こんにちは。まさおです。
6/14、大学入試センターは大学入学者選抜におけるコンピューターを使ったテストの活用に関する研究成果を公表しました。端的に言うと課題山積ですぐには難しいという結論です。
今回は「大学入学共通テストのCBT化について」です。
大学入試センターの調査結果
6/14、大学入試センターは、大学入学者選抜におけるCBT(Computer-based Testing)の活用に関する調査研究の成果物を公表しました。
大学入学共通テストのように大規模かつ正確性・公正性が求められるテストにおいて、試験をCBT化するにはどのような課題があるかがまとめられています。
膨大な調査報告ですが、ここでは端的に今の共通テストをCBT化するとどんな問題が起きるかに注目してみたいと思います。
環境構築の費用
現在行われている大学入学共通テストをそのままCBT化するとどれくらいの費用になるのでしょうか?
現在の試験会場数をそのまま維持した場合、6科目で一人当たり33,767円という試算になっています。
詳細条件は上記に書かれていますが、不正防止対策や問題作成費用等は含まれていない試算です。
現在の共通テストの受験料が18,000円です。問題作成費用や管理費用等含めて考えると、45,000円くらいにはなるのではないかと思います。
私立大学の受験料が30,000円~35,000円くらいですから、それよりも高くなってしまうということです。大学入学希望者の大半が受けるべき試験という性格を考えるとさすがに高すぎると思います。
トラブル対応体制の構築
コンピューターを使った試験にはトラブルリスクがついて回ります。
全国のすべての会場が問題なく試験ができるかというと、PCが壊れたとか、ネットワークがつながらないといった問題が起きる可能性は常にあると考えるべきでしょう。
今回の報告書では以下のような対応が必要と書かれています。
予備機の確保やデータバックアップの仕組み構築、最悪の場合は振替日での再試験といった準備と、それに対して社会が大騒ぎせず、「そういうものだよね」と受け容れる理解度も重要と指摘しています。
CBTに対する社会の理解
CBTを大学入学共通テストのような大規模かつ影響力の大きい試験に導入する場合の最大の課題は社会の理解ということになると思います。
今の世の中を見ているとシステムトラブルに対する寛容度の低さが他国よりも高く、責任問題に発展してトップが辞職するような事態がたびたび発生しています。
もちろん、システムトラブルはあるべきではないですし、管理体制が甘い人為的なものであれば責任問題にも発展すべきではあるのですが、それでも外的要因で不可避なトラブルも存在し、それまでも回避するならシステム化はあきらめざるを得ないということも多く存在します。
大学入試センターは以下のような課題を上げています。
CBTに対する免疫を小さなテストなどでつけておいたうえで、トラブル発生や検定料の引き上げなどのデメリットも受容して初めて実施可能と考えるべきという見解です。
そもそも論として、そこまでしてCBT化する必要があるのかという問題があります。
何も大学入学共通テストを今の形態のままCBT化する必要はなく、CBTに向いている試験形式に全体設計を見直してから導入検討するのがよいのではないでしょうか?
大規模一斉テストでの導入は無理
ここまでのレポートににじみ出ているように、大学入試センターとしては、今のまま大学入学共通テストをCBT化するのは無理だと考えています。
客観的に見てその通りだと思いますし、これを「CBT化すべき」と言ってきたこれまでの偉い人はあまりに実務的な問題に対する理解が低かったということになります。
一方で、今のままの共通テストをあと何年続けるべきでしょうか?
世界の情勢や技術革新が進む中、ずっと紙のテストを行うというのも浮世離れした対応に見えてしまいます。
世界の入試の状況を見つつ、入学時の学力を一斉テストで得点化して判定するという考え方を大きく転換し、1人ひとりとの面接を重視した選抜方法に改めていくことが重要だと思います。
もちろん、共通テストのような基礎学力を測るテストは必要だと思いますが、何もこの規模、この問題量、この難易度を維持する必要はなく、大学入試センターのレポートにもあるように小規模な簡易テストに縮小してCBT化するような流れが現実的ではないかと思います。
日本の試験文化が曲がり角に来ていることは間違いありません。社会全体で今のやり方には限界があることを理解するところからスタートすべきではないかと思います。
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