きな波紋を投げかけた意義あるものととらえることができると思います。

まさお
まさお

いわゆる三権分立の原則からすれば、裁判長が法律を改正すべきだと直言することはできません。そのため、あくまで感想として「思いを抱かざるを得ず」という表現になっていますが、裁判長が法律が実態と乖離しているというのはかなり踏み込んだ発言ととらえるべきでしょう。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

そもそも給特法とは?

今回ここで問題を指摘されている給特法とはどんな法律なのでしょうか?

公立の義務教育諸学校等の教育職員の与等に関する別措置」が正式名称で、全7条からなる法律です。

要点は以下の通りです。

  • 職務と勤務態様の特殊性に基づき、給与その他勤務条件について特例を定める
  • 教育職員(校長・副校長・教頭を除く)は給与月額の4%を教職調整額として支給しなければならない
  • 時間外勤務手当・休日勤務手当は支給しない
  • 退職金等は教職調整額を加算して計算される

つまり、一律に4%のみなし残業代を払うので、時間外手当や休日勤務手当は出さないという法律です。

いろいろ調べてみると制定された昭和46年(1971年)当時の教員の平均時間外労働時間の調査が行われていました。昭和41年度に文部省が実施した調査において教員の平均残業時間が8時間程度だったことから、4%が妥当と当時判断されたという経緯があります。

詳細は以下の文部科学省のページに記載があります。

資料4‐2 教職調整額の経緯等について:文部科学省
まさお
まさお

残業代の調査をしたのが昭和41年、つまり今から55年前です。半世紀前の労働実態調査を基にした法律がその後改正されず現在まで適用され続けているのがそもそもの大問題だと思います。
これまで世の中では過労死や働き方改革と言ってきたのに、ここに手を付けられなかったのは文部科学省も忸怩たるものがあるのではないかと思います。

スポンサーリンク

今後、法改正や働き方改革の機運が高まる

今回の問題をきっかけに今後法改正の機運が高まると思います。

文部科学省も教員の働き方改革の議論をしています。はたから見るに、実効的な提案や財源確保に至っておらず、時間がかかるのではないかと思っていましたが、今回の一件でスピードが速まるかもしれません。

個人的には、部活動が最大のネックだと思います。Twitterの様々な学校教員の方のつぶやきを見るに、部活動を教員の職務から外すことが第一に必要な施策ではないかと思います。

部活の指導は外部委託をして、部活に参加する児童生徒からはいくばくかの費用を支払ってもらってそれを財源にするようなオプション活動としての部活動に変容させることが大事だと思います。

中には、部活動の指導をしたいという教員の方もいると思いますが、それこそ勤務時間外の活動として対応してもらう、部活動の指導は通常の賃金より少し低い水準の賃金で手当として支払うといった、通常勤務とは一線を引いた業務とすることで、多少の改善図られるのではないかと思います。

まさお
まさお

学校で勤務した経験がないので、実態に即していないかもしれませんが、生徒の正規の授業時間に責任を持ち、それ以外は勤務ではないと一線を引くところがスタートラインではないかと思います。
民間企業の経営者が学校経営を真剣に見たら、いくつも革新的な対応案が出てくると思います。

コメント