「動詞は有名な品詞なんで、たぶん大丈夫です」
受験生が動詞は大丈夫という言ことが多いけれど、たいていは知識不足のままということが多いようです。
今回は「動詞」の第3回目で「動詞の音便と動詞の種類」を取り上げます。
ちなみに、全3回の構成は以下のようになっています。
それぞれ、第1回と第2回はリンクになっていますので、必要に応じてごらんください。
音便と動詞の様々な種類
前回までで動詞の主要な知識事項の説明は終えたのですが、残ったいくつかの細かい知識があります。
それ自体は全体の中で必ずしも主役になるほど重要ではないのですが、国語の勉強をきちんと進めていくとその途中に必ず現れて、理解の邪魔をします。
今回ここで取り上げる、「音便」「動詞の様々な種類」をきちんと学んでおくことで、自信をもって次の学習進めるようにしたいと思います。
動詞の音便形とは
みなさんは「音便」などという言葉をこれまでの人生で聞いたことがありますか?
あればかなりマニアックに勉強をしていたということなのだと思います。
まずは音便とは何かという説明からです。
音便…ある言葉の一部が、何らかの理由で本来とは少し違った言いやすい言い方に変わってしまうこと。発音上の便宜により語中や語尾の音が他の音に変化すること
音便にあたる言葉の変化は日常のいろいろな場面であります。
「~するのである」を「~するんである」と言ったり、「あの時」を「あん時」といったり、要は、言いやすいように形を変えてしまうことを音便と言います。
国文法ではあまり砕けた話し言葉は扱いません。書き言葉の中でも、動詞を中心に活用する言葉の音便が中心に扱われます。
動詞の音便の例
実際の動詞の音便の例を見てみましょう。
例1) 彼に言っておこう。
例2) ついに聞いてしまった。
例3) 早く読んでみたい。
この3つの例の赤字部分を見てください。
本来は、「言いて」「聞きて」「読みて」というべきところが言いづらいので「言って」「聞いて」「読んで」になってしまっています。
ちなみに、後ろに「て(で)」が続いているので、活用形は連用形になります。
ちょっとわかりづらいので活用表で見てみましょう。
基本形 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 活用の種類 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
言う | 言 | わ お | い っ | う | う | え | え | 五段活用 |
聞く | 聞 | か こ | き い | く | く | け | け | 五段活用 |
読む | 読 | ま も | み ん | む | む | め | め | 五段活用 |
「言う」「聞く」「読む」の連用形部分、つまり後ろに「て」や「た」が続くときに、一部の動詞が音便の形をとります。
実際どんな形になるかは、自分で言ってみると気づけると思います。
また、音便形をとる動詞はどれも「五段活用」の動詞になっていることがわかりますね。
動詞の音便のまとめ
活用票で見た法則をまとめると以下のようになります。
「イ音便」「促音便」「撥音便」という言葉は初めて聞いたと思いますが、この際覚えておきましょう。
「促音」とは、詰まる音=「っ」のことを指します。
「撥音」とは、はねる音=「ん」のことを指します。
「はつおん」に「つ」があるので「撥音」を「っ」と勘違いする人が多いので注意してください!
可能動詞とは
動詞の中に「可能動詞」と言われる特殊な動詞があります。
「~できる」という意味をその動詞の中に含んでしまっていることが特殊なのです。
元の動詞(本動詞)と可能動詞を比較して、いくつか例を挙げてみます。
元の動詞 (本動詞) | 可能動詞 |
---|---|
読む | 読める |
走る | 走れる |
飛ぶ | 飛べる |
話す | 話せる |
五段活用の本動詞を下一段活用(「エ段の音+る」の形)にすると、多くの動詞を可能動詞にすることができます。
ポイントは元の動詞が五段活用で、それを下一段(「エ段の音+る」の形)にしたものだということで、類似品がたくさんあり入試でも大変よく出ます。
たとえば、以下の4つの選択肢から可能動詞だけを選べますか?
ア、見れる
イ、流れる
ウ、食べれる
エ、飲める
可能動詞はエです。「~できる」という意味を含んでいて、元の動詞が「五段活用」かをチェックすればよいのです。
ア…元の動詞が「見る」で上一段活用なので間違い。
イ…もともと「~できる」の意味が含まれていないので間違い。
ウ…元の動詞が「食べる」で下一段活用なので間違い。
エ…元の動詞が「飲む」で五段活用なので可能動詞。
※ちなみに、アとウは本来「見られる」「食べられる」と「~られる」というべき言葉から「ら」が抜け落ちている、通称「ら抜き言葉」と言われる言葉です。
可能動詞は助動詞の学習後に登場回数が増えてきます。今は、基本的な知識だけ覚えておくようにしましょう。
自動詞・他動詞とは
動詞の中には、活用形や活用の種類による種類分け以外にもいくつか分類の仕方があります。
その中でもよく聞かれるのが、「自動詞」と「他動詞」です。
まずは、自動詞と他動詞の違いを確認しましょう。
自動詞…その動詞の表す動作や作用を自分自身が行う動詞。(「~が」とセット)
他動詞…その動詞の表す動作や作用を自分以外の何かに働きかける動詞(「~を」とセット)
辞書的には上記のような説明になるのですが、何言っているかわかりづらいと思うので、表にまとめて整理します。
自動詞 (~が) | 他動詞 (~を) |
---|---|
起きる | 起こす |
出る | 出す |
驚く | 驚かす |
開く | 開ける |
自動詞は「~が」とセットで表現する言い方が多く、他動詞は「~を」とセットで表現することが多いです。見分け方としては「何を?」と聞きたくなるものは他動詞という考え方になります。
また、全ての動詞に自動詞・他動詞のセットがあるわけではありません。自動詞しかない動詞(「行く」「ある」など)や他動詞しかない動詞(「知る」「読む」など)もあります。
複合動詞とは
いよいよ最後です。「複合動詞」といわれる動詞です。
複合動詞…複数の動詞が合体して一つの動詞になったもの
例を挙げてみましょう。赤字が複合動詞です。
「思う」+「出す」⇒「思い出す」
「考える」+「込む」⇒「考え込む」
「飛ぶ」+「出す」⇒「飛び出す」
「巣」+「立つ」⇒「巣立つ」
このように、他の単語と動詞が直接くっついて一つの意味を表す場合は「複合動詞」となり一つの動詞として扱うと覚えておきましょう。
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